これを意識するだけで伝わり方が劇的に変わる!「ゴールデンサークル理論」
1. はじめに
こんにちは!
現代のビジネスやコミュニケーションの世界では、多くの企業やリーダーが競争の中で自分たちをどのように差別化し、効果的にメッセージを伝えるかに苦労しています。
その中で、注目を集めているのが「ゴールデンサークル理論」です。
この理論は、シンプルでありながら強力なフレームワークで、特にリーダーシップやマーケティングにおいて、効果的なメッセージ伝達を可能にするとされています。
ゴールデンサークル理論は、元々は作家でありモチベーショナルスピーカーでもあるサイモン・シネックが提唱したものです。
シネック氏はこの理論を通じて、成功する企業やリーダーがどのようにして他者を引き付け、動かすのかを明らかにしました。
こちらが、サイモン・シネックがTEDでゴールデンサークル理論についてプレゼンをした動画です。
彼の理論によれば、従来の「どうやって商品やサービスを提供するか」(How)や「何を提供するか」(What)に焦点を当てるアプローチとは異なり、最も重要なのは「なぜそれを行うのか」(Why)を明確に伝えることです。
この「Why」こそが、顧客や従業員に強い共感を与え、行動を促すカギだとされています。
なぜ、この「Why」から始めることが効果的なのでしょうか?
その理由は、人間の脳の仕組みにあります。
人間は感情や共感によって動機づけられ、理論や事実よりも感情的なつながりを重視することが知られています。
ゴールデンサークル理論は、この感情的な側面に直接働きかけることで、強力なメッセージを伝える力を持っているのです。
次に、このゴールデンサークル理論の基本的な構造について詳しく見ていきます。
2. ゴールデンサークル理論の基本構造
ゴールデンサークル理論は、サークル状に「Why」「How」「What」という3つの要素が層をなしているシンプルなモデルです。
それぞれの層には異なる意味があり、これらが連携してメッセージを伝えるための強力なフレームワークを形成しています。
1. Why(なぜ?)
ゴールデンサークルの中心に位置する「Why」は、企業や個人が「なぜ」その活動をしているのか、つまりその存在意義や使命、目的を示しています。
これは、単に利益を追求するためではなく、もっと深い理由や信念を明確にする部分です。例えば、「私たちはどのような世界を目指しているのか?」や「どのような問題を解決したいのか?」といった問いに答えることが、「Why」に当たります。
この「Why」を明確にすることは、顧客や従業員、さらには社会全体に対して強い共感を生み、共通の価値観を持つ人々を引きつけます。
Appleのような企業は、単にコンピュータやスマートフォンを売るだけでなく、「世界を変えるような革新を提供する」という信念を掲げているため、多くのファンや支持者を得ているのです。
