劇場内での性表現について制作ができることを考えている
さて、合田団地が先日、ついに『戯曲賞』を獲った。
田畑実戯曲賞。今年度は合田団地の単独受賞となった。9月15日からの公演は受賞後初の新作であるが、集客が芳しくないw
そこで、作品内容とは違うが、演劇について記事を書いてみようと思い立った。
先日受賞したのは、『涼しい。』という作品である。この公演も今回の公演のように集客が少なく、伝説的に語り継がれている。なんと記録映像もない。あるのは、公演写真と脚本だけなのであった。
この公演は、本公演ではなく突発的にやりたくなったのでおこなわれた公演で、京都のライブハウスUrBANGUILD で上演された。コロナパンデミック直前の2020年の1月のことだった。
この作品で私はものすごく悩んだことがあった。作品内における【性被害未遂】のシーンについての取り扱いである。
※この先、詳細は書かないのでフラッシュバックに関しては(たぶん)ご安心ください
悩んだ末に、前説での丁寧な注意喚起として、
・当該シーンの直後すぐに明るくなり10分以上の休憩があること
・途中離席に充分な幅の通路の確保
・通路際のお客さんへ、途中離席される方には積極的に協力するようお願いする
・この話を聴いて不安になった方は開演前に入り口付近に席変更するので気軽に申し出てほしい
という旨を伝えました。結果的に、複数の関係者、観客からこのアイデアは評価されました。ただし、問題点として【離席することでフラッシュバックのカミングアウト化してしまう】という問題は解決しませんでした。この点は今も考えている問題です。
さて、この対策は、フェミニズムの文脈で最近よく示されるようになった”トリガーアラート”と言われるものです。フラッシュバックやしんどい思いの「トリガー=引き金」を引く可能性がある表現があることを、事前に出来るだけ一覧で示すものです。
現在私は個人的に、以下の条件をトリガーアラート掲示の着眼点として主催する作品や鑑賞する作品をチェックしています。こちらはシネマンドレイクさんの2022年ごろに更新されたトリガーアラートの一覧をモロに参考にしています。めっちゃ使えます。
性暴力
動物虐待
イジメ、喧嘩(身体的暴力の有無)
DV
児童虐待
交通事故
LGBTQ差別描写
レイシズム(人種差別)描写
ゴア(グロテスク)描写
自然災害描写(津波、地震)
性描写
恋愛描写
これらの表現が作品中に存在している場合、制作者はその情報を事前に告知するべきか否かを検討する必要があると私は考えています。ただし、作品中の表現にはグラデーションがあり、それを判断する制作者にも認識のグラデーションがあるので、正確にアラートを出し続けることは難しいと思います。
その作品のその表現を、トリガーになるかどうかについて「批評的に」創り手側がまなざすことができるのか、という問題は残ります。たとえば、スカートめくりを性加害行為だとそもそも主催者側が認識していなかった場合、トリガーアラート掲示からは逃れてしまうことになります。
制作者・主催者側が、そもそもの認識のアップデートを心掛けなくてはいけないのは言うまでもありません。
まずは制作者がトリガーアラートを掲示することに積極的になっていく必要があると思います。作家/演出家がネタバレを嫌がって、掲示に消極的だったとしても、制作者は作家/演出家を守る意味でも、適切な掲示が必要だと考えます。
さて、今回の公演はかなりしっかりとしたトリガーアラートを事前告知しました。以下の画像が告知画像ですのでご覧ください。
こんな感じです。
(宣伝みたいになっちゃいますけど、)実際に観に来て、どの程度の表現をこのように取り扱うことにしたのか、見てみてほしいなと思います。その「程度」も、それぞれの皆さんの主観なので、OK/NGで一概には括れないものではありますが、一概に括れるものではないからこそ、アラートが必要なのです。この話、分かりますか?
願わくば、このトリガーアラート掲示対応がデフォルトになって、せっかく演劇を楽しみに来たのにしんどくなる人がいなくなればいいと思う。
ちなみに私が思う、現在時点での「完全にやってはいけない表現」は、ヘイトスピーチ(差別表現)だと考えています。わたしは性差別・人種差別ほか、すべての差別表現に反対します。
また、犯罪被害者への二次加害表現(※)にも明確に反対します。
※性被害者バッシングや、イジメられるほうにも理由がある等、被害者を攻める/被害者に責任があるかのような、加害者を擁護する発言。そう、加害者を擁護する発言なことに自覚を持て!
さーて、本日から小屋入りしています。頑張るんば。
公演詳細はこちら。努力クラブのホームページ (doryokukurabu.blogspot.com)