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2024年個人的ベスト映画・ホラー以外編
前回・前々回と2024年の
「ホラー映画ベスト10」
「ベスト10入りしなかったけど心に残ったホラー映画」
の記事を書いてきたが、いよいよ年内ラスト記事。
「2024年、ホラー映画以外で良かった映画作品」
を書き残しておきたい……のだが、ここで少々注意というか、前提を。
私はホラーに関してはジャンルそのものを愛しているし興味がある為、一応新しく公開される作品はほぼ全て観に行きたいと思っているのだが、それ以外の映画となると、別にそこまでの熱狂とか、それこそ知識も審美眼も無い。
いわゆる「推し」俳優が出るからどんなジャンルでも声の出演でも観よう!みたいな存在もいないし、名誉ある賞を受賞した監督の新作だから観てみよう、とかもなければ、好きな漫画やドラマもほぼないのでそれの“Theムービー”を観ようみたいな行動もない。
こうなると、ベストを決めるとか以前に、
私の観たホラー以外の作品=あらかじめ観たいと思える興味を抱いた、ほぼ楽しめて好感を持つことが約束されている映画
である。
だからつまりここには、
「●●(推し出演、受賞作、原作は好き)だったのに〜」という期待外れ
はほぼ発生し得ない。
大好物が入ってる、好きな味つけがされてる、と見てわかる料理を注文して食べてるのと同じ事だ。
いや、これでも本当に好きになれない作品に出会ったりするのが映画鑑賞の面白いところではあるのだけど、今年は幸運にも、期待通りかそれ以上かしか無かった。
なので、今回の記事は
「私がたくさんの映画を観た中から選ぶベスト」
ではなく、
「ホラーじゃないのに観たいと思い、勘が当たって面白かったもの集」
という事になる。
隠す意味も無いし胸張って言う事でもないので素直に正直に書くが、私は『オッペンハイマー』も『名探偵コナン』も『デッドプール&ウルヴァリン』も『ルックバック』も観ていない(ビッグバジェット作品を観ないのはサブカル気取りの逆張りではなくもっと単純に、興味がわかないとか、予備知識ありファン向け作品に今更入っていける知識が無いとか、アニメーションを観に行く習慣がないというだけ。しかしアルゼンチンのへんてこC級ホラー『プッシー・ケーキ』とかは有給とっても観に行く習慣があります)。
なので、いわゆる映画好き、シネフィルを自負する方々からしたら、かなり薄っぺらなホラーかぶれ人間の感想に映ることうけあいなので、映画文化全体に大きな愛情や興味がある方は読んでも楽しくなさそうです。
それでもいいよって方は、お付き合い下さい。
※記事の性質上、ネタバレを含みます!!
□痛快重厚サスペンス賞『梟―フクロウ―』
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歴史的に記述の残る王族の変死事件を、ドラマとしての想像や会釈・脚色で壮絶なエンタメに描き上げたサスペンス作品。
韓国時代劇の特色である建築や衣装の美しさだけでなく、市井の人々や医療者の使う道具、小物等も面白い。布を裂いて、鍼を等間隔にクルクル巻いて収納するのとか。
清国の登場で当時の情勢も色濃く物語られているが、朝鮮王朝や歴史に予備知識が無くても問題なく鑑賞しながら話の内容や人物の役職を理解できる事、また、事なかれ主義や処世術から次第に変わっていく主人公の内面が、日本人・現代人にも通ずる精神性を力強く貫く様も魅力的。
盲人として生きてきた主人公が、特異な体質を知られた事から得た絆が失われた時、彼はその“能力”を使い陰謀に立ち向かう事を決意する。
彼は変わり、陰謀は覆る……かに見えたが、そこは歴史モノの宿命、大河ドラマの織田信長を応援しても本能寺で死ぬシナリオは変えられないように、どうしたって現在知られている歴史以外の結果にはならない。
しかし。
そんなフラストレーションを晴らす、胸のすく結末に心から拍手喝采。
盲人とされ生きた男。しかし彼は確かに“見ていた”。夜の暗がりに、歴史の闇に。
暗闇を音もなく飛び、人知れず、一撃で獲物を仕留める静かなる者。まさにフクロウ。
シビアなストーリーと、美しい美術、斬新で印象的な映像表現がとにかく素晴らしかった。
2024年初頭に鑑賞したが、年末にまで同じ温度で心に焼きついている傑作!
