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「この人に描いてもらいたい」と思われる絵師になるには

「絵を依頼する側」の本音


↑の記事で、絵を頼む側としての意見を書いたところ、複数の絵師さんから
「絵を依頼する側の考えを初めて知った」
「今まで絵のスキルアップにばかり目を向けていたけれど、それ以外に必要なものがあると気づきハッとさせられた」
と仰っていただけました😆

でもたしかに、絵を依頼する側の意見って、SNS上ではなかなか目にすることがないかもしれません。

このnoteを読んでいても、絵師さん同士のつながり(お互いのスキルやツールの紹介など)はけっこうあるようですが、
絵を依頼する側と絵師さんとの交流ってなかなかないですよね。

これってもしかすると、ある韓国女性エッセイストが書いていた、
女性の問題(妊娠とか子育て支援とか)の議論の場に男性しかいない現状」に近いかもしれません。
(↑これって言われてみると「たしかに」「よくある」ことですね💦)

そのサービスを求めている側(女性や絵の依頼側/受け手)の意見を聞かずに、ただ自分がよいと思うものを提供する。

もちろんそれでうまくいくこともありますが、
それは単に、偶然歯車がかみ合ったラッキーな状態です。

また、受け手の考えやニーズもわからないままで、うまくいった理由もわからないので、同じやり方で次もまたうまくいくとは限りません。

つまり、受け手の考えやニーズがわからないということは、
商売や政策の成功を運に委ねるしかないということです。

私に感想をくださった方は、もしかするとそのことに
日頃から不安を抱いていたのかもしれません。

そこで今回は、「絵を依頼する側」の本音について、
自分自身の経験もまじえて掘り下げてみたいと思います。

100%満足はあり得ない? 「修正は〇回まで」が依頼側の不満を封じている可能性も


私に限らず、SKIMAやココナラ等で小説の表紙絵やポスターのイラストなどを依頼したことのある人は多いと思います。

そういった人たちが、提出された絵の出来に100%満足しているか?と言えば、おそらくそうではないケースの方が多いと思います。

だって100%って「不満点が1つもない」ってことですからね。
そりゃあハードル高いですよ😅

もし同様のアンケートを絵師さん側にしてみても、
おそらく「そうは思わない」と答える人が大半ではないでしょうか。
自分では渾身の出来!と思っても、相手がそれをどう思うかはわからないですから。

そのため、取引終了後の評価で、依頼側から
「素敵な絵を仕上げてくださってありがとうございます!」
と高評価がついたとしても、それは「100%満足です」を
意味しているわけではないので、真に受けてはいけません。

いや、その言い方はよくないですね。
その評価に安心して自己研鑽を怠ってはなりません。
あるいは、
依頼側に諦めや妥協をさせなかったか、
もう一度取引を振り返ってみましょう。
これが正しいアドバイスかもしれません。

実は依頼する側からすると、絵師さんに修正をお願いするのって、かなりハードルが高い場合があります。

その理由としては、

①率直な要望を伝えることで、その人の絵や実力を否定していると受けとめられるのではないかと心配する
②不満なところがあっても、「修正は〇回まで」の注意書きや、印刷所の入稿期限などが足かせになって、伝えることを諦めてしまう
③美術系の専門用語に暗いので、どのように要望を伝えたらいいかわからない

このようなことが考えられます。

とくに、初めての依頼相手で、まだ関係性がしっかり構築できていない場合、ハードルはさらに高くなります。

その結果、要望を伝えることそのものを諦めてしまうことも。
そして絵師さんから提出されたラフや納品されたイラストに対し、
モヤモヤした気分を抱えながら、
「こちらで結構です。ありがとうございます」
とOKを出してしまうのです。

売れっ子絵師さんは依頼主に諦めや妥協をさせない


私自身も、そのような経験がありました。

SKIMAである絵師さんに依頼したとき、
まずラフの段階でイメージと違う絵を提出されました。

その方とは初めての取引なので悩みましたが、
勇気を出し、言葉を尽くして修正の要望を伝えました。

すぐに修正したラフを出されましたが、その絵もイメージには遠く、再度の要請→修正も同じ結果に。
「修正は2回まで」と条件に書かれていたので、それ以上の要請は諦めました。

結果的に、完成した絵への満足度は30%くらいでした。
しかし、納品された以上、契約を破談にするわけにもいきません。
すぐに報酬を支払い、取引終了後のコメントに不満は書かず、評価も5つ星を付けました。
結果的にこちらのイメージが伝えられなかったのは、自分の責任でもあると思ったからです。

でも、その絵に対する本当の評価は、
「二度とこの絵師には依頼しない」
その気持ちに集約されます。

逆に言えば、多くのリピーターを抱え、常に予定がいっぱいという絵師さんは、依頼主から徹底的に修正希望箇所やニーズを聞き出し、絵に対する諦めや妥協をさせていないといえるかもしれません。

