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この先も、出版系フリーランスで食べていくために

2024年、校正業界はどんな状況にあるか


2006年から在宅ワーク(書籍や雑誌の校正など)一本で、子育てとの両立を18年やってきた私だが、結論から言うと、収入は年々下がっている

その理由は後述するが、さいわいにも減少幅は数十万円にとどまり、
また私には頼りになる配偶者(夫)がいるので、
生活が破綻するほど困ってはいない
子どもたちにも進路を諦めさせることなく済みそうではある。

さらに運よく、私は月2本、レギュラーの仕事を持っているので、
月収がゼロになることも(いまのところ)ない。
資格系(簿記、FP、社会福祉士等)や吉本興業のM-1マニュアルなど、
毎年恒例の仕事もいただけているので、年単位でならすと、
ショックで腰を抜かすほど大きな減額ではない。

だが、同じ会社に所属する校正仲間のなかには、
収入ガタ落ち、依頼激減で、窮状を訴える人も出はじめている。

なかには、

「このところ月1本の仕事しかなく、はっきり言って生活保護以下!」
「このままいけば、家を売らなきゃならないところまで追いつめられている……」

など、極めて深刻な状況に陥っている人もいる。

旦那さんの扶養範囲内で働いている人ならまだしも、
一家の大黒柱や、独身で一人住まいの人(うちの会社に多い)なら、
まさに「生きるか死ぬか」、
昔風に言うならば「正月に餅が買えるか」
で、
正直なところ暗い未来しか見えない状況である。
(なんせ、営業部隊の役員たちが頭を抱えているのだから間違いない)

とくにうちの会社は平均年齢が50歳超、男女比率は6:4。
つまりフリーランス(社会保険は自己責任)のおひとりさま男性が多いため、収入源のダメージはそのまま老後の不安にも直結する。

フリー(自由)を求めて飛び込んだ出版系フリーランスの世界だけれど、
まさかこんなことになろうとは……

長年、陰のゴールキーパー(誤字脱字等による書店からの書籍・雑誌回収を阻止してきたという意味で)として出版業界に貢献してきた彼らの、
先行きを憂う虚ろな目が、そう語っていた。

みんなみんなつらいのさ……


悲惨な状況に追い込まれているのは、我々の棲む校正業界だけではない。
ご存じのとおり、日本全体が長期の出版不況に陥っている。

(「PR TIMES」より引用)

「2023年度における出版社の業績は「赤字」が36.2%を占め、過去20年で最大となったほか、減益を含めた「業績悪化」の出版社は6割を超えた。出版不況の中で、多くの出版社が苦境に立たされている」

(「PR TIMES」より引用)

「2024年は有名雑誌の休刊・廃刊が相次いだ。月刊芸能誌『ポポロ』をはじめ、女性ファッション誌『JELLY』やアニメ声優誌『声優アニメディア』などが休刊を発表。日本の伝統文化や芸能関係の話題を世界に紹介する国内唯一の英文月刊誌『Eye-Ai』を発刊していたリバーフィールド社は、今年4月に破産となった」

さらに、こちらももう何度もニュースにもなっているが、
書店数の減少ぶりも凄まじい。

今村翔吾先生や凪良ゆう先生等、著名な作家さんも
出版界の危機を訴え、書店の立ち上げや運営を積極的に推進している。
業界内にいると、それほどの危機的状況だとひしひしと感じる。

この先も、出版系フリーランスで食べていくために


このように深刻な状況にある出版界で、
フリーランスとして今後どうやって収入を維持していくか。
あくまで私個人の意見だが、とにかく人にはない
「強み」を作り出すことが大事だ。

私の専門である「校正」にも、
書籍や媒体ごとに様々なジャンル(領域)がある。

基本的な誤字脱字はもちろんのこと、
たとえば野球なら野球の、将棋なら将棋の、
簿記なら簿記の、専門知識をもった人材が優先的に仕事をもらえる。
つまりその道の「オタク」が重宝されるのだ。

作家にも、どんなジャンルでもオールマイティーに書ける人もいれば、
特定のジャンルにしか興味がない、あるいはそのジャンルを書かせたら右に出る者はいない、という人もいる。

「なんでも書ける」のもある種の才能だが、こういう人が
ミステリーや医療、リーガル系小説の第一人者になることは極めて難しい

愚見だが、どんなジャンルでも、
つまり「広く浅く」書ける(校正できる)ということは、
逆に言えば「ほかの誰かに取って代わられる」可能性が高い
ということでもある。

実際、校正の現場でも、
「誤字脱字を直す以外に、専門的な知識や作業が必要ない」仕事は、
手を挙げる人が多いため、仕事がもらいづらく、単価も安くなる傾向にある。

2024年現在、出版業界が危機的状況にあるのは間違いない。
でも、いたずらに先行きを悲観ばかりしていても仕方がない。
だってやっぱり本が、そして活字が大好きだから。

そこで今後もフリーランスとして、生活できる給与を得ていくために、
ありったけの知恵を振り絞り、つねに最新の情報をキャッチしていこう

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