□エキセントリックアニメーション賞『ユニコーン・ウォーズ』
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テディベア(クマ、ではない)達の軍事国家は、来たるべきユニコーン殺しに備え兵士を育成していた。
かつてテディベアの聖地がユニコーンに奪われたからだと、そう教えられているからだ。
前置きとしてことわっておくが、アニメ好きの方々への差別的考えは私は持っていない。その上で書くが、私は元々某監督の考えに近く、アニメーションが
「現実逃避肯定一辺倒になりかねない、人間の都合のいい世界を夢見させる表現装置」
として便利扱いされる側面や風潮に良い印象を持っていない。
そのため“何かをわざわざアニメで見せる”という事に、実写では不可能な表現を可能にするという素晴らしいパワーの他にどうしても、都合のいいルックでパッケージングする現実逃避的(敢えての媚び的な)手段みたいなものを感じてきた。
言葉を選ばず言ってしまえば、
「そこ別に美青年ゲイカップルに見える外見でなくてもいいし、そこ別に下着見えるようなデザインじゃなくていいだろ」
と感じてしまうように、アニメ好きなら味つけ楽しめるであろうキャラデザが、私のように不慣れだとまだノイズなのだ。
しかし、私はこのアニメーション『ユニコーン・ウォーズ』に出会って、物凄く鮮烈な感覚を味わった。
このアニメーションは逆だった。
「絵を可愛くする事で現実逃避的な都合のいいルックにして観客の口当たりを良くする」
のではなく、
「絵を可愛くする事で、肉体欠損や殺し合いといった実写なら目を逸らしてしまうであろう描写なのに、醜悪で残酷な出来事を、アニメのクマチャンだから“見たくもないものをそのまま見れてしまう”」
という絶妙な表現ライン。
そしてその、可愛いデザインだけどやってることグロだよ!を出オチ的に利用していないマッシヴさ。
分断、不寛容、盲信から生まれる殺戮や狂気、そしてどこまでも不毛で愚かな悲劇を、アメリカの女児が好むファンシーモチーフであるユニコーンやクマチャンで描いた衝撃作。
(しかしこのシビアな世界観が海外の猟奇ケモナーにはツボに入ってしまったようで、Xで英語検索するとR18擬人化や欠損等の二次創作が出てくるので各自一応気をつけて!)
□ほのぼのバイオレンスジュブナイル賞『リトル・ワンダーズ』
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小学生の悪ガキ三人の短い冒険を描いたわんぱくアドベンチャー。
なのだが、この子供達、窃盗常習犯、怒った大人をガス銃で撃つなど、いたずらの域を超えたやりすぎ悪事もお手の物。
しかしそれを「やんちゃな少年時代の1ページ」のように微笑ましい目線で描くだけではない。
子供相手にも罪を重ねる大人、本物の銃を人に向ける大人を悪ガキ達は目の当たりにし、大人達は彼らの目の前で犯罪者として逮捕されていく。シャバに家族を残してだ。
あの逮捕のシーン、パトランプに照らされながらしょっぴかれていく大人達を見つめる悪ガキ三人の目がとても印象に残っている。
悪ガキ達はきっと――優等生にはならないまでも――変わったはずだ。
そして少しずつ大人になっていきながら、これからもずっと仲良しのはずだ。
映画で描かれた後の彼らをそんな風に想像させてくれ、そう確信させてくれる、ほろ苦くもあたたかい余韻。
16ミリフィルムによる荒く懐かしい映像で、スマホを使いこなす現代っ子を捉えた面白さも素敵。
□日本特撮愛にシンパシー!賞『イケボーイズ』
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ロボヒーローオタクと怪獣オタクのアメリカ人少年。日本からの留学生少女と出会い、一緒に“レアな日本特撮映画”を観るのだが……
最愛の作品の一つ『サイコ・ゴアマン』以来の衝撃。
日本の特撮を観て育ったという監督の解像度の高い特撮文脈に驚愕!
庵野監督が人形をクルクル回したりアクションを細切れカット割りして現代に追求していた「日本特撮の文脈」をいとも簡単に、B級映画だからこそ正々堂々と繰り出すエネルギーに、日本の特撮ファンとして思わず嬉しくなった。
クールジャパンを世にアピールするのは、もはや門外漢の日本の政治家ではなく、日本サブカルの申し子とも言えるこういった海外の熱いフォロワーの存在だと私は思っている。
大ジャンプのカメラワークとか、劇伴の雰囲気、“パンチの前に肘を引き、ワンテンポ静止してから駆け出す”といったヒーローアクションの型みたいなものを完全に己のものにしている。
特撮マニア向け小ネタの他にも、日本人が見て嬉しくなる要素が山盛り。三分の一程日本語なのも驚いた。
とりあえず、全特撮ファンに観て欲しいし、特に
シン仮面が「画質やシナリオ犠牲にしてまで懐古に走った」点への難色
といったじゅうぶん正当な批判に対し
「ロマンが分からんのか」と冷笑や固まった失望で物を言ってた全特撮オジサン達よ、これを観なきゃ嘘だろ!!
