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日記 コーンフレークのような人
コーンフレークのような人になりたい、と思う。
外食時に食べるコーンフレークといえば、みなさんなにを想像するだろうか。そう。パフェである。コーンフレークはパフェのかさ増しとしてよく使われている。メインとメインの食材の間におり、自分を主張せず、主役を引き立てる影の役割。つまりコーンフレークのような人とは余白の美学がある人と言えるだろう。
じゃあ余白の美学がある人とはどういう人か。その人はたぶん、予定や考え方を詰め込みすぎず、常に余裕を持っている。たとえば急に「今から地球上のマクドナルドの店舗全部まわってどこが一番おいしいか決めようよ」とか「全部の心霊スポットでマツケンサンバ踊ろうよ」とか誘われたとしても「それは面白そうだね」と返せる人のことである。うん。余裕があるなあ。
そしてコーンフレークといえば、家庭でもよく食べるだろう。コーンフレークは朝から楽して空腹を満たすことができ、しかも栄養素が豊富である。と見せかけて、あのパッケージ裏の栄養素の五角形は自分の得意分野and牛乳の栄養素も追加して表示するという姑息さを持っている。つまりコーンフレークのような人とは反則の美学がある人とも言えるだろう。
「すまん。その日は部下が祝ってくれるから断れないんだ」
「あなたっていつもそうよね。私の部屋に来るのはきっと次の日かその次の日でしょう?でもいいの。私って馬鹿だから、あなたの大きな背中にすがって寝られたらすべて忘れてしまうもの。今年も誕生日おめでとう。ズルいあなたへ」
きっとこういう大人のズルさを持っている人なのだ。そうにちがいない。
時に子供から人気があり、時に忙しい大人を助ける存在。とても便利でおいしいのに、なぜか誰の好きな食べ物ランキングにも入らない。決してあなたのお気に入り一番になりたいのとか、そういう面倒くさいことを主張しない。忘れられても我々を恨むこともしない。ひっそりとただそこにいつも待っている。それがコーンフレークのような人なのである。
夜。妻がこどもたちを寝かしつけている間、私はリビングでひとり小腹が空いて、なんとなくコーンフレークを食べてみることにした。
いつもは朝に食べるコーンフレークをこんな遅い時間に食べるのは、まるでいつも朝にコーヒーをテイクアウトするカフェの店員さんと夜のプライベートな時に出会ったような恥ずかしさがある。
「今日は『こんばんは』ですね」と私は小さく言った。
彼女はいつものヨーグルトとちがって牛乳を身に纏っていて、その姿も新鮮で少し緊張した。
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「私、いつもみんなからおまえは甘すぎだって言われるから。だからプライベートでは牛乳にしてるんです。少しでも私の甘さを牛乳に溶かして取り除きたくて」
「なにを言ってるんですか。それじゃいけません」
「えっ」
「牛乳はもうやめてください。あなたはあなたのままでいい。私はザクザクで甘いあなたが大好きなんです」
「……もう。やっと言ってくれましたね。三年間、ずっとその言葉を待ってましたよ」
「待たせてすいません。さあ、今から私と一緒に地球上のマクドナルドの店舗でどこが一番おいしいか決める旅をしましょう。始めはどこの国がいいですか?」
「なにそれ?……ふふっ、面白そうね」
彼女は私が既婚者であることを知らないだろう。いや、知っていて知らないふりをしているのかもしれない。私は彼女をスプーンですくって食べた。彼女は牛乳に浸かりすぎてショナショナになっていた。