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いつかの日記 それってもう結婚だよ

某月某日
出張帰りに寄ったサービスエリアで、花束の中に紛れてピンクのモケモケの実がついている枝の束が売っていた。
モケモケを愛でる生活を夢見て一束買って帰る。翌朝起きたらピンクだった実が全部灰色になっていた。灰色が好きだからむしろうれしいなと思ったところで、「むしろ」ってなんだよと重ねて思う。「普通はこうだけど、むしろ」の「普通はこうだけど」の部分を自分で作り出してしまったことを憎む。

ネコヤナギというらしい


某月某日
実家から駅までのルートで知らない道があることをGoogleマップ上で発見した。実家に帰ったときに散歩してみたら、その道は建物と建物の間の細く急な長い階段で、すごく見晴らしが良かった。別の日に母と散歩して教えてあげた。
15年近く住んでいるこの街のことをよく知っている気でいたけれど、まだ好きになれちゃうな。

某月某日
出張先のスーパーでまるまる1羽の鶏を醤油色になるまで煮たものが売っていた。丸鶏というだけでパーティーすぎるのに、箸でほろほろ崩れるのが想像できる色まで煮込まれている。美味しくなくてもパーティーなのに、その上茶色くて美味しいということはつまりどういうこと?
1200円に半額シールが貼られているのが目に入り、つい買ってしまった。宿には夕飯が付いているし、朝と昼はゆっくり食べる時間がない。山梨県→東京都→神奈川県と持ち運ぶしかない。今回の出張は醤油色の丸鶏さんと一緒みたいです。よろしくお願いします。

某月某日
ドラマ「深夜食堂」が好きで、何周もしている。うちに原作漫画もある。
お風呂が沸くまでの時間に流しておこうとしたら、同居人は1話も見たことがないという。まさか!深夜食堂の擬人化のようなあなたが見たことがないと!あまりにも概念が一致しすぎていて、見たことがない可能性を検討しなかった。私のミスだ。もう3、4年も一緒に暮らしているのに。もしよければこれから会える日は毎日一緒に見ようねと強く誓う。
※同居人は映画「南極料理人」の擬人化でもあると思う。


某月某日
同居人が趣味で獲ってきたカモを父が低温調理の後スモークにした。この世で一番美味しいピカピカの赤茶色のお肉になった。しっとりしていて、ちょうどよい塩気と中までしみているスモークの香りが鴨の脂の美味しさを引き立てている。
私を介して出会った2人がお互いの知恵を絞ってひとつの美味しいものを作ることになんだか感動してしまった。それってもう結婚だよと思う。

婚姻の鴨




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