家族のかたち
小さいころから自己主張が苦手な子どもだった。
4歳下の弟が甘やかされて育ってわがままだったからか、
引っ越しと転校が多くて内気がちだったからか、
なぜかはよく分からないけど。
親に対してありがとうが言えない。
これが欲しいとか言えない。
泣くこともできない、体調不良を訴えることもできなかった。
私の家庭環境が最悪だったのは私が小学校高学年くらいの時だっただろうか。
例にも漏れず反抗期を迎えた弟が暴れまわり、
ろくな躾をしてこなかった父親は殴る蹴るで黙らせようとし、
母親が泣いて止める。
私はただ自室で聞こえないふりをしてじっと耐えるだけだ。
普段おとなしい私がその場に出て行って感情的に怒鳴り散らしでもすれば両親はビビッて反省するだろうと子ども心ながら分かっていたが、
それでも親の前で感情的な姿を見せるのが嫌だった。
そんなひどい状況はしばらく続いた気がするが、気づいたら落ち着いていた。
当時は、「家族ってこんなもんなんだ」と思っていたが、友達の話を聞いていると自分と違いすぎて驚いた。
妹と二人で遊びに行ったり、家族全員でライブや遊びに毎年行ったり、親と恋愛の話をしていたり。
「あ、うちってそんなに仲良くない方なんだ」と初めて気付いた。
今でこそ弟と父親は二人で野球を見に行ったりするし、私もたまには母親と食事に行くようになったし、たまには相談事なんかもするようになった。世間一般で言う「仲がいい家族」ではないと思うけど、両親は年を取るごとに仲良くなっている気がするし、まあ、「普通の家族」だと思う。
いまだに友達の話を聞いたりすると、「そんな仲がいい家族羨ましいな」と思うことがあるし、自分ももし将来家族を持つなら仲がいい家族になればいいな、と思うけれど、
こんな過去の経験があるからこそ、「家族といえ、うまくいかないことの方が多い」と思える気がするし、自分が築いた家庭が絵に描いたような「理想の家族」ではなかったとしても、「まあこんなもんか」と思えるような気がする。