両国湯屋 江戸遊

今日はサウナに行くと決めていた。コロナが蔓延し始めて以来一体何ヵ月ぶりだろうか。

行き先を幅広く思案する。上野の北欧に行ってみるか、いや数ヵ月ぶりのサウナでいきなり100度超えは少し不安がある。同じ上野のプレジデントやオリエンタルはどうだ、いや久しぶりのサウナにおいて外気浴は欠かせない。ならば新宿テルマー湯はどうか、いやせっかくなら晴れた日に新宿探訪と兼ねて行った方が良い。そうだ、そういえば両国に江戸遊なるスポットがあった、あそこなら自転車で行けてしまう!ということで初上陸。

しかし3000円近くする値段は普段使いするには抵抗があるな。会員になると400円オフだが年間費1000円を要するため今日のところはビジターで様子見。まずは各フロアを探索。2階が男湯、3階がくつろぎ処、4階が女湯、5階が岩盤浴。どの階もキレイだし休憩場所が充実している。ふんふんなるほどと全容を把握したところでいざ入浴。

まずはタオルでゴシゴシと体を洗い、しっかり毛穴を開いて発汗の準備をする。次にジェットバスで血流をよくしつつ、肩や腰をほぐす。気持ちいいなー、こんなにも気持ちよかったっけ。次に外湯の寝湯に寝そべり空を見つめ頭の中を空っぽにする。続いて同じく外湯の薬湯にゆっくり浸かって体温を高めていく。それにしても気持ちいい。かれこれ十数分ずっと気持ちいい。それではそろそろ体を拭いて、メインディッシュのサウナへ。

フィンランド式の3段構えのタワーサウナ。ソーシャルディスタンスを確保するために一席分空けて座るようになっておりむしろ心地良い。久しぶりのサウナは本当に熱い。グラグラと体が熱され汗がドバドバ止まらなくなる。7分間ってこんなにも長かっただろうか。永遠に感じられるほど一向に時が進まない。長い時間を用いて様々なことを考えてみた。家族のこと、友達のこと、東京での生活のこと、仕事のこと。特に何らかの答えが出る訳ではなく、浮かんでは消え浮かんでは消え。。。そうこうしている内にようやく7分間の苦行を完遂した。

この後はお楽しみのご褒美タイム。まずここは滝シャワーというレバーを引くと頭の上から水をザバーッと浴びられるナイスなシステムがある。さながら湯らっくすのMADMAXだ。熱し上がった体に冷たい水を頭から一気に被ると爽快感が駆け巡る。そしてついに水風呂へ。冷え冷えの水風呂の中へ体全体を沈める。これだ、この瞬間のために生きているといっても過言ではない。全身がキーンッと冷やされる。指先までキンキンに冷えきった後は天使の羽衣に包まれ、先程まで冷たくて仕方なかった冷水が温かく感じられる。至福の時間だ。

そして最後は外気浴。ここは外気浴のためのスペースが確保されており、席数も6席ほど豊富に設けられている。高温と低温を一気に反転させることで血管がグッと開き切っており、足の指先から頭のテッペンまでグングンと温度が戻ってくる。目の前がグニャグニャに折れ曲がりグルグルと回転して混ざっていく。たまらない。CreepyNutsの言う合法的なトビカタとはこのことなんじゃないだろうか。

このサウナ→水風呂→外気浴を3セット繰り返す。1セットごとに水分補給することで体内の水分が全て新品に置き換わっていく感覚。そして3セット後、えも言えぬ悟りの感覚にとらわれる。これがプロサウナー達の言う整うということ。しかし小生はこれまで2度しか整ったことが無い。原因は自分で分かっている。1つは2回目以降のサウナの時間をもっと伸ばすべきなのだ。2回目以降は先程まで無限に感じていた7分間があっという間に過ぎていく。少しばかり延長して留まるが熱いなと感じたらすぐに出てしまう。7分間のノルマはクリア済みだし快適さ重視。もう1つは水風呂の時間が長すぎる。そのため体が冷えすぎて外気浴の時になかなか頭まで温度が到達しない。それでも水風呂に長く居たいもの。あくまでも快適さ重視。整えばラッキーくらいの腹づもり。

最後は炭酸泉でクールダウン。タイル絵は見事な富士山。葛飾北斎ゆかりの地のためリスペクトが込められているのだろうか。しかし銭湯で大きなタイル絵を見る度に思うのだが、なかなかの至難の業を成し遂げている。おそらく完成図のイラストを座標軸に落とし込んで「2の3~35と、3の7~16はターコイズブルーで」みたいな工程を踏んでいるのだろうが、アナログの世界の中で最も精巧なプログラミングの1つと言えるのではないだろうか。

一度休憩処へ行き、雑誌を眺めながら一休みして岩盤浴へ。昔は男女一緒に居れる利点を活かしてカップルで良く行っていたが、子供が産まれてからはその機会は逸失し、また時を同じくして自分の中で第2次サウナブームが興ったため岩盤浴からはすっかり遠ざかっていた。今日は2800円の料金にインクルードされていたため、もったいない精神で久しぶりにトライ。高温のサウナに慣れ親しんだ今の小生のボディを生ぬるい岩盤浴風情が果たして満たしてくれるのか?という危惧があったが、入ってみるとこれはこれで悪くない。うつ伏せでじっくりこんがりじとじとと温められると、あたかも内臓を煮沸消毒されている様な気持ちになり、癒される。仰向けになってしばらくすると、何のことは無い、汗がドバドバと吹き出した。でもやっぱりサウナが好き。別料金制の時は岩盤浴は付けないかな。

気がつけば5時間も滞在していた。全般的に清潔だし高いけどリピートしてしまうかもしれないな。

ちなみにサウナ→水風呂→外気浴のサイクルを繰り返していると、同じ様に巡回しているサウナー達と短時間の間に無言の顔馴染みになっていく。皆それぞれサウナ→水風呂→外気浴の設定時間は異なるが、約数で合致して「こいつまた水風呂で一緒になったな」とか「うわ、また外気浴先に居てるやん」みたいになるのだ。今日は一流ビジネスマン風の若者2組とよく一緒になったな。一組はアジアではコロナは収束してきたが、欧州、中東はその限りではなく、そちらの国の支社の連中を憂うという会話に花を咲かせている。もう一組は炭酸泉の効能の説明文についていた英訳を用いて英文法の解説を繰り広げていた。さすがこの価格帯ともなると460円の銭湯とも850円のスーパー銭湯とも客層が異なる。しかし若者よ。サウナや外気浴では周囲のサウナーの整いに配慮して無言で過ごすべきだ。TOEICは950点かもしれないが、サウナー検定のスコアは300点台だぞそれじゃ。未来のサウナー達の力強い成長を祈るばかりである。

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