【835/1096】黙って聴く
カウンセリングで学んだ聴く技術に、
「ただ黙って聴く」
というのがある。
私がカウンセリングを受けに行っていたとき、これをしてくれたカウンセラーは1人もいなかった。
お金を払って聴いてもらってるのに、まともに聴いてくれる人がいないと思って、自分が学ぶことにした。
私がカウンセリングを学び始めたときに最初に習ったのは、カール・ロジャーズの傾聴であった。
カール・ロジャーズは、アメリカの心理学者でパーソンセンタードアプローチという心理療法を創始した人である。
そのロジャーズの「中核3条件」というのがある。
「自己一致」「受容」「共感的理解」だ。
カウンセラーの条件である。
ロジャーズは、話し手の邪魔をすることなく、自由に安心して話してもらうためには、聴き手の態度が重要であると考えた。
ということは、聴く側は自分の在りようそのものがカウンセリングに重要ということである。
これを磨くために、カウンセリングのスーパーヴィジョンというものを受けている。(スーパーヴィジョンはカウンセラーの教育のこと)
そのうちの一人の先生からの教えが「黙って聴く」であった。
共感的に聴くというのは、相手の話に全面的に受容して聴くということなのであるが、この受容して聴くというのは、全方向から受容しないと意味がない。
表面的な受容では、相手は理解されたと思わない。
話には、表裏があり、その表裏全部を両方観れないといけないということがある。
が、これを最初に出来る人はいない。
なぜなら、これは自分の器が広がってないとできないから。
なので、まず、「黙って聴く」をしなさいと。
とにかく、口を挟まないで、相手が話し終わるまで黙って聴くということである。
実際にやってみると、かなり難しい技術であることがわかる。
最初は本当にはちゃめちゃにできなかった。
しかし、黙って聴くができないと心のより深いレベルまでカウンセリングが進まない。
黙って聴くというのは、
口を挟まず、
質問せず、
助言をしない。
話が終わるまで、静かに聴く、ということである。
これを日常会話でやろうとしたら至難の業であることが容易にわかるので、気になった人はやってみてほしい。
ちなみに、カウンセリングの中でも難易度が高い技術であり、これが本当にできていればカウンセラーとして一流だと教わった。
黙って聴くと、聴いてもらった人に日常では浮上してこなかったより深いレベルの悩みを語り、気づかなかった自分を発見するということが起きる。
自分自身の中から、自分の言葉が語られる。本人が気づかなかったことが言語化されるからである。
これが悩みを解決するきっかけとなったりする。
カウンセラーが口をはさむと、話し手はカウンセラーの意向に従おうとする意識が働く。
カウンセラーの意向に従おうとして話したことは、カウンセラーの範囲をでないのである。
親が子の話を聴くときも同じだ。
子どもの話を最後までさえぎることなく聞き終えたことはあるか?を自分に問うてみるといいと思う。
そのようなことを親に自分がやってもらっていない人は、そのような聴き方をすることすら思いつかないかもしれない。
私もカウンセリングを学ぶ前は、まったく思いつかなかったし、自分がしてもらってないのだからできなくて当たり前だとも思う。
が、しかし、これは子どもにとても必要だと思う。
親の意向に沿わないで、自分の意見をただ言えるという関係性が親と子の間で出来ると、かなりフラットになる。
もちろん子どもが小さいうちは力の差はあるのだが、それでも、このように聴いてもらえば「自分は軽く扱われない」「自分の言葉には力がある」と無意識に刷り込まれる。
それがベースにあるというのはとても大事なことだと思っている。
自分が黙って聴くができるようになったな、と実感したのは、呼吸を学んでからである。
息が通っている自分で聴くというのが、結局、あり方として最重要なのである。
黙って聴くをしてもらったことのない人は自分がまず聴いてもらう体験をするほうがいい。
「黙って聴く」に特化したのが、こちらのセッションです。
では、また。