今日という日がいつまでも続けばいい @尾道
初めての場所を訪れることだけが、旅ではないと思う。いくら訪れても飽きない場所というものがこの世にはあって、何度も通った道を同じ人とも違う人とも繰り返し歩き、そのたびに発見を重ねることだって旅の醍醐味のはずなのだ。
私にとってその旅先は言わずもがな、尾道。
秋の瀬戸内ほど魅力的な場所はないだろう、と感じる今日この頃。雲ひとつない青い空に淡い海の色が映え、島々の緑も彩りを添えてくれる。息を深く吸えば潮の香りに全身が洗われるような。
そんな秋の尾道を、先日noteのお友達とめぐってきた。
出会いのきっかけは今年2月の文フリ広島。普通にnoteで活動しているだけでは出会えなかったかもしれない、でも、今となってはもうがっつりマブダチ(固い握手)。仮にここではカレー野郎さんとお呼びすることにしましょう(女子です)。
私たちの共通点は、とにかく尾道が好きすぎるところ。友達や家族と、果てには一人で足を運んでしまうくらいには尾道が好きな私たち。だからといって、特別なことは何もしない。何度も歩いてきた道を、いつもと同じようにめぐるだけ。それが尾道の一番いい楽しみ方なのだと、尾道Loversの私たちはよく知っている。
駅に降り立った瞬間から、「はわー!尾道だー!」とテンションが上がるとともに、鮮やかな解放感に包まれた。尾道って、旅先なのに、いや旅先だからこそのびのびできる。したくなる。その日は秋の連休で人も多くて暑くって、非の打ちどころのない尾道日和だった。駅近くのパン屋に向かい、海辺のテラスでお昼ごパンにありつく。
尾道の話、仕事の話、プライベートの話、楽器の話、Undertaleの話……尾道好き以外にもあまりにも共通点が多すぎて、最初から怒涛の勢いで喋り倒してしまう。めちゃくちゃ楽しい。気持ちよく晴れているので瀬戸内海の眺めもよく、船のガソリンの匂いすら美味しく頬張った。
パンを食べた後はこれまた私たちの大好きなお店、古本屋 弐拾dBさんにお邪魔した。カレー野郎さん、店主の藤井さんに認知されてるのすごい……!それをいいことに私たちは店にどっぷりと居座り、藤井さんともたんまりおしゃべりしたあげく藤井さんに追い出される(笑)形で店を後にした。大変お邪魔しました。本はもちろん、長らく購入を悩み続けていたブックパックも手に入れてホクホク。
この日は偶然尾道の灯りまつりの日で、道の両脇には地域の子供たちや尾道のお店屋さんの描いた灯りが並びはじめていた。私たちは人の波から一歩外れ、海辺でたそがれつつまたおしゃべりに花を咲かせる。もはや文フリ以来二度目ましてとは思えないしゃべりぶりだった。
夕暮れが近づくと涼しい潮風が頬を撫でるようになり、ようやく秋の尾道らしくなってきた。
お昼がパンだったのもあり、早くもお腹が空いてきた私たちは商店街のカレー屋さんに飛び込んだ。その名の通り、カレーに目がないカレー野郎さんとカレーを食べる日が来ようとは……!
全然辛くない優しい口当たりのカレーに、無限に舌鼓を打ってしまう。「足りない……もはやおやつ……」と惜しまれながらもそれはあっさりと姿を消した。カレー野郎さんは本当に足りなかったようで、その後商店街のたこ焼き屋さんででっかいたこせんも食されていた。
灯りまつりが本格的に始まり、街には無数の灯りがほのかな光を揺らしている。子供の作った灯りを見つけては写真を撮る親子連れ、しっとりと二人の空気感に満たされながら歩くカップル、の間を縫うように歩く地元の人たち。こういう街のおまつりって、本当にいい。
この日私たちがやりたかったことの一つに、花火があった。のだけれど、尾道の海辺ではうまくいかなかったので我が家の庭(?)にて、夫も交えて続きに興じた。ぱちぱちと燃える線香花火に、いよいよ夏の終わりを感じる。線香花火、それは青春の灯──。
たっぷり余韻に浸りながら、今日の旅は終わっていく。線香花火の火が尽きて、少しずつ現実の足音が聞こえだす。ああ、今日という日がいつまでも続けばいいのに! そう思える旅は、間違いなくいい旅だ。そういう旅が何度でもできる尾道が、やっぱり私は好きだ。