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創作怪談 1

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創作怪談、ホラー小説です。 ホラーが好きなので自分でも書いてみようと思い書いています。 なるべくリアルで、ありそうな怪談を目指しているので、創作と言いながら、実は1部実際にあった…
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記事一覧

創作怪談 『洗面台』

創作怪談 『洗面台』

  古いアパートの洗面台の蛇口はどうやら壊れているらしい。
見た目からして古いそれは、蛇口を捻れば変な音を立て、その後に水が出ていた。
そのうち、常にポタリ、ポタリと水が滴るようになった。
さすがに、業者に頼まなきゃなと思いつつ、金銭の問題と、忙しさとで未だに修理できずにいた。

 いつものように、洗面台で顔を洗っていると、水が少し濁っているように見えて手を止める。
サビが出てきたのか?
最悪だな

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創作怪談 『キッチン』

創作怪談 『キッチン』

  新しいマンションに引っ越した。
1番気に入っているのは、キッチンだ。
元々、料理が趣味だと言うの事もあり、このキッチンのために引っ越してきた。
シンプルだが、機能的で使い勝手がとても良い。
窓も大きく、明るい雰囲気なのもとてもいい。
数週間過ごしたが、なんの問題もなくキッチンでの料理時間が、仕事でのストレス解消の時間になっていた。

  休みの日の夜中にサブスクで映画を観ながら、手作りしたツマ

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創作怪談 『箱の中』

創作怪談 『箱の中』

  旧校舎にある、部室の隣にある使われていなかった一室を片付けることになった。
物置のような使われ方をしていたのだが、自分たちで片付けるなら、部活動中に使っていいと言われたので、部員達で片付けることにしたのだ。
  どうやら昔は教室として使われていたらしい。
その部屋は、長い間放置されていたらしく、ホコリが溜まっていて、蜘蛛も巣くっていた。
机や椅子が乱雑に積まれていて、他にも体育祭や文化祭で使っ

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創作怪談 『閉めないで』

創作怪談 『閉めないで』

  「しまった……」
気がついたのは、部活動も終わり、駐輪場にたどり着いた時だった。
自転車の鍵がない。
普段はスクールバッグの内ポケットに入れているのだが、今日は遅刻ギリギリになってしまって、急いで鍵をかけた後、弁当、水筒を一緒に入れた保冷バッグに突っ込んだはずだ。
それごと忘れてしまっている。
部室に戻り探してみるが、ない。教室に置いてきてしまったのだろう。
面倒だが、仕方ない。

  この時

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創作怪談 『部屋の匂い』

創作怪談 『部屋の匂い』

  バニラの入ったお菓子だとか、果物の熟したような匂いがする。
  最初はほんの少し、ほんのりといい匂いが漂っていて、ルームフレグランスか、使っていた香水の残り香かと思っていた。
一人暮らしをしている、ワンルームのマンション、
いつからか、仕事が思って部屋に帰ってくると、そんな、甘い匂いが漂ってきた。
友人に貰って置いてあるルームフレグランスに鼻を近づけ嗅いでみるが、この香りは柑橘系の香りで、ほの

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創作怪談 『引き出しの奥』

創作怪談 『引き出しの奥』

  小学生に入学するという少し前、近所に住んでいる従兄から、勉強机を貰った。
木製で、引き出しがひとつだけ付いているようなシンプルなものだった。
新しい勉強机を買って貰えないことに多少なりとも不満を持ってはいたが、我が家は少し貧乏で、幼いながらも、それを理解していたため、仕方ないと思いながら、その机に祖父母に買ってもらった文房具などを置いた。
入学して、勉強机を頻繁に使うようになってから、少々気に

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創作怪談 『影』

創作怪談 『影』

  日々のルーティンに追われる会社員として、特に変わり映えのしない毎日の生活を送っていた。
そんなある日、通勤途中に妙な光景が目に付いた。人混みの中、一人のスーツを着た男性が歩いていたのだが、どこにも彼の影が見当たらなかったのだ。
最初は単なる見間違いだろう。そう思ったのだが、次の日、一人の大学生だろうか、若い女性の影が見当たらない。
またその次の日も、通勤途中で影のない人々を見かけるようになった

