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ERG(従業員リソースグループ)と有志活動は違うという話

以前「社内表彰制度なんてなくなればいい」という主旨の投稿をしたのですが、そのきっかけになった「有志活動でもない業務活動が『有志活動賞』を受賞したことの是非」、その根底にある「有志活動とERGの違い」について、ほとぼりも冷めてきたのでもう少し掘り下げてみようと思います。

そんな当時のポストはこちら。

私の観測する限り、どうも相当数の人に「有志活動はERG、すなわちEmployee Resource Group(従業員リソースグループ)である」という誤解が蔓延している様に思います。

「ERG=有志活動」という間違った解釈をしているものだから、「有志活動賞」に有志活動とERGをごっちゃ混ぜにして選んでしまって違和感を生んでいる。

このままでは本当に価値のあるERGまで雑多な有志活動と混同され埋もれてしまう、との危機感が本ポスト執筆の動機です。


ERGとは何か

ではERGと有志活動は何が違うのかというと、これらはそもそも全く別の概念だと私は考えています。
※このあたり、新しい概念で調べれば調べるほど違った定義が出てくるので「あくまで船長はこう考える」という理解でお願いします。

繰り返しになりますが、ERGとは「Employee Resource Group」の略。従業員リソースと訳され、「特定の目的や属性により集まった従業員の公式・非公式な集まり」と言えます。

たとえばGoogleのERGの一つ「障がい者アライアンス(DA)」はこのように紹介されています。

障がい者アライアンス(DA)は Google(および Alphabet)の社員によるリソース グループ(ERG)であり、社員本人だけでなく、お子様、ご親族、ご友人などの障がい、学習障害、特別なニーズ、ニューロダイバーシティなどに寄り添っています。社員によって2012年に設立されたこのグループは、イノベーティブかつインクルーシブなチーム、プロダクト、教育、職場を作ることを目標としており、障がいに関するトピックについて発信し、意識を高め、アドバイスを共有することができるコミュニティです。(中略)

DA は社内のあらゆる階層で啓発活動を行うことで、Google の障がいインクルージョンへの取り組みを改善し、イノベーティブでインクルーシブなチーム、プロダクト、教育、職場環境を作ることに貢献しています。

https://careers.google.com/stories/googles-disability-alliance/?hl=ja

ここでは有志活動かどうかは言及されておらず、「社員や関係者の障がいに寄り添うこと」を共通の目的に様々な活動をしている事が読み取れます。

この「共通の目的をもち従業員が集まること」がERGの本質です。例えば女性活躍を目指す企業がDEI担当役員主導で女性社員を集めてグループを作り活動させれば、それは紛れもなくERGでしょう。包括的な業務指示であり有志活動ではありませんが。

一方で有志活動は、しばしば業務指示との対比として語られ、無償の活動であることが多い。その証拠に「ボランティア」の訳の一つに「有志」があります。社内有志活動の本質も「無償であること」とは微妙にずれているのですが、より無償の側面が強い活動と言えます。

わざわざ図式化するまでもありませんが、このような関係でしょうか。このようにERGと有志活動は似て非なるものであり、位相の異なる概念というのが私の考えです。

「象とバスはどう違いますか?」と聞かれたら、たいていの人は「『大きい』くらいが共通点で、全くの別物では?」と言う印象を受けると思います。動物園の象の檻にバスが展示されていたら。しかも「これは象です」という看板を付けて。なんとも滑稽ではないですか。

なぜERGと有志活動が混同されるのか

ではなぜERGと有志活動が混同されるのでしょうか。これはひとえに「ERGの初期段階が往々にして有志活動的側面を持つことが多いから」に他なりません。

ERGの代表格として「女性活躍グループ」や「障がい者活躍グループ」などのマイノリティグループが挙げられます。社内や社会的地位が低く、マイノリティとして蔑ろにされるから、一致団結し地位向上を訴える必要がある。

こういった活動は組織や現状に対する課題提起から始まるため、初期段階で組織のサポートが得られるはずがなく、自然と有志活動的側面を伴います。

一方で先のGoogleのDAは企業の公式ページに掲載されているとおり、組織公認の活動です。組織公認となればもはや「有志活動」とイコールでなくなりますが、そうなったらERGでもなくなるのかといえば、当然そんなことはない。

ここではデモグラフィック的マイノリティの例を挙げましたが、例えばDXが進んでいない組織でTeamsやSlack等のコミュニケーションツール活用を目指すグループもERGと言えますし、社内で非公式に大喜利を開催し、社員間コミュニケーションを活性化させ自由闊達な風土作りを目指すグループがあるとしたら、それもまたERGでしょう。そんな会社が本当にあるのか分かりませんが。

より良い社会を作るために、ERGも有志活動も絶対に必要

本ポストで私は、「ERGはただの有志活動とは異なるから同一視すべきではない」等とどちらかに優劣を付けるつもりはありません。ただし「有志活動」という言葉が社会通念上ボランティア的側面を持つ以上、本質的にボランティアとは異なるERGまで雑多な有志活動と同一視され、まっとうな評価を受けられなかったり、有志活動だから勤務外で行うべき、といった不利益を被ることに危機感を覚えます。

企業は事業活動を行い社会に貢献し利益を得てナンボですから、まず本筋にあるのは事業活動であることは疑いようもありません。だからこそ事業活動の効率化のためにマイノリティを犠牲にしがちですが、レジリエンスの低い組織は変化を嫌い、やがて社会に追随できなくなります。だからこそ、従業員の発意や自発性、共通の課題意識を原点とするERGや有志活動が絶対に必要なのです。

一方で、これらの活動がまるで従業員のガス抜きのように単発で存在しているだけでは勿体ないとも感じます。ERGや有志活動が当たり前の様に組織内に存在し、事業と相乗効果を生み、組織や社会をより良いものに変えていくことが理想で、組織と従業員はお互いにそういった関係を目指していくべきではないでしょうか。

本日は以上です。長文にお付き合いいただきありがとうございました。

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