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東京寫眞帖 : 大森・天祖神社
先週末に大森に出かけた帰り、ふと駅前の天祖神社に行ってみようという気になりました。
何度も見かけてはいますが、これまでいちどもお参りしたことがないのです。
こんなふうに目的地以外のところにも気軽に立ち寄れるのは気持ちに余裕がある証拠、ようやく涼しくなってまともな気温になったおかげですね。
さて、件の天祖神社は、大森駅の横浜方面改札を出てすぐの交差点を渡った目の前にあります。駅前を南北に通じる池上通りは、昔は「八景坂」「薬研坂」とも呼ばれて、かなり急な坂だったそうです。
「八景坂」の「八景」とは、「笠島夜雨、鮫州晴嵐、大森暮雪、羽田帰帆、六郷夕照、大井落雁、袖浦秋月、池上晩鐘」のことだとか。ナントカ八景ってあちこちにありますね。(というか、本家の八景がうろ覚えですよ…)
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天祖神社。
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見るともなしに見やって、
これは神社も相当な階段では?… と一抹の不安が。
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この急な階段を登りきってすぐに鳥居があります。
一礼して境内に入ると、拝殿の前ではサークルかなにかでしょうか、長テーブルを出して小学校高学年らしき子供たちが話し合い中。
境内右手の岬のように突き出たところでは、ベンチに座って男性がタバコをぷかぷか。
神社は静かな村の鎮守様といった雰囲気でした。
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拝殿の向かって左手は公園。
訪れた時はがらんとしていましたが、祭礼の日にはきっと参拝客や屋台でいっぱいになるのでしょう。
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狛犬のまるっとした後ろ姿がかわいらしい。
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全体に丸々しているのと、
ぷっくりした口もとがかわいい。
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なんだか笑っているように見えます。
足元の子獅子も丸々と。
境内の一角には国旗掲揚台?と思われる石柱がありました。側面には「皇紀2600年記念」「國威宣揚」の文字が。
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国旗掲揚台ではないかも。
皇紀2600年は昭和15年、日中戦争の最中です。
ひっそりとした神社にひっそりと残る台座に、紀元2600年をめぐる熱気もその後の惨禍も、ーーー大げさに言うなら、人の世というもの自体がなんだか幻のようだと思いました。
かつて八景坂の上からは房総半島までが見渡せたそうです。埋め立てで海岸線が遠くなった今、高台にあるこの神社からでも、房総はおろか江戸前の海すら望めません。
それでも神さまは変わらずにここにいて、人々が生き、悩み苦しみ喜び笑う、そんな毎日を眺めているのですね。
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帰りは境内横の階段を降りました。
(2024.9.28)