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匿川 名
2023年1月20日 21:01
『ク』というのがそれに最も近かった。ノベリットが『そこ』を向いていたのは偶然に過ぎない。世界を覆いつくしたのは『光の触手』であり、邪悪な意思であり、蠢きであり、『死』そのものであることは、『それ』に触れ、見ただけで一目に、圧倒的に、有無を言わさず理解させきるだけの圧力と迫力があった。『ク』とはノベリットが聞いた音のことで、目の前で折れ腹を抱える『マナ』の姿で、彼女の身
2023年1月20日 21:00
「あれは何だろう」ノベリットはぽつりと呟いた。一同が見るのはノベリットの視線の先、広がる大空の中の深緑色をした『しみ』の方だ。それは日頃空を閉める蒼でもなく、鈍色の湿り気をたっぷりと含んだ雲の様でもない。夜の漆黒でもなければ宵に入る際の燃え尽きる太陽がかざす紅炎でもない。誰もが言葉を失っていた。理由は他でもない。それが常識を外れていて、およそ誰もが生涯で見たことがない異態であったか
2023年1月20日 20:58
※世界を『紡ぐ』のは何であるのか。その問いに立ち返るなら、『人』と答えるべきなのだろう。あらゆる命に意思があるなら、あるいは、あらゆる存在に意思があるなら、その観測する数多の事象は、ただそこに在るだけなのに、意味を見出そうとするものは、万物において『人』のみに過ぎないからだ。故に人は紡ぐ。他者と己の物語を。故に人は問う。他者と自分の均衡とその差異を。故に人は問う。己が何者で