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日記 青のりパンチと怖い夢

仕事を終えて家に帰ると、妻がお風呂場でこどもたちの前髪を切っているところだった。「ほら!ふらふらしない!」とか聞こえてきて騒がしい。

私は妻が作ってくれていた焼きそばを温めて、それから青のりを棚から出そうとしたがいつもの場所にない。お風呂場に向かって大きい声で「青のりってどこにあるー?」と聞くと、「ぁあ?」と不良のような声が返ってきた。

妻は前髪カットがなかなかうまく進まずにイライラしていたようで、台所につかつかとやってきて「目の前に置いてるじゃん!」と青のりを持った手で私の胸をパンチした。それは昨日まで私のロンTから透ける乳首を当てる突きよりも何倍も強い、怒りのこもったパンチだった。

甘い結婚生活を夢見る男性に酷な現実をお伝えしてしまうが、結婚生活とは時に青のりパンチをくらうものである。身の回りの既婚者に聞いてみるといい。青のりパンチをくらったことありますか?って。家庭ごとにそれぞれの青のりパンチがあるはずである。

妻は少し落ち着いてから「さっきはドタバタしてる時にのんきにしてたからイラっとしちゃった。ごめん」と謝ってきた。私は「いいんだよ」と返すと、「そこは『僕の方こそ、目の前の青のりすら見つけられない視野が激狭な男でごめんね。本当になさけないよ。大切な君をイラつかせてパンチさせるだなんて。これからは青のりを見つけることができる広い視野と空気を察することのできる心を身につけるようにするね。本当にごめん。』でしょ。はいやり直して」と妻に言われた。妻の謝罪より倍以上長い。結婚生活とは時に台本があるものである。

夜。こどもたちを寝かしつける。最近、7歳長女は大人の寝室で一緒に寝るか自分の部屋で寝るか半々といった感じだが、今日は「またこわい夢を見たらどうしよう」と言って一緒に寝た。

ちなみに怖い夢ってどんな夢だったの?と聞いてみたところ、長女が布団の中で教えてくれた。

「ええとね、私映画館でキャラメル味のポップコーンを食べながら映画を見てて、ポップコーンが余ったから知らないおじさんにあげたの。そしたらそのおじさんがポップコーンに蓋をして、蓋を開けたらポップコーンがカメレオンになってたの。カメレオンが逃げてって、街の真ん中まで行ったら浮かびだしてね、空中で口からなんか輪っかを出したの。輪っかがどんどん大きくなるんだけど、その輪の中に入った人がみんなカメレオンになっちゃって、そこに母さんも入っちゃって、母さんがカメレオンになっちゃたの」

長女は「母さんがカメレオンになったらどうしよう」と言い、そのままめそめそしだした。この夢がよっぽど怖かったらしい。

私は長女に「大丈夫。カメレオンになった人を元に戻す方法を父さんは知ってる。バターしょうゆ味のポップコーンを食べさせればいいんだよ」と優しく教えてあげると、長女は真顔で「絶対ちがうだろ」と文句を言って寝た。妻によく似た顔だった。

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