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創作怪談 『消えた靴』

創作怪談 『消えた靴』

  それなりに身なりに気を使うタイプなので、「オシャレは足元から」という言葉の通りに、靴にもそれなりに気を使っていた。
  とはいえ、まだ大学生のアルバイトなので、そう高価な物は持っていないが、親にプレゼントとして買ってもらったものを含め、スニーカーや革靴、ブーツなど、それなりの物をいくつか履き分けていた。
収納も少ない部屋なこともあり、玄関にはいつも数足の靴が置かれているのが日常だった。
明日は

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創作怪談 『水槽』

創作怪談 『水槽』

  学校帰りにいつも通り、ペットショップに立ち寄った。
水槽の中を泳ぐ魚たちを眺めるのが好きで、放課後になると、そこで過ごすのが日課だった。
そこで気に入った子がいれば、休みの日に購入しに行く。
常連と言うやつで店長やバイトの人からも顔を覚えられていた。
その日も、店員に挨拶をし、店内を歩いていると、奥まった場所に置かれた小さな水槽が目に留まった。
薄暗い照明の中、その水槽だけが異様に目立っていた

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創作怪談 『鏡の向こう』

創作怪談 『鏡の向こう』

  翔太はベッドに寝ながらスマホを弄っていた。
ココ最近は最近はよく夜更かしをしている。
その日も、夜更かしをするつもりは無かったのだが、動画を見ていたらいつの間にか、夜中になっていた。
そろそろ寝るかと寝返りを打った時、姿見が目に入った。
鏡の中の自分と目が合う。
普段と変わらないので特に気にも止めず、目を閉じた。

  その日は、友達と通話をしながらゲームをしていた。深夜の2時ぐらいになって、

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創作怪談 『ストーカー』

創作怪談 『ストーカー』

  彩夏は新しいマンションに引っ越してきたばかりだった。
右隣には彩夏より少し歳上の夫婦が住んでいて、左隣には無口な男性が住んでいた。
右隣りの夫婦とは時々会うのだが、左隣の男性とは引っ越してきたその日に、見かけた程度だった。
女の一人暮らしという事もあり、特に引越しの挨拶もしていない。
もちろん顔を合わせれば、声をかけるのだが、男性とは全く会わないので、話したこともなかった。
人付き合いが苦手な

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創作怪談 『白い影』

創作怪談 『白い影』

数年ぶりに帰ってきた地元は、思ったよりも変化はなく、昔の記憶とあまり変わっていない。
色々あって、地元に帰ってきたのだが、あまり変わっていないこの田舎は、居心地良くもあり、悪くもあった。
知り合いばかりで数歩歩けば声をかけられるようなそんなド田舎だ。
あまり人様に自慢できるような理由で帰郷した訳ではないから、できればあまり人と会いたくはなかった。
とはいえ、このまま引きこもっていてはダメだと思い、

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創作怪談 『天井 後編』

創作怪談 『天井 後編』

前編はこちら↑↑↑

 その夜を境に音と共に、不気味な低いささやき声が混じるようになった。
それは、何かが這い回る音の合間に、ひそひそと聞こえてくる。
聞き取れないぐらいの囁き声。
何かを訴えかけるような、しかし意味を成さない低い声だった。

  真奈はささやき声が言葉に聞こえる瞬間があると、それを理解しようと耳を澄ます。
しかし、声の発する言葉は何故か聞き取れなかった。
恐怖が真奈を飲み込み始め

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創作怪談 『天井  前編』

創作怪談 『天井 前編』

毎日、夜遅くまで仕事をこなし、自宅で過ごすのは寝る時と、たまの休みだけ。
そんな生活を送っている、独身で一人暮らしの真奈にとって、そのアパートは古いが、それなりに綺麗で家賃は安く、静かな住宅街にあるという、なかなかいい物件だった。
  その夜も、いつものように仕事から帰り、コンビニで買ってきた弁当の夕食を終えてベッドに潜り込んだ。
外からは虫の鳴き声や、時々通る車の音がするのみで静かなものだった。

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