【随想】 つれづれなるままに
幼い頃、自分の書いた文字が活字になることに憧れていた。
そんな少年の日から数十年が経ち、さまざまな書体の活字が氾濫している現在では、いささか“活字食傷”に陥っているのが正直なところ。
そのため、手書きの文字に愛おしさを感じてしまうのであった。
書物の山に囲まれた机という盆地にできた原稿用紙の田圃の中に文字という苗を植え付ける。
──ふと、 そんな暮らしを夢見る。
将来は“学者”になりたかった少年時代。
老生のストレス解消法は、ひたすら文字を書くこと。
真っ白な帳面が文字で埋まる毎に、日々の煩悩が心から消えてゆくのを感じられる。だから休日は図書館に籠もり、興味を惹いた本の一節を一心不乱に抜書きしている。
後日、抜書帳を捲ってみると、歴史、文学、生物学、天文学から名言・格言、駄洒落、落語……等の雑多な知識が詰まっている。なんだか学生時代より勉強している気がする。
嗚呼、自画自賛。