『大吉原展』に行ってきた
東京藝術大学大学美術館で開催中の『大吉原展』。
この悲しくセンシティブな歴史を扱うにあたって初動のプロモーションにおいて炎上、その後、新たにステートメントを出して3月29日から開催しています。
平日のお昼過ぎに桜満開の上野公園を通って東京藝術大学の美術館に到着。
のんびり気分を裏切られ、平日だというのに予想外の混み具合にシュンとしてしまった。
1つの展示に10人くらいが固まるから、あちこちで渋滞している。
第1会場から第3会場までをくまなく見て回り終わるまで私は3時間ほどかかりました。
かなりエネルギーを消耗するので事前の腹ごしらえとこまめな休憩は必須です。
私の主な目的は浮世絵に描かれる着物を見ること。
着飾るプロでもあった吉原の女性たちがどんな着物を纏っていたのか。
どんなふうに着こなしていたのか。
喜多川歌麿、渓斎英泉らが描いた着物は、柄×柄のコーディネート炸裂、色のレイヤードのオンパレードです。
「季節感」というある種の縛りを楽しみつつセンスを競う。
「粋」な女性たちの世界を堪能しつつ「やっぱり着物おもしろいし奥深い」と新たな探究心が芽生えました。
中でも私が一番心奪われたのがこちらです。
三代目歌川豊国(国貞) 『扇屋内 花扇 よしの たつた』 です。
さんざん色とりどりの絵を見ておいて最もときめいたのは藍一色を濃淡で表現する「藍摺(あいずり)」でした。
この藍色は人工顔料「ベロ藍(プルシャンブルー)」を使用しており、西洋から輸入されたハイカラな技法で当時の絵師の間で流行ったようです。
葛飾北斎「富嶽三十六景」もベロ藍を用いて描かれています。
藍の美しい濃淡にも魅かれたのですが、私が感心した点は着物の柄に込められたギミック。
着物の裾に蝶がいるのが見えるでしょうか。
花魁道中で特徴的な「外八文字」で歩くと、その蝶が藤の花にじゃれているように見える作りなんだそうです。
しかもよく見ると藤の花は立体になっています。
もう、なんてこと・・・。
花魁道中という一瞬の輝きのために最高の技術と惜しみない時間を注ぐ。
その職人技と遊び心を大事にする心意気に頭が下がります。
そういった事実に気付いたり、実際に見ることができるのがこういった展覧会のいいところだと思います。
今回の展示でもうひとつ忘れられない展示が河鍋暁斎の「薄幸物語」です。
吉原という世界の悲しい現実がこの絵に凝縮されている。
見ていると喉の奥が熱くなって辛くなる。
その絵はサイズも小さく大袈裟に展示されていなかったけど、この絵を展示する意義は深いと思いました。
思いのほか混んでて疲れて帰宅後、『吉原炎上』鑑賞です。
これまたエネルギーがないと観れない映画ですが、ここはアルコールというガソリン注入で五社ワールドへ挑みます。
ひとりの女性が変わっていく様子、というより変わらざるを得なかった背景。
廓の中で展開する色濃いドラマに強く生きるまなざしを教えられます。
『吉原炎上』予告編。有名な「噛んで」のシーンも。
鮮やかな半襟が目を引く衣装たち。
髪型ひとつで印象が激変するというスタイリングの力も思い知らされる。
髪型といえば「化粧文化PLUS」という小冊子が無料だったのでもらってきました。
これが無料と思えないほど内容充実。
会場でも日本髪の展示がありましたが、それを提供していたポーラ文化研究所の小冊子です。
これが無料なんてポーラさん太っ腹。
そろそろ葉桜の時期ですが、艶やかな生まれたての緑を愛でるのも春の醍醐味。
上野散策でアート満喫しつつ『大吉原展』からの『吉原炎上』おすすめです。