見出し画像

仕事選びのアートとサイエンス(読書感想)


書籍の情報

仕事選びのアートとサイエンス
不確実な時代の天職探し
改訂「天職は寝て待て」

山口 周
光文社新書
2019年3月31日第一刷発行

書籍の目次

第1章 転職はなすべきか?なさざるべきか?
第2章 従来のキャリア戦略の問題
第3章 「いい偶然」を呼び込むには?
第4章 「攻め」の転職と「逃げ」の転職
第5章 転職後の心の変化への対処

感想

いわゆる転職のノウハウ本ではなく「幸福になるための仕事選び」というテーマで考察されています。
「自分は何になりたいのか?」と「自分は何がやりたいのか?」は実は全く異なる質問だという指摘は、目から鱗でした。「やりたいこと」を軸にすると「幸福な仕事」ができそうです。

参考になった箇所の引用

6ページ
仕事選びを予定調和させることはできない。自分をオープンに保ち、いろんなことを試し、しっくりくるものに落ち着くしかない。

72ページ
20代の若手には成果に見合わない待遇で囲い込んで会社にロックインし、30~40代には将来の雇用保障と年金的報酬をちらつかせることで働かせてさらにロックインし、50~60代になって、労働市場での価値が0になってから初めて、それまでの収支がトントンになるように、最後の「お釣り」を払う、という基本構造になっているわけです。
30歳前後での退職や中高年のリストラが「不道徳」であるという風潮は、いずれのケースでも、暗黙の契約の不履行、つまり不誠実だと考えられているということです。

97ページ
仕事選びの際に考える2つの問い、つまり「自分は何になりたいのか?」と「自分は何がやりたいのか?」は、ほとんど同じ質問に見えるかもしれませんが、実は全く異なる質問だということです。
「自分は何になりたいのか?」という問いは、先程の枠組みで指摘すれば「憧れ」に基づいて職業選択を考える、ということです。しかし、このような思考の末にめでたく憧れの職業についたとしても、その仕事が本人にとって「好きで得意」なことかどうかは、分かりません。なんといっても、職種や社名に対する憧れが先行しているわけですからね。
一方で、後者の問い、すなわち「自分は何がやりたいのか?」について、本当にしっかり見極めができれば、それは職業選択の大きな軸になるでしょう。何故かというと、世の中的な評価に惑わされることなく、自分がやってみて、嬉しいことを追求できるからです。

106ページ
オンリーワンという言葉は、競争の序列から離れた個人が、それでもなお、内在的に価値を有していることを示唆しているように思われますが、実際には「世界に1つだけしかない」という事は、そのまま価値を持っていることを意味しません。足元に転がっている石ころでも、全く同じ形のものは、世界に2つとないわけで、「世界に1つだけのオンリーワンなんです」と言われても、価値判断をする側としては「は?だから何?」としか応えられないでしょう。つまり、これらのレトリックは、ナイーブな人たちを慰める1種の「まやかし」でしかないということです。

148ページ
結論としては、健全で前向きな世界観を持ち、毎日を丁寧に生きていこう、ということになるかと思います。何気ない毎日の仕事の中、あるいは生活の中で、皆さんの周りにいる人と、どれだけヘルシーなやりとりができたかが、「良い偶然」を生み出す畑の土壌の質を決めるのです。

217ページ
「世の中に確固とした価値を提供している。誰かの役に立っている、必要とされているという実感」が、精神の健康を保つためには必要なのだ、ということです。

仕事選びのアートとサイエンス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?