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9.下町散歩。不思議の国のアリスに学ぶ自分探し。

臨床心理士・公認心理師・ヨガ講師の村上真弓です。
今日もご覧いただきありがとうございます。


私は数年前、大切な人との別れを体験したあと、しばらくの時期、
週末は決まって、喫茶店巡りと称して見知らぬ土地へ、ひたすら散歩をしていました。



皆さんは、お散歩、好きですか?


その頃、私は「迷子になりたくて」仕方なかったんです。


自分でも何で?と思うくらい、「迷子になりたい」と心の中でつぶやいていました。


喫茶店へ行くという目的は決めつつも、


見知らぬ街の、小道へ入り、
地図も見ず、彷徨うような感覚を、不思議なほどに求めていました。






一人で色々な喫茶店に行くことで沢山の素敵なことにも巡り合えました。


宇宙のような写真を撮る写真家さん。
気さくに傘を貸してくれるマスター。
帰り道まで案内してくれた少年。


私の心温まる思い出です。





でも、なぜ、あんなにも「迷子」になりたかったんだろう。



大切な人との別れを経験し、
なんだか自分の中が空っぽでした
自分では乗り越え難い何かと対峙しなければならない感覚があって
がむしゃらに、歩き続けました。


「迷子」というのは、子どもにとっては不安でしかない体験だと思いますが、大人が「迷子」になった時は、どうやって、その状況から抜け出すでしょう?


「思考」や「経験値」だけでは解決しえない場面になった時、
私たちの「感性」が試されます


「なんとなく、あっちではない」
「なんとなく、こっちの方が良い」



私は、決められた目的地や、狭い価値観の思考回路に、どこかうんざりしていたのかもしれません。


「自分の感性だけで」「何かを決めたい」
「自分の感性を信じたい」「自分の感性は何だ??」




ここで、頭に浮かぶのが
『不思議の国のアリス』です。


映画ランド 不思議の国のアリス


絵本や映画で、一度は目にしたことのある人が多いのではないでしょうか。


あの見た目、想像性のインパクトは、凄いですよね。



物語は、言葉をしゃべれる白うさぎがポケットから時計を取りだすシーンから始まります。それを見て、好奇心だけで、うさぎを追いかけ、アリスは深い穴に落ちてしまいます。



心理学では、穴に落ちたり、地下へ潜ったりするテーマは、心の「無意識」を表していると考えます。

(村上春樹さんの小説でも、井戸に落ちる表現は度々登場しますよね)


暗く光の当たらない、深く深く下へ潜っていく所が
「無意識」への旅路を始めるプロセスに似ています。


アリスは、下へ下へと落ちていき、様々な方法によって、身体が伸びたり縮んだりする目に遭います。


自分の体がみるみる変化したり、目に見える世界がグラグラと揺れるように変化する中で、アリスは「自分はいったい誰なのか?」という疑問を持ち始めます。「自分は自分自身なのか?他の誰かと変わってしまったのではないか」と、「私は私である」という核心的な感覚が失われてしまうのです。


キノコの上のアオムシは「だれだ、お前は?」と問いかけます。アリスはこの質問にうまく答えられず、その場を立ち去ろうとしますが、アオムシに引き留められ、「無言」の時間に耐えて、この国の秘密を教えてもらいます。


「沈黙」が逆に「考える」時間を与えてくれたのです。


そして、アリスは、ニヤニヤ笑う興味深い存在、チェシャ―ネコに出会います。チェシャネコとだけは、意味を持った会話が成立します。
「ここから一体どっちへ行けばいいか、教えてくれない?」とアリスが訪ねると…「そりゃ、どこへいきたいかってこと次第だね」と答えるのでした。



アリスは、この後も、あまりにへんてこな人や動物たちと出会い、ぶつかり合い、へんてこな理論、通じない会話の中で、アリスだけは合理性や正論をはっきりと主張します。
そう、穴に落ちて自分が何者かわからなくなったアリスは、最後には自分の意思・信念をはっきりと主張できるようになっていたのです。



こうした物語は
実は思春期~青年期の心性に見られる
「自我同一性の拡散/確立」(私は何者なのか?)というテーマに似ています。

面白いですね。

この自問自答は子どもの成長のプロセスでもあれば、実は、大人になっても、このテーマに悩む人もいます。


例えば、ママたちはどうでしょう?

ある人は妻になり、母親になり、
ある場面では、社会人としての顔など、様々な顔(役割)を持つようになります。


「○○君ママ」「○○ちゃんママ」と呼ばれることが増え、本来の「私」の名前を失うのです。


この時、ママ自身の「アイデンティティ」、私は私であるという感覚がグラつき、不安が生じます。


「私って何なんだろう?」
「子育をするしか、社会の役に立っていないのかな?」
「なのに、子育てもまともにできないなんて、生きる価値ある?」


こんな風に、心の奥では思っているかもしれません。



不安が、「怒り」を呼ぶ、なんてことも多々です。




アリスのように、心の深い部分に向き合った先の「自己成長」

ママ自身が抱えているイライラやモヤモヤした悩みも、
静かに自分と向き合う中で、一見合理的でない感覚や考えも、味わいきると


靄がぱっと晴れる、一筋の光となる
、かもしれません。


※参考
多田昌代2011「『不思議の国のアリス』に見る面たライジング能力の発達:心的現実の経験モードとリフレクティブ機能」京都大学カウンセリングセンター





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臨床心理士・公認心理師・ヨガ講師
村上真弓




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