2. How(どうやって?)
次に、「How」は、「Why」をどのように実現するのかを示します。
これは、企業が他社と差別化するためのプロセスや方法を指します。
具体的には、商品やサービスをどのように作り出し、どのように提供するのか、その独自のアプローチがここに含まれます。
例えば、Appleの場合、その「How」は、革新的なデザイン、使いやすさ、そしてユーザー体験に対する徹底したこだわりです。
これにより、他の企業が提供する製品と差別化され、顧客が「Apple製品なら使いたい」と思わせる要因となります。
3. What(何を?)
最も外側に位置する「What」は、企業や個人が具体的に「何」を提供しているのかを指します。
これは、商品やサービスそのものです。
多くの企業は、この「What」からメッセージを伝えがちです。
「私たちは〇〇を売っています」と直接的な説明をする企業が多いのもそのためです。
しかし、シネックが指摘するように、この「What」だけに焦点を当てると、他社との差別化が難しくなり、顧客の感情に訴えかける力が弱くなります。
なぜなら、「What」だけでは、顧客がその企業を支持する理由や情熱を感じ取れないからです。
3. ゴールデンサークル理論が効果的な理由
ゴールデンサークル理論が多くの企業やリーダーにとって効果的な理由は、シンプルでありながら人間の本質的な感情に深く訴える力があるためです。
この章では、なぜ「Why」から始めることが効果的なのか、具体的な心理的背景や実例を挙げながら説明していきます。
1. 共感と感情を引き出す力
「Why」を中心に据えたコミュニケーションは、単に商品やサービスのメリットを伝えるのではなく、受け手の感情に訴えかけることを目的としています。
人間は情報を受け取る際に、論理的な思考よりも先に感情的な反応を示す傾向があります。
脳の中でも、感情を司る部分(大脳辺縁系)は理性的な思考を司る部分(新皮質)よりも先に働くため、強い感情が動かされると、人は直感的にそのメッセージに引き込まれます。
例えば、企業が「私たちは高品質なスマートフォンを提供します」(What)と言うのと、「私たちは人々の生活を豊かにする革新を提供します」(Why)と言うのでは、後者の方がはるかに感情的な共鳴を生み出しやすいです。
人は商品そのものだけでなく、その背後にある理念や信念に共感し、支持を表明する傾向が強いのです。
2. 消費者心理に基づく実例
消費者は、何を買うかだけでなく、なぜそれを買うかを重視します。
これは、特に競争が激しい市場において顕著です。
たとえば、Appleのような企業は、多くの企業と同じようにスマートフォンを製造していますが、Appleは「人々の生活をより良くするために革新を起こす」という明確な「Why」を持っています。
Appleのファンは、単にデバイスの性能やデザインに惹かれるだけでなく、その背後にある哲学や使命に共感し、製品を手に取るのです。
また、スターバックスの「Why」は「人々をつなげる場所を提供する」という理念に基づいています。
これにより、単なるコーヒーショップ以上の価値を提供し、顧客がそこでの体験に感動を覚えるようなブランドイメージを構築しています。
3. 行動を促す力:理性 vs 感情
もう一つのポイントは、感情に訴えることで行動を促す力が強まる点です。
シネックは、成功するリーダーや企業が「What」や「How」よりも「Why」に焦点を当てることで、理性的なアプローチよりも効果的に人々を動かしていると指摘します。
人々は感情的に共鳴することで行動に移りやすくなり、長期的な信頼関係を築きやすくなります。
そのため、企業が「なぜその商品やサービスを提供するのか?」を明確にし、それを一貫して伝えることで、理性的な判断を超えた「共感」や「信頼」が生まれます。
これが、単なる「What」だけでは生まれにくい深い絆を形成するカギとなるのです。
4. 企業におけるゴールデンサークルの活用例
ゴールデンサークル理論は、数多くの成功企業に採用されている強力なフレームワークです。
特に「Why」を中心に据えた企業は、顧客の感情に訴えかけ、競合他社と一線を画す存在となっています。
ここでは、実際の企業の例を挙げて、どのようにこの理論が活用されているかを見ていきます。
1. Appleの成功事例
ゴールデンサークル理論の最も代表的な例としてよく挙げられるのが、Appleです。
Appleは、製品の品質や機能性においても卓越していますが、それ以上に、Appleの「Why」が人々を強く引きつけています。
Appleの「Why」は「常に現状を打破し、世界を変える革新をもたらす」という理念です。
この理念は、Appleが製品を通じて単に技術を提供するだけでなく、ユーザーの生活や考え方にポジティブな影響を与えることを目指しています。
この「Why」に共感する人々は、Appleの製品を単なるガジェット以上のものとして捉え、ブランドに強い愛着を持ちます。
製品自体(What)も重要ですが、顧客がAppleを選ぶ理由は、その革新性や先進的なビジョンに共感しているからです。
これがAppleの製品がしばしば「ライフスタイル」として扱われる理由です。
2. スターバックスの理念
スターバックスもまた、ゴールデンサークル理論をうまく活用している企業の一つです。
多くのカフェが「コーヒーを提供する」(What)という単純なメッセージを打ち出していますが、スターバックスはその背景に「コミュニティを創造し、人々をつなげる場所を提供する」(Why)という使命を持っています。
スターバックスの店内での体験は、ただコーヒーを飲むだけでなく、居心地の良い空間でリラックスし、人とつながる場としての価値が重視されています。
この「Why」を核にした戦略により、スターバックスは世界中で愛されるブランドとなり、ただのコーヒーチェーンではなく、コミュニケーションや社会的なつながりを象徴する存在になりました。
3. なぜ多くの企業が「What」から伝えてしまうのか?