□積み重ねられたシリーズとファンの愛着への裏切りゼロの原作愛賞『おいしい給食Road to イカメシ』
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給食に命をかける熱意を隠す厳しい中学校教師・甘利田(あまりだ)。
そんな彼は密かに「給食ライバル」である生徒と日々“給食道”を研鑽し合っている。
……という、不思議で明るい給食ドラマの映画版第3作。
(学園ドラマ、ではなく、給食ドラマ、である)
記事冒頭で「推しドラマがほとんど無く、ドラマのザ・ムービーを観る習慣がほぼ無い」と書いた私の、例外的愛着ドラマ&映画シリーズ。
中学校を舞台としていれば、幾らでもきな臭く話題性のためにやろうと思えばやれるであろう「恋愛・非行・いじめ・性の乱れ・モンスターペアレント」等を一切やらず、給食というテーマのみで突っ走る骨太なコメディ。
そうありつつも、給食を通すことで少年少女や時に大人の内面をじわりと描き、解決していく、押しつけがましさのない痛快なハートフルストーリーが本作の魅力だ。
同じ食事ドラマである『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎がシーズンを重ねるごとに松重豊さんにより「松重五郎」としての味わいや個性を出していった事はよく語られる。
本作の主人公・甘利田幸男は比較・基盤となる原作こそ無いものの、演じる市原隼人さんと監督によりキャラクターが丁寧に確実に作られていき、今や不動のものとなった松重五郎と並ぶ名グルメ(?)キャラクターだと私は思っている。
映画3作目はシーズン3と舞台を同じく北海道で展開。
シーズン1〜2と映画第1作・第2作で給食のライバルだった生徒の神野少年とは別の粒来少年がライバルポジションであるのだが、シーズン3での甘利田の置かれたこの環境や出来事に、これまでの過去シーズン、映画過去作全てが意味のあるものとして登場する演出が心憎い。
そうでありながらも、この映画だけを観た人にも甘利田の良さや人物像、シリーズの持ち味や雰囲気がはっきりと伝わる完結したシナリオであり、更に
「これまでの甘利田先生と神野少年、粒来少年の話も観てみたいな」
と思えるだけの牽引力ある魅力に溢れている。
①シリーズを観てきた知識と愛着あるファン
②この映画だけ観た人
③これからシリーズに入りたくなる新規獲得
この三者全てに行き渡る過不足のない見せ方のできている「原作あり」「シリーズもの」というだけで、凄まじい完成度ではないだろうか。
神野少年との再会のシーンが、シリーズ通して愛着のある主題歌の歌詞と重ねられる描写だったのも感動の一言!
この監督の作品作りやポリシーが好きなのに加えて、過去のドラマ版での警察の安全講習VTR回での神野少年のセリフに私はとても好印象を持っている。
□幻想的社会派賞『動物界』
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人が突然“動物化”する……。
多くを語らぬ作中で「パンデミック」だとされているこの現象の中で、街ゆく他人が、家族が、遂には己までもが動物化していく。
作中の情報やシチュエーションを絞り、あくまで主人公周りの狭い範囲の人々だけを映す。
特異なSFストーリーでありながらも戦いや原因究明等のハリウッド映画的切り口を全く持たず、登場人物達の心身に徹底してフォーカスした構成が鮮烈の一言。
近年のパンデミックで少なからず似た人間性の混乱やニューノーマルを目の当たりにした私にとっては、ファンタジックでありつつとても生々しい要素の投影に映った。
動物化描写はショッキングな視覚的変異だけでなく、感覚や体質の異変でも多角的に段階的に描かれており素晴らしい。
この作品を観たことで、私があらためて某狼子供映画と監督のイデオロギーを如何に倫理面で受け入れられないかを再度痛感したが、これもまた映画体験。
□おわりに……2025年の目標と1月の予定
いつも以上に個人的な価値観や思いを多めに書いてしまい、人によっては所々違和感を抱いたかも知れない今回の記事でしたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
来年はやや忙しくなるので映画館に行ける頻度は減るかも知れませんが、変わらずホラー映画は出来る限り全部観たいですし、既に1月から観たい映画が10本近くあるのでとても楽しみです。
17日からは不可思議な『ストップモーション』、また『アンデッド/愛しき者の不在』に、『モルグ 屍体消失』のリマスターが楽しみですし、24日からは韓国の『ヌルボムガーデン』や、Jホラー『嗤う蟲』『悪鬼のウィルス』そして『みなに幸あれ』に続く第2回のホラー映画大賞『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』がドバっと公開。
31日には『邪悪なるもの』が控えています。
渋谷の「未体験ゾーンの映画たち」も観たいものは可能な限り駆けつけたいので、1月半ばから公開が近づいたら、とにかくスケジュール調整を頑張らねば。
あとは目標なのですが、来年は今まで縁の無かった(観てみようと思うきっかけがなかった)海外ドラマとかアニメとかで、何らかのシリーズもので面白そうなものに出会って、過去作から全て観るみたいな経験ができたらいいなと。これは相性やタイミングがあるので現時点では意気込みとか何とも言えないのですが。
一昨年の『呪詛』の記事に続き、去年の『鬼太郎誕生』、今年は『破墓/パミョ』の記事から私のnoteを読んでくださったりフォローして下さった皆様、ありがとうございました。
来年も多分変わらずこの感じで時々noteに現れると思うので、引き続きよろしくお願いいたします。
(X、Filmarks、mixi2にもいるので、そちらでも見かけたらよろしく)
それでは皆様、よいお年をお迎え下さい。
私は『ネズミゾンビ』のDVDが届くのを待ちながら年を越したいと思います。