映画『“それ”がいる森』の話(ネタバレ無し感想文)
『“それ”がいる森』観てきた。
公開までの流れでは、“それ”の正体を完全に隠しきったり、かと思えばギャグ的に様々なセルフパロっぽく色々な媒体とコラボしたりしてて
「ホラーテイストの予告出して完璧に謎を伏せてるけど実はそこまでホラーする気無いのかな?」
とか思ったり。
私としては、久々のメジャーシーンに力こもった宣伝満載&有名人多数起用のホラー映画が登場・しかも『女優霊』そして『リング』『仄暗い水の底から』等、Jホラーの伝説的映画を手がけた中田秀夫監督作品という事で
「松竹さんは自信作ぽいな。観に行ってみようかな」
というフワッとした気軽な感じでいた。
(演者のファンだから観ようと決めたとかでもなく、事前に“それ”の正体を予想したりもしていなかった)
クリエイターサイドへのリスペクトは勿論あるので現時点ではネタバレ無しの日記レベルにとどめておくつもりでいるが、二つ三つ感想を。
※ネタバレはしないけれど一応、観てから読んだ方がいいかな、とは思います。
①大まかな感想は『大怪獣のあとしまつ』と全く同じ
ジャニーズの方が、普段やらないであろう役柄に果敢にチャレンジしてるな!
で、そのアイドルのファンの方々が、普段観ないジャンルのこの映画に足を運んでて、その結果
「斬新だった!」
「こんなオチだったなんて予想しなかった!楽しめた!」
というポジティブな映像体験になってるんだな~。
と。これ『大怪獣のあとしまつ』と全く同じ感想ね。
Twitterとかをざっと見ても
「ホラー観ないけど相葉くんのファンだから観た」
↓
「怖かったらどうしようと思ってたけど楽しかった」
という感想が多い。
『大怪獣のあとしまつ』も、怪獣映画とか特撮観ないけど山田くんのファンだから、という方々が応援して盛り上がっていた記憶がある。
本来のそのジャンルファン以外をまるでメインターゲットかのようにして届き、トラウマとか不快さとかの無い純粋な娯楽として新しい映像体験をもたらしたのは、興行としてはまぎれもない功績……だろう。
②とはいえ“鈴カステラ”な作品である事は無視できない
「名カステラ職人がアイドルコラボでカステラを作りますよ~」
と宣伝されたら、カステラファン達は盛り上がり期待する。それが
「どんな味かは食べるまで秘密!何フレーバーか期待してね!!」
なんてハードルを上げてきたら尚更。
で、出てきたやつのパッケージを開けたら出てきたのは
“鈴カステラ”
だったら……。
多くのホラー映画ファンの不満点ってきっとここだと思う。
勿論、最初からコラボ先のアイドル目当てのファンとか、カステラはカステラでも鈴カステラか~パクパクつまめて良いね!ってライトなカステラ好きには何ら不満は発生しない。
だけどカステラ大好きのカステラマニアは、鈴カステラの表面のお砂糖を見ればどうしたってカステラのザラメと比べてしまう。
カステラ名人の激ウマカステラのファンはそれならばと同額出していただろう人もいるだろう。そうなると四角くて濃厚なタマゴ風味のカステラと思ったら、丸い素朴な駄菓子テイストのものがゴロゴロ出てきた事自体がもうガッカリだったりするわけで。
鳴り物入りの宣伝と謎フレーバーでハードルを上げられ、名人の激ウマカステラを期待していたファンがネガティブな感想を持つのはめちゃめちゃ理解できる。
私としては期待値がさほどだったから裏切られた感とかは無かったけど“つくり”に気になるところがかなり多かったかな。
特に、小芝居と独り言で全部口に出していく感じとか。まあこれは、子供達への分かりやすさなのかな。
③時代と発表先が違えば間違いなく伝説になっていた……気がする
三国志の諸葛亮と周瑜の天才二人が知恵比べ……的な所で、じゅうぶん天才的なのに諸葛亮には届かなかった周瑜が
「何故私と諸葛亮を同じ時代に存在させたのだ!」
みたいに嘆くところがあるんだけど。
常日頃、この周瑜の様に
「ああ~これとタイミングかぶらなければもっと爆発的なヒットしてたのでは」
と思ってしまう作品があったりする。
『鋼の錬金術師』と『武装錬金』とか。
『東京喰種』と『仮面ライダーアマゾンズ』とか。
これらは多くのファンに支持されているヒット作ではあるが、あと5年開いてたらモチーフやテーマの斬新さでもっともっと爆発的ヒットだったのでは……と思えてならない。
『“それ”がいる森』も、直近に某映画がなければもっと斬新さ、突飛さ、久々さが際立って話題性は倍増してた気はする(笑)。
いや~……本当に、この間のアレからこれでソレのヘビーローテだ。
あとめちゃめちゃ思ったのが、私が子供の頃に『木曜の怪談』っていうゴールデンタイムの地上波枠があったのよね。
ジャニーズやアイドルの若者達が出演してる、ティーン向けのオカルトやSFモチーフのドラマを放送していて。
『“それ”がいる森』は、この枠で放送されていたら間違いなく伝説になっていた。
かっこいいジャニーズのお兄さんや視聴者と同世代の子役達が活躍し、分かりやすい恐怖描写で子供達にトラウマを与えてきっと大人気だったに違いない。
現代、コンプラの問題なのか局の問題なのか、軽い娯楽として子供向けオカルト作品を流せるTV枠が本当に無い。
『特命リサーチ200X』や『USOジャパン』とともに育った世代としては、こういうライトな「怖い」娯楽を(創作なら尚更)ティーンに提供する場があってもいいのでは?と思う。
そうであれば『“それ”がいる森』が全国規模の映画としてでなくもっと適材適所な場で公開され、監督がターゲットだというティーンの若者や子供達にバッチリ届くだろうに。
……なんて、今思ってる事はこれくらい。
星5中、映画としてはつくりの観点から星2だけど、ティーン向けの「これ系」作品アプローチとしては星4かな。
ソフト化された頃、また気が向いたらネタバレ有りの感想でお会いしましょう。
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