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20240807 明石の郷土料理とは?(神戸の「郷土料理」続編)
昨日神戸にこれといってピンとくる郷土料理が無いように思える件について書きました。
そして,お隣の明石市にはいかなごのくぎ煮,玉子焼き(明石焼き),たこめしなどが挙げられていますが…と書いていたところ,明石出身神戸育ち京都経験ありのへんいちさんにコメントをいただいて「くぎ煮は明石の郷土料理ではないのでは?」という知見などを教えていただきました。
そこで今回は先日挙げた明石の郷土料理としての3品について,順番を変えて考察してみたいと思います。
〇玉子焼き(明石焼き)
玉子焼きに関しては,全国的な知名度が高いため明石市民にとっての「自慢の名物」であり,テレビなどで有名な「本家きむらや」以外に自分のおススメのお店があることを紹介したくなる関西人気質(?)のある人も多いと思います。
しかし,玉子焼きを明石の「郷土料理」というかというとあんまりしっくりしない気がします。
理由の1つとして「提供店の範囲の狭さ」が挙げられます。今でこそ明石の全域で玉子焼きは食べられますが,一昔前は「明石の魚の棚周辺の専門店のみで食べられる」ものであった気がするので,郷土料理ではなく「名店の名物」であった気がします。
また,明石市民のほぼ全世帯にタコ焼き器は存在し各家庭の独自のレシピがあると思いますが,玉子焼き用の銅版を持っていたりじん粉をつかって玉子焼きをつくったことのある世帯は多く見積もっても2割程度なのではと思います。
このあたりを名古屋の料理で例えると,味噌煮込みうどんは山本屋が有名ですが各家庭で独自のレシピでつくられる「郷土料理」といえるけど,手羽先に関しては風来坊や世界の山ちゃんで食べるのがメインで各家庭で作る機会はそれほどないものであり,「名古屋の名物」に相当すると思います。この対比で考えると玉子焼きはやはり「郷土料理」とは言えず「明石の名物」になるのではと思います。
〇たこめし
全国的に明石で知られている食材としては,『美味しんぼ』の影響も強いのか「明石の鯛」の方が知名度が高い気がします。明石駅から天守閣のない明石城の堀の方面をみるとぐるぐる回る鯛のオブジェがあるをみて(注2016年に撤去されたようです)明石市民は鯛を推しているイメージがあるかもしれません。しかし実際には明石市民にとっては「たこ」の方が身近でなじみの食材である気がします。
ぱっと思いつくだけでも淡路の岩屋と結んでいた「たこフェリー」,明石市コミュニティバスの「たこバス」,明石観光PR隊長「パパたこ」など,明石の公的な名称にはたこが使われていることが多い気がします。これは,タイよりたこの方が擬人化,キャラ化がしやすいというデザイン面の理由も大きいと思いますが,魚の棚で店から逃げる元気さや料理するために洗濯機で洗われる不屈の精神(?)を好む市民感情があるのではと思います。
んがしかし,たこ飯が明石の郷土料理かというと…普通に刺身で食べたり天ぷらや唐揚げにしたりたこ焼きの具にしたりで食べることの方が多く,たこ飯を郷土料理として認識している人はそんなにいなかったのではと思います。
どちらかというと,駅弁で有名な淡路屋の「ひっぱりだこ飯」が容器のユニークさやバリエーションの豊富さなどで有名になったおかげで「たこ飯」という食べ方が注目されそこから家庭でも食べられるようになったのではと思ったりします。
【書誌情報】
作田はるみ・片寄眞木子・坂本 薫・田中紀子・富永しのぶ・中谷 梢・原 知子・本多佐知子 2022 兵庫県の家庭料理 地域の特徴. 日本調理科学会大会研究発表要旨集, 33, 199.
兵庫県の家庭料理について調べた上の研究の要旨の一部を以下にあげます。
【結果】2021年度の学校給食の献立に取り入れられていた家庭料理は,神戸市の「すき焼き」,明石市の「いかなごくぎ煮」,「たこのからあげ」,加古川市の「かつめし」, 「はりはり汁」,小野市の「かしわ」の料理,「ちらしずし」,「高野豆腐の含め煮」,姫路市の「姫路おでん」,「ばち汁」,「くきわかめ佃煮」,千種町の「たけのこご飯」,香美町の「ゆでかに」,「ドギ」や「ニギス」の料理,丹波市の「栗ごはん」,「黒豆料理」,淡路市の「ちょぼ汁」,「たこ飯」,「鯛そうめん」などがあった。「姫路おでん」や「かつめし」などは,複数の地域で給食献立に取り入れられ,兵庫県の味として紹介されていた。
ここで明石市は「たこのから揚げ」であり,淡路市で「たこ飯」が取り上げられているのが印象的で,なんというか明石市はたこで有名ですが,たこ飯の有名な場所としては兵庫の他の地域に譲るような心理が明石市民にはありそうな気がするのですがどうかなあと。
そういえば昨日取り上げた農林水産省のたこめしのページでも主な伝承地域は「淡路島,東播磨」と書いてあり,明石市は東播磨に入るので該当しますが,このような表記をするのは明石以外の地域への配慮があるからではと思ったりします。
ここまでで結構長くなってしまったので,いかなごのくぎ煮に関しての記述と「郷土料理ってなんだろう」ということのまとめに関しては明日に回させていただきます。