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スポーツ専門のOTTサービス「DAZN」が業界的にかなり優位そうなので、調べてみた。
ちょっといい過ぎたかもしれないですが、、こちらの資料をみたときにそう思いました。2016年度のデータですが、「よく観るスポーツ」の中でも、割合が高い1位2位をサービス設立4年目のDAZNがカバーできていたからです。
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※株式会社マクロミル三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社による「2016年スポーツマーケティング基礎調査」
現状DAZNは、サッカーの27.9%のニーズのある放映権を保有し、野球の31.9%もそれなりに抑えられています(2018年度は巨人以外全て放映権があった)。ちなみにWOWOWは、2019年度の野球(全球団)の全公式戦を放送するのですが、もしDAZNも全球団放映権があれば、今以上に存在感があったと思われます。
■DAZNのサッカーと野球の放送
・サッカー(Jリーグ)
└ 2017年シーズンから10年間全て見れる
・野球
└ 2018年度:巨人以外の全球団見れる
└ 2019年度:広島/ヤクルトはなし、中日は一部公式戦のみ、それ以外は公式戦全試合見れる
ただそれでも、サッカー(Jリーグ)を10年分の放映権を得ており、(後述しますが)それ以外の多種スポーツもライブ配信・見逃し配信できるので、かなり注目されているサービスになります。
スポーツ専門のOTTサービス「DAZN」はどんなサービスか?
2016年にイギリスの「パフォーム・グループ」によって立ち上げられた、スポーツ専門のOTT(Over The Top/インターネット経由で、動画コンテンツなどを提供する非通信事業者)の一つです。
現在130種以上のスポーツをカバーしており、年間10,000試合以上を配信しています。最近であれば、南米王者決定戦 コパ・アメリカ2019の全試合独占配信を独占配信するので、サッカー好きの方はご存知ではないでしょうか?
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今後のスポーツ配信マーケットは拡大傾向ではありそう
あまり参考になりそうなデータがなかったのですが、2016年にスポーツ庁と経済産業省の出した「スポーツ未来開拓会議中間報告」の試算によると、2016年から2025年までに約2.76倍に伸びるようです。ただこの数字はスポーツ市場全体でのものなので、スポーツ配信事業では伸び率が違ってくる可能性があるかもです。
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ただ以下の記事で(おそらくもっと詳しいデータを持っている)DAZNのCEOが市場として魅力的で、市場も伸びる余地があると話していることから、スポーツ市場と同様に伸びていく可能性が極めて高いと思われます、
裏側では権利関係が複雑なビジネスモデル
基本的には、DAZNからスポーツコンテンツを配信し、それに対して、ユーザーが対価を払うサブスクリプションモデルとなります。ただスポーツ系は放送自体や広告などで色々な権利が関係してくるため、裏側のお金の動きは比較的多いと思われます。
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また後述しますが、料金体系は以下のようになっており、支払い方で利用料金に差があります。
通常会員:1,750円/月額
「DAZN for docomo」会員:980円/月額
DAZN年間視聴パス:19,250円/年(1ヶ月分の割引+2,000円分クーポン券)
ユーザー獲得戦略を仮説する
まずは収益構造の見立てを作ってみましたので、ご覧ください。
基本的には加入者×月額課金の合計が売上となりますが、新規会員増加(無料体験後の申し込み率)、継続率(解約率低下)は重要な指標となっていると推測されます。
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仮説を立てるために、参考になりそうな記事とコメントがありました。
(1)『事前リサーチの中で、日本のスポーツファンは1人の方が複数のスポーツに興味を持って視聴する傾向が非常に高いことがわかりました』
(2)『Jリーグに目をつけたのは、非常に熱狂的な「ロイヤルファン」を多く持つからです。』
(3)『JリーグをDAZNへの入り口にしていただき、そこから更にヨーロッパのサッカーや、格闘技・ダーツといった他のスポーツにも関心を持っていただくことができればと考えています。』
上記とDAZNのニュースを参考にすると、以下のような戦略があっと仮説を立てたのですが、いかがでしょうか?