リピーターを増やし、継続的な依頼に繋げるには


リピーター獲得について、ゲームを例に説明します。

(私は昭和の人間なので事例が古いですが💦)
かの名作・ドラクエⅣが発売されるとき、全国各地で長蛇の列ができました。
しかし、ドラクエⅣが空前の大ヒットとなったのは、
前作のドラクエⅢがあまりにも素晴らしい名作だったおかげ、という理由もあります。

つまり、前の仕事がどう評価されるかで、その後も依頼が続くかどうかが決まるのです。

しかし絵の取引の場合、必ずしも依頼主が正直に評価するとは限りません
ここがSNSでの見知らぬ者同士の取引の難しいところです。
(ゲームのように「クソゲー」「金返せ」と吐き出せたら楽なんですが😅)

納品されたイラストが、あまりにもこちらが提示したイメージや材料と違ったので、本当は星一つさえ付けたくないけれど、同じことを絵師側にもされることを恐れて、仕方なく星5つの評価にしている。

絵師さんが「うまくいった」と思っている取引でも、依頼主はそのような気持ちや行動があったかもしれません。

では、絵師の立場として、
そういった状況に対処するには、どうすればいいのでしょうか。

一番の勝負どころはラフ提出時


絵についてド素人だった私でも、
ラフが絵の仕上がりを決める大事な段階であることは、
何回かの取引ではっきりわかってきました。

依頼主から本音での高評価を獲得し、
口コミや次の依頼に繋げるには、
この段階で「依頼主に妥協させないこと」が重要です。

提出したラフについて、依頼主から何も意見がなく
「OKです」の一言だった場合、そこで早急に線画の工程に進まず、
あえて「本当に大丈夫ですか? どんな細かな不満や意見でもいいので、
思うところがあれば言ってください」

と念押ししてみるのも一手だと思います。

そのメッセージで、依頼主の心象は大きく変わります。
「あ、この人はちゃんとこちら目線で考えてくれる人なんだな」
「自分の実力に慢心せず、さらにすばらしい絵を描こうと努力する人なんだな」
そのような安心感を与え、重たい口を開いて、真のニーズを引き出すことができるかもしれません。ここからが本当の対話のスタートといえるでしょう。

そのような丁寧なやりとりを経て仕上がったイラストは、
きっと依頼主のイメージどおり、もしかしたらそれ以上の仕上がりになっているでしょう。
正解は自分ではなく依頼主が握っている。
そのような謙虚さをもつことで、商売としての絵を描くスキルもどんどん向上していくでしょう。

趣味より仕事のほうが断然成長が早い理由


どんなことでもそうですが、趣味より仕事のほうが成長のスピードは断然早くなります。
その理由は、「趣味は自己満足、仕事は顧客満足」だからです。

SNSで、自分が構図などを考えて描いたイラストをアップするより、
会ったこともない他者の依頼で描いた絵のほうが、格段に試されるものが多いですよね。
ということは、それは願ってもない「修業のチャンス」でもあるわけです。

なのでできれば、どんな小さな取引でも仕事として絵を描いてみることをお勧めします。
(もちろん継続的に仕事をするなら、CtoCからCtoBに移行するのがベストですが、最初は個人相手で)

その際に大事なのは、絵を描く手間やコスパ、タイパばかりに目を向けず、
どれだけ依頼主を満足させるかに重点を置くこと。
そのためには先述のように、依頼主が抱いている真の要望やモヤモヤをすべて解消することを目標に、ラフ制作に取り組んでみてはいかがでしょうか。

じつは過去記事で取り上げた「すばらしい絵師さん」たちは、
このラフにすごく力を入れてくれる方たちでした✨

ある人は、こちらから何も言っていないのに、
表紙、挿絵2枚それぞれ4パターンのラフを描いてくれました。
それだけの候補があれば、こちらが妥協や我慢を強いられる可能性もぐっと減ります。

依頼料を考えたら全然割りに合わない労力なのに、
こちらの立場を考えての配慮がなにより嬉しかったです。
(この方が、絵師活動3か月で依頼が殺到していた絵師さんです)

まとめ


以上、ざっとではありますが、絵を依頼する側の希望や不満などについてお話ししました。

とくにSNSを介しての見知らぬ者同士の取引の場合、
お互いの意思疎通が完璧に行なわれることのほうが稀有だと思います。

そんななかで継続的かつ安定的な受注を受けるには、一般のお店などと同じく、依頼主(購入者)の本当のニーズや不満に、丁寧に寄り添っていく姿勢も大事になってくるでしょう。
それはもしかすると、絵を描く以上に手間がかかり、また勇気や覚悟を求められることでもあります。

しかし、他人に依頼されて対価を受け取って絵を描くということは、
それだけの価値のあることだと思います。
ぜひそのチャンスを無駄にせず、自分の実力アップに役立ててください✨

私も上述のすばらしい絵師さんに描いてもらった絵を見るたびに
「本当に、この人に頼んでよかった」と思います。
それは絵の上手さだけでなく、ラフ提出のときの彼女の真摯な心遣いを思い出すからです。
そのときの合計12枚のラフは、今でも私の宝物です🥰

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