三木清の「読書と人生」を読んで

今日は当直先で本投稿を書いています。

今日は、三木清の読書と人生という本を読みました。
共産主義者の逃亡を助けたとのことで、三木清が治安維持法によって投獄され、戦後に獄死する3年前(1942年)に、その名の通り読書と人生について書いたエッセイをまとめたもの。タイトルは読書と人生だけど、哲学についてや、辞書について、師匠である西田幾多郎やハイデッゲル(ハイデガー)についても述べている。

末尾にも記載されていたが、当時は反政府的な発言に対する締付けが強く三木は思ったことを書けなかったんだとか。当時、具体的には天皇制の絶対主義に対する批判や、西欧マルクス主義の考察についてなど、書くことはできないタブーだった。

今やSNSにも、ある程度好きなことが書ける世の中になったことは喜ばしいこととは言え、このような賢い人が、なぜ無惨にも獄死しなければいけなかったのだろうかと思うと、時代というものの儚さと、人間というものの恐ろしさを、自分の背中のあたりに感じるのである。

この人は間違いなく一流の哲学者である。

このあたりの集団心理の恐ろしさというのは、ルネ・ジラールによってもよく研究されている。自分もつくづく気をつけないとな思うところである。

前置きが長くなったが、特に印象に残った点は、三木の読書についての考え方である。彼は読書は技術であるという。
そしてなによりも重要なことは、習慣化し毎日30分でも必ず読書をする時間を作りなさいと断じている。

読書の時間がないというのは、読書をしない口実に過ぎない

三木清 読書と人生

でもこれって考えてみれば、読書に限らず全てのことにあてはまる。読書を運動や勉強に置き換えてもいい。ただ時間をスマホやテレビや、ぼーっとする時間なんかに、または他に優先すべき事項にあててしまっているだけなのだ。

私も最近妻や子供にポケモンカードをしないかと誘われるが、断っている笑。それをすれば本を読む時間がますます少なくなってしまうからだ。(あとはマジック・ザ・ギャザリングというゲームをする時間がなくなってしまうからというのもある。 )

またショーペンハウアーも同じことを言っているが、同じ本を繰り返し読むこと、ゆっくり読むことの重要性を強調している。これは独逸哲学をかなり熱心に研究していた三木であるから、ショーペンハウアーの影響も多少なりとも受けているのかもしれない。

自分はついつい興味が移り変わりやすいタイプで同じ本を繰り返し読むことが苦手である。でも最近は、最低でも2回は読むようにしていて、一度目は通読し、二度目はこのように文章にしてまとめるために読んでいる。理解が捗り、あれ?これって元文献なんだっけ?誰が言ってたんだっけ?ということが少なくなる。また当初の理解が間違っていたことに気づくことも少なくない。

また濫読は誤ったことであるが、濫読は通過儀礼であって、一度はやってみて間違ったことだと気づくことは、若い人が失敗から学ぶことと同様に重要なことであるという。これは自分としてはすごく納得しやすいところであった。やはり悪い本も読んでおかないと、良い本がなにかはわからない。またスポーツも学問も最初は質より量である。また、良い本としては、やはり三木も他の読書家と同じように古典を勧めている。とりわけ大哲学者の遺したものを読むようにとの記載が繰り返しなされている。

意外にも三木は、古典のみに偏執せず、昨今の新書などにも触れるようにと考えていたようだ。これは哲学を実学と捉える三木らしく、また政治問題にも明るかった師である西田幾多郎の影響があるのかもしれない。でもこれがなかなかに難しい。すでに評価の定まっている古典は読んでいて、かなり面白い確率が高いのだが、新書はどうしても一定の割合でひどいものが含まれてくる。これは三木の言うように識別眼を養うしかないだろう(三木は西田幾多郎の良い本を見つける勘の鋭さに大いに感心したようだ)。

読書は技術であり、最終的には個別化されるものだと考えていたようだ。私も一人として同じ本の読み方をする必要はないと考えている。沢山の本や論文を読み、自分なりの読み方を構築することが肝要である。しかし独学では誤った方向にいってしまうことも少なくない。ときには、他の人と輪読をしたり、自分の解釈が合っているか確認し合うことも重要だろう。

以前はそれは人間相手しかできなかったのだが、最近は大規模言語モデルがその一役を担ってくれるようになった。

まだまた時々Hallucinationsを起こすけど

このような言語技術の進歩、また様々なpersonal knowledge managementツールなどの発展の恩恵を大いに活用しつつ、これからも読書人生を楽しみたいと思う。

とってもいい本でした。

ここまで読んでくださってありがとうございます。よろしければどんな方に読んで頂いているか知りたいので、いいねを教えていただけると嬉しいです。

おやすみなさい。皆様お元気で。


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