有隣堂古書部について調査をしてみる
はじめに
神奈川県横浜市に本店がある新刊書店有隣堂。数種類のブックカバーを選ぶことができたりブックカバー自体の販売もやっていたりなどしている(今回は関係ない)。また、出版事業も行っており、神奈川県のご当地版元にもカウントできる、はず。
そんな有隣堂だが、戦前に古書部を持っていたようなので、ほんの少しだけ調べてみようというモチベーションになったので備忘録目的で書いてみよう。
※なお、本件については調査の取っ掛かりができた段階なので特に成果などはない。
調査のきっかけ
この調査を始めようと思ったきっかけは、野毛にある天保堂苅部書店。先週私用で横浜の都心部に出かけていたのでついでで寄ってみた。応対頂いた方から「昔有隣堂の古書部をやっていた」という話を聞いてこれは面白そうだと思った。正直なところ、ただそれだけ。天保堂苅部書店は天保堂時代に岩波書店とかなり関係があった(古本屋時代の岩波書店の看板を、店主だった篠田亮一(以下篠田と記す)が書いたなど)本屋なので、それはそれで非常に調べると面白いものが出てくると思うが、今回は本筋でないので割愛。
最初の調査準備
ちょうど手元に『神奈川古書組合三十五年史』があるので、記述を確認。確かに篠田が有隣堂古書部として活動していたのは間違いないようだ。
この他、『有隣堂八十年史』も手元にあるので記述を確認。するとこのような記述を見つけた
この「大助」は有隣堂創業者の松信大助である。また、ここにある「横浜貿易新報」は神奈川新聞の前身の新聞である。この記述からわかることは以下の通り。
昭和10年(1935)年12月末時点には、有隣堂2階に有隣堂古書部があった
有隣堂古書部の運営には天保堂と一味堂が関わっていた
有隣堂古書部は昭和16(1941)年頃まで続けられていた
まずは上記の内容を1つずつ確認していくことに決定した。
なお、上記の1.について、『有隣堂八十年史』の年表には以下の通り書いてある
食堂廃止時期が明確でないのか、とずっこけそうになってしまった……
なお終了時期について、『有隣堂八十年史』には以下の通り書いてある。
※ここの「同年」は昭和16(1941)年である。
最初の調査
最初の調査として、横浜貿易新報に有隣堂古書部の広告があるかどうかを調べることにした。今回についてはかなり簡単で、「昭和10年12月26日の横浜貿易新報に広告がある」ことを確認するだけである。
その前に、横浜貿易新報をどこで読むことができるかを調べることに。
まずは国会図書館。探してみたが調査する年代のマイクロフィルムはない。次にTwitterのフォロワーに教えてもらった日本新聞博物館で資料検索。これもない。
少し探してみたところ、どうやら神奈川新聞社WEBマイクロフィルムというものがあるらしい。これには神奈川新聞やその前身である横浜貿易新報や神奈川県新聞などの記事があるようだ。この神奈川新聞社WEBマイクロフィルム、どうやら横浜市立図書館で閲覧可能のようなので、早速図書館へ。
該当年月日の紙面を閲覧すると、たしかに7面に有隣堂古書部が広告を展開している。確かに1935年12月26日の横浜貿易新報に広告があることから、この時点では有隣堂古書部が存在することは確認でき、また、『有隣堂八十年史』の記述が正しいことも確認できた。
今後の調査について
今回の調査で有隣堂古書部の存在は確認できた。
今後は以下の内容を可能な限り調べていきたい。
有隣堂古書部は本当に1941年8月頃に廃止したのか?
有隣堂古書部廃止の理由
天保堂と共に運営をしていた一味堂はどのような古本屋か
(可能なら)そもそもなぜ人気だった(らしい)有隣食堂を廃止して古書部を開設したのか
一味堂については『神奈川古書組合三十五年史』の戦前の古書店名簿に記載がある。本牧で武蔵房太郎という人物がやっていた古本屋であることは確認したが、現状それ以上はわかっていないため、金沢文圃閣の『出版流通メディア資料集成(三) 地域古書店年表―昭和戦前戦後期の古本屋ダイレクトリー』を参照する必要がありそうだ。
また、有隣堂の社史それぞれに目を通し、古書部に関する記述の有無とその量を確認する必要がある。そもそも書いてあれば「有隣堂の社史に書いてあった」である程度調査は完結するし、そこからまた調べたいことも見つかるはずなので……書いてないなら書いてないで、「なぜ書いていないのか」を調べることになるので……
有隣堂の資料について
有隣堂には『有隣堂小史 創業者を偲びて』、『有隣堂七十年史』、『有隣堂八十年史』、『有隣堂100年史』といった資料群がある。この中で手元にあって常時参照可能なものは『有隣堂八十年史』のみである。今後の調査でそれぞれの書籍を閲覧、もしくは購入して参照可能にしていきたいところ。
なお、上記図書はそれぞれ横浜市立図書館に所蔵されているが、『有隣堂小史 創業者を偲びて』についてはどうやら禁帯出のようで、所蔵場所である中央図書館へ赴く必要がある。
『有隣堂七十年史』と『有隣堂100年史』は日本の古本屋を確認するとどうやら都内近郊で数軒在庫ありの店舗を発見したので、この2冊は手元に確保しておきたい
おまけ
どうやら西区に「第七有隣堂」という本屋があるみたい。
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