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⑱「ご指摘ありがとうございます」問題
研修講師の石原まゆこです。職場のジェネレーションギャップの生情報を紹介しております。基本スタンスは、上司の味方です。がんばれ!上司。
「注意しているのに、なんかお礼を言われるんですよね・・・」
上司から注意や指摘をした時、部下から謝罪、言い訳、無言のいずれかが来るのではないか、という場面で先に「ご指摘ありがとうございます」と言われると、なんか肩すかし。いや、そこはお礼より前に、なんか言うことあるだろう?という気持ちになるのだそうです。
「ご指摘ありがとうございます」は相手からの指摘への感謝の言葉ですね。ビジネス敬語表現としても間違っていません。でも、この違和感。なんとなく失礼な感じ。まず謝るのが先なのではないか。事態を真剣に受け止めていないのではないか。この場さえ凌げればよいと思っているのではないか。自分が悪いとはあまり思っていないのではないか。というモヤモヤが上司の中に湧き上がっています。が、指摘の事態に対し対策を立て、改善や収束を目指すフローの中で、このモヤモヤはそのままになりがち。「ご指摘ありがとうございます」自体を指摘する機会はなく。
これは、研修講師をしているときにも、経験があります。
「あなたのグループディスカッションでの態度は、ふざけているように見える。目的を持って高い成果を出す仕事への意欲が、〇〇という発言や~~な行動からは感じられない。明るく前向きに取り組むのと、ふざけるのとは違うと私は思う。あなたはどう思いますか?」
「ご指摘ありがとうございます。石原講師の仰るとおりだと思います。以後改めます」
この石原講師(私)は、事実と根拠を一通り丁寧に解説してしまっているので、それ以上返しようがないやりとりですね。これでは相手の行動変容に繋がる思考が促されません。「あなたのグループディスカッションでの態度は、私にはふざけているように見えた。あなたは、自分の態度をどのように振り返りますか?」と若手社員にボールを渡すべし。ボールを渡されれば、問いへの答えを考えなければならない思考になるので、「ご指摘ありがとうございます」とは出ないかも知れない。
若手社員に尋ねてみたところ、本当に嬉しいんです、という声も複数。叱られたり、注意されたり、怒られたりするのは、自分の気づきや成長に繋がるので、嬉しいのだそうです。そんな風に”刺さる”言葉を伝えてくれる人はなかなかいないので、言葉通り有難いのだと。でました、刺さる!
上司のモヤモヤに話を戻しますと、こちらの真剣味が届いていないのかなあ、舐められているのかなあ、でもイマドキは詰めるとか怒鳴るとかはできないしなあ。だから、感情的にならないように、事実に根拠を添えて丁寧に指摘しているんだけどな。こうなると、さきほどの石原講師のケースと近い状況で、上司の指摘の仕方にも改良の余地はありそうです。
社外とのやりとりとなると、場合によっては影響度は大きくなります。
3つの例文の違いです。状況の重要度かつ緊急度、相手との関係性、相手の感情の温度によります。いずれも間違ってはいません。
ご指摘ありがとうございます。
この度は、原稿に不備があり、大変申し訳ございません。
記載ミスを修正し、〇月〇日15:00までに修正原稿をお送りいたします。
今後、チェック体制を整え同じミスを繰り返さないよう責任をもって管理します。
原稿に不備があり、大変申し訳ございません。
記載ミスを修正し、〇月〇日15:00までに修正原稿をお送りいたします。
今後、チェック体制を整え同じミスを繰り返さないよう責任をもって管理します。
この度は、ご指摘ありがとうございました。
原稿に不備があり、大変申し訳ございません。
記載ミスを修正し、〇月〇日15:00までに修正原稿をお送りいたします。
今後、チェック体制を整え同じミスを繰り返さないよう責任をもって管理します。
お詫びのメールに必要なのは、お詫びと対策。お礼は混ぜない方がすっきり、と私は考えます。いかがでしょうか?
★対策と指導案★
✓まず、謝罪。次に対策。(お礼はいれるなら最後)まずは、型をご指導ください。社内ではいいけど、社外は気をつけてね、は通用しません。社内で通常やっていることは、社外でもやりがち。社内の会話から修正します。
✓「いや、そこお礼はいらんから」と瞬殺返しをしてみたこともあります。発言潰しの圧と受取られ、若手は萎縮しその後の指摘内容が耳に入らない。指名されたくなくて誰も目をあわせてくれなくなりました。型を指導する際はご注意ください。
✓ずれているな、と感じたら「Iメッセージ」でフィードバックです。会話の中で、相手から届いた事実や感情に対して、正確にボールを返す。この会話の基本は、ビジネスでも生活でも活かせるスキルです。会話のキャッチボールのズレは個性の内で、日常生活では、あの人はそういう人だから、で許されている場合も多い。実際は、会話の相手がくみ取ってくれて、我慢してくれている。ビジネスでは、クレームやリピートしない原因になりやすいです。本人には悪気はなく、単なる会話のクセである場合も多いので、気づいた時には是非指摘してあげてください。