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【908/1096】親密さへの恐怖

「親密さ」と聞くと、何を思い浮かべるであろうか。
友だち、夫婦、親友、恋人、家族、きょうだいなどの関係を思い浮かべる人もいるかもしれない。
仲が良いことを親密さと表すこともあるかも。
心理学では、親密さは

「関係の中で自分を犠牲にしたり裏切ったりせず、相手を変えたり説得したりしようという要求を抱かずに、相手のその人らしさを承認し合える」

(Lerner,1989)

ことを意味する。

これは、実現することは容易ではない。
他者からはなれていながら、他者と結びついているというパラドクスを含んでいるからである。

親密さを獲得する代わりに

①絶えず争い続ける
②冷え切った関係に陥って関わりを避ける
③子どもの問題にのめり込む
④逃げる人と追いかける人、過剰機能の人と過少機能の人が二人組になる

「家族への心理」より

などで不安に対処しようとするカップルは少なくない。
WeeksとTreatが、親密性の恐怖について6つの要因を述べている。

①依存への恐怖
 パートナーに依存することができない人が持つ恐怖。依存する人は弱い人だと見なしていたり,依存することでパートナーの重荷になることを恐れている。同時にパートナーの依存を受けとめることも難しいため,2人の心理的距離を縮めることは難しくなる。(俗にいう甘え下手もこれに入る)

②感情に対する恐怖 
 感情を表現すること,感情をパートナーと共有することを恐れること。親密さには,明るく楽しい感情のみならず,悲しさやつらさ,弱音も共有されることが必要だが,例えば論理性や合理性が重視され,負の感情が否認されることもある。
自らの感情を表現できないだけでなく、相手の感情も受け入れられない。

③怒りに対する恐怖 
 怒りを表現することで相手を傷つけてしまうことを恐れて,正当な自己主張ができなくなったり,相手から怒りを向けられることを過度に恐れるために,適切な自己表現ができないこと。自らを服従的な立場に追いやってしまいかねない。

④コントロールを失うこと,あるいはコントロールをされることへの恐怖
 パートナーと親密になることによって,自由が奪われたり,束縛・干渉されるという不安を感じている。自分がパートナーにのみこまれて,自分自身がなくなってしまうような深い不安を抱いている場合もある。

⑤自分をさらけ出すことへの恐怖
 自分のことを相手により深く知られることを恐れる心理。自分のことを相手に知られると,相手からの評価が否定的なものに変化するのではないかと恐れている。したがってパートナーに自己開示することが難しく,信頼関係が深まらない。(自尊心の低さが関係すると言われている。)

⑥見捨てられること,拒絶されることへの恐怖
 パートナーがいつか自分を見捨てるのではないか,拒絶するのではないかということを恐れる心理。そのために「この人はどうせ自分を見捨てるから」と常に否定的な結果を予測し,相手と距離をおくか,相手の愛情を常に確認しようとしがみつくという行動をとる。

参考文献「家族心理学-家族システムの発達と臨床的援助」

これらの恐怖は、誰しもが持っているもので、持っていること自体は問題がない。
しかし、この恐怖を自覚しておらず、適切な対応が取れないという場合には、本当には親密な人間関係を築けないということになる。

ちなみに過去に自分は、このすべてに当てはまり、親密な関係を築くのは絶望的なのでは・・・と思ったものである。

この親密さへの恐怖を克服しないと、十分に安全な他者ともつながれない。
これを克服するためには、自分の無防備な姿をさらけ出せるかどうか?がキーになるが、それができたら苦労しないよ!ってな具合だった。
無防備な自分、自体がよくわからなかったからである。

見捨てられ不安も相当に強くあり、人は恐怖の対象であったため、それを一人で克服するのはまず無理だった。
セラピーを受けて少しずつ、ではあったが、これまた、セラピストを信頼するのも難しいため、治療がなかなか継続できずに彷徨うはめに。

それでも、本当に少しずつ、自分の痛みを表に出す練習をコツコツと続けた。相手が自分を受け入れてくれるかどうかわからないというリスクを冒さないと、これを克服することはできないと知っていたからである。

そして、大事なのは、他者と言う別の物体だけではなく、自分の身体という自分の個体との親密さも取り戻す必要がある。

身体との親密さを取り戻すと、他者との親密さを適正に対応できるようになりやすい。
自分の身体で出来たことは、他者との間でも出来るようになる。そこを変換するための知的な理解は必要ではあるが。

親密さへの恐怖に克服するのは、1人ではできないので、ここに課題がある方は、パートナーに話してみたり、カウンセリングを受けて、話してみたりすることで少しずつ回復していくことができる。

心と身体の両方にアプローチできるセッションがおすすめです。

では、また。

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