一方、多くの企業は、メッセージを伝える際に「What」から始めてしまいます。
これは、製品やサービスの具体的な特徴をまず強調した方が顧客に理解されやすいと考えるからです。
しかし、このアプローチでは他社との差別化が難しく、価格競争に巻き込まれやすくなる傾向があります。
「What」だけに依存する企業は、製品やサービスの魅力を伝えることはできても、顧客に対して強い共感や感情的なつながりを築くことが難しくなります。
そのため、価格や品質の競争に勝てない場合、顧客は簡単に他のブランドに流れてしまいます。
ゴールデンサークル理論を採用する企業は、単なる製品の提供に留まらず、顧客の感情を揺さぶる強力なブランド体験を提供しているのです。
5. ゴールデンサークル理論を使った効果的な伝え方のコツ
ゴールデンサークル理論は、企業だけでなく、個人や小規模な組織にとっても非常に有効なツールです。
この章では、ゴールデンサークル理論を活用して、日常のプレゼンテーションやプロジェクトなどで効果的にメッセージを伝えるためのコツを紹介します。
1. 「Why」を見つけるためのステップ
「Why」を明確にすることは簡単なようで、実際には多くの人が苦労する部分です。
まず、自分自身や組織の「Why」を見つけるために、次のステップを試してみることが効果的です。
自己分析をする
自分自身や組織がなぜ今の活動をしているのか、何を目指しているのかをじっくりと考える時間を設けましょう。
たとえば、「どんな問題を解決したいのか?」「なぜその問題を重要と考えるのか?」という問いを投げかけることで、深い意識にある目的や信念が見えてくることがあります。他者に質問してみる
自分自身では気づかない「Why」が、周囲の人の視点で見えてくることもあります。
友人や同僚、顧客に「あなたはなぜ私たちと一緒に働いているのか?」や「私たちの活動で最も共感する部分はどこですか?」と尋ねることで、重要なヒントが得られるかもしれません。共通の価値観を探す
「Why」は、自分だけでなく、他のメンバーや顧客とも共有できる価値観であることが理想です。
自分や組織が信じている価値観や使命を改めて確認し、それをどのように他者と共感できる形にするかを考えましょう。
2. プレゼンテーションでの応用
ゴールデンサークル理論は、プレゼンテーションでも非常に効果的です。
多くのプレゼンは「What」(何をするか)や「How」(どうやってするか)から始めがちですが、これを「Why」(なぜそれをするのか)から始めることで、聴衆に強い共感を与えることができます。
最初に「なぜ」を話す
プレゼンの冒頭で「私たちがこのプロジェクトを立ち上げた理由は〇〇です」というように、「Why」を明確に伝えることで、聴衆はその後に続く具体的な内容に対してより深い理解と共感を持って耳を傾けるようになります。感情に訴える
「Why」を伝えるときは、データや事実だけではなく、感情的なエピソードや個人的な体験を交えて話すと、さらに効果的です。
具体的な体験や成功体験を共有することで、聴衆はそのストーリーに感情移入しやすくなります。
3. 日常のコミュニケーションでの応用
ゴールデンサークル理論は、ビジネスの場面だけでなく、日常的なコミュニケーションにも応用できます。
例えば、チーム内で新しいプロジェクトを始める際や、友人や家族と何かを共有するときでも、「Why」から伝える習慣を持つことで、対話がより深いものになります。
プロジェクトの開始時に「Why」を共有する
チームで新しいプロジェクトを開始する際、まずは「なぜこのプロジェクトを行うのか」を共有しましょう。
これにより、メンバー全員がプロジェクトに対するモチベーションや方向性を共有でき、効率的かつ目的意識を持った取り組みが可能になります。個人の目標設定にも応用
個人の目標設定においても、「何を達成するか」よりも「なぜそれを達成したいのか」にフォーカスすることで、より意義深い目標を立てることができます。
例えば、「ダイエットをしたい」と考える場合も、単に体重を減らすという目的(What)だけでなく、「健康的な生活を送りたいから」(Why)という理由を意識すると、モチベーションが高まり、行動に移しやすくなります。
6.介護事業での応用例
