『ルビンの壺が割れた』を読んで、エンタメに感謝する
ずっと読みたい読みたいと思ってた本をようやく読んだぞ!
こないだ久しぶりに古本屋に行ってうろうろしてたら、目立つ表紙がちらっと見えて買っちゃった。
この本、すっごい話題になってたよね。話題になってた頃に「読みたいな~」って思ってたんやけど、結局その後すっかり忘れてた。
これは、本についてる帯。この『想像を遥かに超えたラスト』っていう文字、怖い。こういうのって作者さん怖くならないの? 私がもし小説を書いて、帯に『想像を遥かに超えたラスト』ってデカデカと書かれたら怖くて漏らしちゃうかも。どうすんだ、そんなこと言って想像を遥かに超えられなかったら。クーリングオフの電話がじゃんじゃんかかってきたらどうするんだ。
とは思ったものの、これを読んだ感想を一言で言えって言われたら、確かに『想像を遥かに超えたラスト』かも。この帯は全く間違っていない。めちゃくちゃ面白かった!
▼▼▼以下、ネタバレを含む感想を書いています。読んでない人はまず読むことをおすすめします。読んだことのある人はこのまま読み進めてください。ちょっとでもこの感情に共感してくれる人がいると嬉しいから▼▼▼
確かに、全く予想していないラストだった。
いや、ところどころで「おかしいな?」って思う箇所はあったのよ。やたらこいつ、場所を特定しようとしているな、みたいな。こいつは意地でも場所を言わないようにしているな、みたいな。会話の上っ面をうすーく削って食べてるから全然満たされない、みたいな感じがずっと続くから、確実にどっちかは「おかしい」んだけど、おかしいのがどっちか分からない、っていうモヤモヤした雰囲気。どっちも話の核心に迫らない。一体何を見せられてるんだろう、っていうのがとにかく続く。
でもさ、不思議なことに、退屈じゃないんよね。この「何を見せられてるんだ?」っていうのも、げんなりした感じじゃなくて、どっちかといえばワクワクなんだよね。「おいおい、これがどうなっちまうんだ~?」って前のめりになっちゃうイメージ。
なんていうか、すっごい偉そうな言い方なんだけど、「上手ぇ~!」って思った。ちょうど読者が飽きそうな頃に、新しい情報をちょっとだけ出す。で、「おいおい、そんなの聞いてねえよ! 詳しく聞かせろ!」って読者の気持ちを持って行く。でも、詳しく教えてくれない。なんだよ教えてくれないのかよ、もう飽きて来ちゃうよ……って頃に、またちょっとだけ情報をくれる。「おいおいそうだったのかよ! それ詳しく教えてくれよ!」と思う。でも教えてくれない……
このループ、本当にすごい。何せこの本に対する読者のハードル、あの『想像を遥かに超えたラスト』っていう帯でめちゃくちゃに上がっちゃってるんよね。本を読む人なんかみんな「自分は人より頭がいい」って思っている節あるし(ソースは私)、この本読みながら絶対に「私だけはこの本の結末を予想しきってやる」としか思ってない。だからこそ、情報が小出しになる度に釘付けになる。持ち得る情報を組み立てて、あーでもないこーでもないと予想する。もう少し読めば、もう少し情報が出れば、真相を見破れるんじゃないかと思ってしまう。
気付けば1日で読み切ってましたよ。私が1日で本を読み切るって相当ですよ。そんなに文字数が多くないこととかを踏まえても、大概私が一冊本を読み切るのに1週間くらいかかりますからね。それくらい、私の思考を釘付けにして離さなかった。「早く想像を遥かに超えたラストを見せてくれ!」って思いながら、めちゃくちゃ楽しく読ませていただきましたよ。
ラストについては、確かに想像を遥かに超えてた。
これは私の頭が悪くて読み落としているのかもしれないけど、その……あまりにラストに関するヒントが無さすぎない? 気のせい? 最後嘆いちゃったよ。「こんなん気付けるはずないじゃん!」って。
ただ、読んでてめちゃくちゃ楽しいのよ。ラストで「うぉお……!」って鳥肌が立っちゃうし。あと、二回目を読むときも楽しい。「だからか!」って合点がいくところが多くなるから。
ただ、一周目には気付けないよ、これは……
それで思ったんやけど、これって本当に真っ直ぐなエンタメ小説なんよね。『どんでん返し』にぶん殴られるための、エンタメ小説。
私の読み方が悪かったと思う。なんとなく、ミステリ小説みたいな読み方をしちゃってたのよ。だから文章の中に何か伏線やヒントが隠されていて、傲慢にもそれを元に結末を予想できると思っちゃってたんだよね。全然違う。そういうことじゃない。そういうことじゃないんだよな。
この小説の構成の何が面白いって、「伏線とかじゃない」ってとこなんよな。でも普通に考えてそうなんだよ。
たわいもない、むかし青春を共にした二人の久しぶりのメールのやりとり。普通は、メールのやりとりに伏線なんか張られないよ。ただ思い出話をする。それがメールの目的なんだもんな。変に伏線を散りばめたり、ヒントを隠したりしたら、それはあまりにも不自然だもんな。
……これまで「伏線があまり無かった」っていうていで書いてるけど合ってる? 全然私が伏線に気付けていない可能性も大いにある。だとしたら教えてください。ほんとすみません。
ただ、この本を読んでとにかくワクワクしたし、早く続きが読みたい!ってそわそわしたのは確か。究極のエンタメを体験できた気がする。読み終わって、なんか本当に殴られたみたいになって気持ちよかったな。
最近流行りの、インターネットの掲示板とかネット記事をテーマにした怖い話に似た物を感じた。新しい情報がどんどん追加されていく感じが似てたのかも。最高にハラハラ、ヒヤヒヤ、ワクワクできて楽しかった! 読書は最高、みんなやった方がいい。