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野良猫みたいな人生。

「あんたもううちの子じゃないから」

 子供の頃、母と怒られるとよく家出をしていた。母はクロゼットの中にある服を、全部私のリュックに入れ込んで、あなたはもううちの子じゃないから。と、家から追い出そうとする。そこで謝ってほしかったんだろうけど、プライド高めの娘だったので、そのままリュックを持って、家から出てしまったのだ。

 実家の近くには、おばあちゃんとおばちゃんたちが住んでいたので、家から追い出されても誰かの家に行けば、きっと養ってもらえるんだろうなーと思いながら、リュックを持って街をぶらぶらしていた。しばらく、歩いていると、私を探している母を見つける。あなた家を出てどう生きるつもりだった?と呆れたような顔で聞く母に、私のポジティブで無謀すぎる計画を言うと、母は笑っていた。

 大学入学と同時に一人暮らしを始めたものの、以前の文章(料理できないし、部屋はゴミ箱ですhttps://note.com/may_kudo/n/n118a27c8a153) で語った通り、私は一人暮らしのくせに、全く料理ができなかった。いや、そもそも最近まで食自体にそこまで興味を持っていなかった。お腹さえ満たされるなら、何だっていいと思っていた。

 大学時代働いていた下北沢のバーで出会った40・50代の独身男女たちは、この外人娘を4年間育てて、養ってくれた。いつも栄養たっぷりの豪華な賄いが出てきて、お客様は美味しいお酒を何杯でも飲ませてくれた。グルメの彼氏は、自分の生活削りながら、私に東京中の美味しいものを食べさせてくれる。

 ひとりきりだった留学生活を送りながらも、実は色んな人に守られていたんだーと最近実感している。体調の悪い時はアルバイト先に仲良しのお客様が私のマンションの前に、食べきれないほどの非常食糧を届けてくれたり、悲しい出来事があった時は皆んなが焼肉に連れてくれた。そして、本物のニートになった今も、私がちゃんと食事をとっているか心配している人たちが周りに沢山いる。

 じっとしていると、誰かしら美味しいものを食べさせてくれる。

 静かにしていると、ちゃんと生きてるか確認してくれる人がいる。

 私はプチ家出をしていた子供の頃のように、私がもし全財産を無くしていても、なんとか生きていけるんだろうと、思ってしまうのだ。

 持っているものは決して多くないけど、皆んなに愛され、ありのままの自分で生きていける。私は野良猫のような人生を生きているのかもしれない。

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