本は悪友
私の傍に、いつも本がいてくれる。
熱心な読書家ではない。
「趣味は読書です。」なんて、とても言えないけれど、たったひとり、途方に暮れてしまったときには、必ず本に手がのびる。
本は、私のたったひとりの味方でもあり、悪友でもある。
もし、あの本に出会わなかったら、こんなひねくれた性格にならなかったかもしれない。
こんなに迷うことも、悩むこともなく、今よりずっと生きやすかったかもしれない。
思い当たる本がいくつかある。
誰にすすめられたわけでもなく、与えられたのでもなく、あやふやな記憶の中で、たしかに自分の直感に従い選びとった、純粋に巡り会った本たち。
人は去り、時間は流れても、本はいつもそばにいてくれる。
待っていてくれる。
私はいつでもそこへ立ち返り、たったひとり、裸のままの感情を、自分勝手にさらけだす。
そこでは、はじめて出会った時の瑞々しい感情と同時に、新しい自分と出会える瞬間がある。
本は、自分以外の誰かを介入する余地を与えない。
ひとりにしてくれる。
ならざるを得ない。
だからこそ普段は気がつかない、自分の想いが自由に行き交い、自分自身に驚かされる。
本と私と自分だけの世界。
人が疎ましいわけじゃない。
ひとりが好きなわけでもない。
ただ自分と出会いたい。
本は、時空をこえたどこでもドアであると同時に、自分のために開かれた、自分へのドアでもある。
教育の行き届かぬところで、私の人格形成に多大な影響を与え、よくもまあ、こんな面倒な性格にしてくれたものだと、恨めしく思う時もあるが、そんな不器用な生き方も、実は結構気に入っている。
本に出会えてよかった。
ありがとう、私の本たち。
これからも、どうぞよろしく。
麻佑子