映画のはなし:アル・パチーノが全部もっていく『セント・オブ・ウーマン』
移動中にSpotifyで音楽やラジオを聞いていることが多いのですが、最近「This is」シリーズにハマってます。で、この間おすすめにあがってきたのが、「This is ジョン・ウィリアムズ」。そら名曲だらけでしょうなぁ、と聞いてみると、『ハリー・ポッター』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ジュラシック・パーク』や『インディ・ジョーンズ』や『スター・ウォーズ』などなど、想像通り名曲の数々ですよ。
知ってたけど、ジョン・ウィリアムズ先生、やっぱ神だわ。
そんなことを考えながら聞いていると、「え!?この曲もジョン・ウィリアムズだったっけ??」と驚いた、『セント・オブ・ウーマン』。
どうやら、映画本編の音楽を担当したのではなく、私の大好きなヴァイオリニスト、イツァーク・パールマンとジョン・ウィリアムズによるCD「シネマ・セレナーデ」に、あの象徴的なタンゴシーンで流れている「Por una cabeza」が録音されているからプレイリスト入りしていたみたいですね(ちなみにこのCDもめちゃんこいいです。めっちゃおすすめ!)。
タンゴの名曲「Por una cabeza」、やっぱり何度聞いてもいい曲だなぁ、あのタンゴのシーンもっかい見たいな、ということで観返した『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』。
奨学金をもらい全寮制の名門高校に通うチャーリーは、クリスマスに実家に帰るための旅費を稼ぐため、あるアルバイトをすることにする。それは、娘一家が旅行の間、気難しくひねくれ者の盲目の退役軍人“中佐”の世話をすること。
アルバイトの前日、チャーリーは学校で自らの人生を左右し得るある事件に巻き込まれてしまう。しかし中佐は「ある計画」を遂行するため、強引にチャーリーをニューヨークに連れ出し、困り果てるチャーリーをものともせず、豪遊に付き合わせた。
そしてニューヨーク滞在も終わろうとした頃、中佐の「ある計画」が明らかになる。
人生を左右する帰路に立たされたふたりの、数日間の交流と、その先にある希望を描くヒューマン・ドラマ。
監督は、私も大好きな『ミッドナイト・ラン』のマーティン・ブレスト。
本作で“中佐”を演じた主演のアル・パチーノは、納得のアカデミー主演男優賞を受賞しています。
ってゆーかアル・パチーノってメリル並みにアカデミー賞受賞してそうなのに、主演男優賞は本作で受賞したのみ。『ゴッドファーザー』シリーズではノミネートはされてるけど、受賞はしてないのよね。
でももう、この作品、アル・パチーノの独壇場だもの!
久々に観たけど、「そら主演男優賞獲るわ!!」って思いました(授賞式がひげもじゃでちょっとビビった)。
いまさら「アル・パチーノって名優!」なんて分かり切ったことを言っても仕方ないんですが、30分に1回くらい「やっぱうまいなぁ……」とため息。
目線を動かさない演技、というテクニカルな部分だけではなく、チャーリーと中佐が初めて本音でぶつかり合うシーンなんて、観てるこっちもものすごい感情を揺さぶられてぶわっと涙が溢れてくるし。
中盤から後半にかけて名シーンがいっぱいあるのですが、やっぱり「Por una cabeza」のタンゴと、ラストの中佐の大演説は最強シーン。
そして渾身の「hoo-ah!」よ。
なんのこっちゃと思うかもしれませんが、いや、マジで観たら「hoo-ah!」なんですよ!
ちなみに超絶ステキで有名なタンゴのシーンですが、本編に大きく関わるわけではないです。なのに『セント・オブ・ウーマン』といえばあのタンゴ、と言われるくらいの名シーンになったのは、「Por una cabeza」の曲の力も大きいと思う。あの胸を締め付けるような哀愁たっぷりの美しいメロディ、ホントにいいですよね。楽譜買っちゃった。
ちなみにガブリエル・アンフォー(女優さん)の背中も、これまた嘘みたいに美しいのですよ!
タイトルにもある『SCENT OF A WOMAN』の意味は、「女性の香り」。
目が見えない中佐は女性の香りでその人の特徴まで見抜ける、という部分を表してます。
タイトルだけみるとラブストーリーっぽいけど、頑固なおじさんとちょっと気弱だけど優しい青年による、めちゃいい大人のおとぎ話です。