まずはサッカー・野球など主軸スポーツの放映権を獲得(参考:冒頭のデータ資料)。特に(2)を根拠にJリーグは注力し、通常放映権は2〜3年程度ですが、10年契約になっています。その後、(1、3)対策として、主軸スポーツ以外の関心が高いスポーツも徐々に放映権を獲得していったと思われます。
ここでポイントとしては、以下のように思います。
(1)好きなサッカーチームの公式戦を見ようと思うと、DAZN登場以前は、複数のサービスに入らないといけない場合が多かったが、2017年からはDAZNで、観戦できるケースがようになったこと(ユーザーの負の解消)
(2)2016年までJリーグを放送していたスカパー!が、2017年より完全撤退した(競合優勢性の獲得)
(3)元々日本ではTVが無料であったが、コンテンツの放映権の独占や今まで見れなかった試合をDAZNなら放送されている状況を作り、スポーツ放送に価値を感じ、お金を払う動機を演出した(習慣の変化推進)
Jリーグ放映権獲得費用2100億円は高いのか?
まずは契約内容のおさらいです。
■契約内容
2017年シーズンから10年間の放映権獲得
└ サッカーJリーグのJ1、J2、J3各リーグの全試合
地上波と無料BSについては、NHKとTBS系の契約は維持される
おおよそ2年前のデータですが、参考までに契約した当時と近しい時期の売上を考えてみます。通常会員(45万人×1750円)+DAZN for docomo(55万人×980円)で13億2650万円/月、年間159.8億になる。
2017年8月:100万人(国内総会員)//参考記事
2017年6月:55万人越え(DAZN for docomo)//参考記事
なので、年間159.8億の売上のタイミングで、2100億円(売上の13.1倍)で放映権を購入したことになります。
放映権の金額が大きすぎるように思えますが、なぜでしょうか?
仮説を考えてみます。可能性としては、仮説1はありそうですが、仮説2も完全に否定できないかもしれません。
仮説1
プロサッカーライブでみたい=DAZNという想起を獲得、もしくは(前述のように)ユーザー獲得の起爆剤なら許容範囲の投資
仮説2
仮説1でうまくリターンを回収できる見込みがありつつも、イギリスのようにサッカー賭博が合法化される可能性があるから。またそうなった場合は市場が急拡大するので、10年契約とした。
まとめ:観察して感じたこと
「スポーツ観戦した人の自分の好きなスポーツやチームの試合を見たい」という気持ちに対して、現状だと「地上波放送だと無料である」「人によっては観たい試合を全部見ようとすると、複数のサービスと契約が必要」などの困難をサービスとしてうまく解決しようとしているように思えました。
ただ観察していくにつれて、DAZN単体でうまくいっているだけではダメでスポーツ業界全体としての課題もありそうでした。(詳細は、記事に書いてあるので読んでみてください)
(上の記事でも担当者の方がコメントしてますが、)スポーツ業界をもっとビジネスとして回す。つまり、以下のようなエコシステムをもっと回せるようになると、結果として「ファンの拡大や魅力的なコンテンツ増加」につながり、スポーツ業界が持っている問題も解決に近づくのではないか?と思いました(この分野をもっと掘り下げたいので、引き継き勉強します!)
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※「【業界分析:スポーツビジネス】スポーツビジネスの市場規模と動向。欧州のサッカーリーグと米国の4大リーグ」より引用
今回はDAZNを調べていたのですが、結果として「日本のスポーツ業界にある問題点」が少しわかったような気がします。今回はスポーツ配信業界でしたが、機会があればスポーツ団体やチームについて調べてみたいと思います。
おまけ:気になった施策
DAZN未加入者への施策(オフライン)
DAZN未加入者への施策(オンライン)
他サービスでのDAZNの露出・コラボ
年パス&クラブ応援(応援しているクラブに一部還元される!)
アンバサダーによるメディア露出
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お読みいただき、ありがとうございました。他にも色々あると思いますが、今回はここまでとさせてください。
自分なりに解説して見ましたが、もし何かの参考になりましたら、幸いです!今後もマーケティングなどを観察していきますので、よかったらフォローいただけると幸いです。
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