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The Goal:TOCから常識を見直す

夫に勧められてThe Goalという本を読みました。
「The Goal」とは、エリヤフ・ゴールドラットが書いた”ビジネス小説”です。TOC(制約理論)というものが学べる書籍だそうで、夫は品質管理の仕事に携わっていたときにこの本を読んだそうです。

”ビジネス小説”というだけあって、物語の中でビジネスにおける様々な考え方や手法が説明されていきます。
私のようにいわゆるビジネス書に慣れていない人間には話が頭に入ってきやすいので、500ページ超えというボリュームの割に読みやすかったです。

物語はある会社のユニウェア部門の工場長である主人公のアレックスが、工場の経営悪化を理由に本社から3か月で改善が見込めない場合には工場を閉鎖すると告げられてしまいます。
アレックスは大学時代の恩師である物理学者のジョナにアドバイスをもらいながら、工場のピンチを切る抜ける為に工場の仲間たちと奔走するという話です。

物語ではアレックスが工場の仕事に時間を費やすあまり、妻が愛想をつかして家を出ていってしまうという、これビジネスと関係あんのか?みたいなエピソードも出てきます(笑)
しかし、それが私には息抜きになって良かったです(笑)

この工場立て直しにあたってのジョナのアドバイスや工場メンバーが考え実行した施策に、ビジネスにおける考え方や手法が盛り込まれています。

多くの工場が”コストを削減し、効率化することだけ”に躍起になっていますが、ジョナはまずその根底を否定します。
ジョナは企業の目標(ゴール)はお金を儲け続けることであり、その目標の為にはスループット(販売を通じて得られる利益のこと)を増やすことが最も重要で、次に在庫と経費を減らすことであると説きます。

スループット向上の為には顧客に売れる製品だけを作り続ければよいということになります。しかし、多くの生産過程においてはボトルネックが存在します。工場の生産性はこのボトルネックの生産能力に左右されるので、ボトルネックを特定して、ボトルネックを解消することで全体の生産性を向上させる必要があるとジョナは言います。つまりこのボトルネックという制約がTOCにおける基本原理として話は展開されていきます。

ただ、ボトルネックという制約だけでなく、統計的バラつきという予測が難しい制約もあるので余計に複雑になっているというのが生産過程における現状だということです。

また、ボトルネック以外の工程ではボトルネックよりも多くのものを作ってはいけないといいます。ボトルネックが工場全体の生産能力であるという制約があるので、それ以上のものを作っても余計な在庫を産んでしまうというわけです。

しかしこの在庫が一切の悪というわけではありません。
統計的バラつきによってボトルネック工程において行う作業がなくなってしまって暇にさせてしまうと、工場全体の生産能力を無駄にしていることになります。なのでボトルネック工程においてはある程度の在庫は必要です。逆にいうとボトルネック工程以外の在庫は無駄な在庫ということです。

このTheGoalを通して解説されるTOC理論は、これまで私達の中で常識となっていたことを覆していきます。
例えば多くの企業で採用されている、現在の経理システムから導かれた指標ではこれらのことは勘案されていません。工程個々の生産力の総和が工場全体の生産力として、個々の生産効率をあげることに翻弄されています。
むやみに効率をあげても実際に利益が増えるわけではなく在庫が増えるだけです。一方で経理部門では在庫という指標で工場の評価を測り、在庫を減らすことを求めるという矛盾が生まれているというのです。

これらは本当に多くの企業で実際に起きていることだと思います。
当たり前になりすぎて現在の常識、つまり従来の考えや指標、プロセスを見直すなんてことはしません。する余裕がないというのが正直なところかもしれません。よって更にビジネスが上手く回らないというループに陥っているのかもしれないなと思います。

ジョナは物語を通じて、アレックスらにすぐに答えを教えることはしません。まず自分たちで考えさせることをします。
大変もどかしく、アレックスらも物語の中で少し苛立ちを覚える様子も伺えます。しかしこの「考える」ということがとても重要なのだと思いました。
現在の状況はどうなのか、私たちは何を目指しどこに向かっているのか、うまく行っていない原因は何か、施策の方向性は間違っていないのか…。
常に問い続け、アイデアを実行し続ける。そのことが何よりも大事なのだと思いました。

これらの思考プロセスは最後の方では問題解決、チームビルディング・マネジメントといったところにまで話が及びます。
If…Thenといった「もし…ならば~ということになる」といった科学者的、哲学者的な考え方といった話が出てきます。
ここでジョナが物理学者であることがつながってくるという展開が面白いなと思いました。

私は生産管理、生産性向上といった仕事に直接関わっているわけではないので、あまり参考にならないかな?つまらないかな?と思いましたが、小説仕立てなので若干難しいところもありましたが全体を通して読みやすかったです。
生産性向上だけなくチームビルディング、問題解決のプロセスとして私にも活かすこと出来るかなと思いました。


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