私が弊社の従業員に話をしたりプレゼンをする時も、このゴールデンサークル理論を常に意識しています。
まず、何をやるにしても、「なぜそれをやる必要があるのか?」ということから伝えるようにしています。
私が仕事をしている介護事業において、ゴールデンサークル理論を使った例を考えてみましたので、いくつかご紹介します。
1.リハビリスタッフが利用者さんに杖を使って欲しい提案する場合
訪問看護の現場では比較的よくあることではないかと思います。
転倒予防のために利用者さんに杖を使ってもらいたいけど、利用者さんは「まだ杖なんて使わなくても大丈夫!」と拒否が強いケースです。
この場合、医療・介護関係者であればゴールデンサークル理論を特に意識しなくても、以下のような伝え方を自然としていることがあるのではないかと思います。
杖自体の機能や良さを訴えかけるのではなく、その杖を使うことで利用者さんにどのような生活上のいい変化をもたらすことができるのか?を伝えることが効果的です。
2.訪問看護ステーションの管理者がケアマネに営業に行く場合
ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカーに営業に行く場合は、特にゴールデンサークル理論が効果を発揮するのではないかと思います。
相手の感情に訴えかけ、強いインパクトを残すことができるのではないかと思います。
私は居宅の管理者もしていますので、外部の訪問看護ステーションから営業を受けることも多いのですが、「スタッフが●名います。これができます。あれができます。」と「機能面」をアピールされることが多いと感じています。
そんな中、WHYから伝えてもらった事業所はやはり記憶にも強く残っています。
3.スタッフへ目標達成を促す場合
スタッフに伝える時にも、ゴールデンサークル理論は非常に効果的だと考えています。
特に目標達成を促したい場合などは、「その目標を達成することは自分たちにとってなぜ大切なのか?」ということを伝えることで、自分たちが頑張る意義をしっかりと伝えることができると思います。
7. まとめ
ゴールデンサークル理論は、シンプルでありながら強力なフレームワークで、企業や個人のメッセージをより効果的に伝えるための鍵を握っています。
この理論の中心にある「Why」を明確にし、それをコミュニケーションの核とすることで、感情に訴えかけ、深い共感を生むことが可能です。
多くの企業が、従来の「What」(何をするか)や「How」(どうやってそれを行うか)に焦点を当てたメッセージを発信しがちです。
しかし、成功を収めている企業は「Why」(なぜそれを行うのか)から始め、顧客や従業員との強い信頼関係を築いています。
Appleやスターバックスのような企業がその好例です。
さらに、ゴールデンサークル理論はビジネスだけでなく、個人の目標達成や日常のコミュニケーションにおいても有効です。
プレゼンテーションやプロジェクトの始まりに「Why」を共有することで、より強いモチベーションや共感を引き出し、相手を動かす力を高めることができます。
また、「Why」を見つけるプロセス自体が、自分や組織の使命を再確認し、行動をより意義深いものにするための有益なステップです。
今後、ビジネスやコミュニケーションの場面でゴールデンサークル理論を活用することで、より多くの人々に共感され、支持されるリーダーシップやブランドを築くことができるはずです。
みなさんも、ぜひ試してみて下さい。
ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました!
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《このnoteを書いた人》
ひろ/介護事業経営者/理学療法士/介護支援専門員
・病院で80人の部下を抱える管理職⇒介護で起業⇒7事業立ち上げ⇒経営11年目
・仕事効率化、知的生産、ビジネス書、文房具、ガジェットの話題が大好き
・X(旧Twitter)で介護事業の運営・マネジメント・リーダーシップについて発信
・YouTubeで介護事業の起業・経営について発信
・LINE公式アカウントで介護事業の経営・マネジメント・リーダーシップについて発信