#6 チェックイン …仙道さん
無事に換金を終えた(ユーロのみ)僕は、次に何をしなければならないのだろうかと考えた。が、普段飛行機を利用することなどほとんどないため基本的なことから僕にはわからない。また結局、他の旅行者達の様子を眺めながらウロウロするしかなかった。
チェックインというやつをやれば航空券を発券してもらえそうだが、どこに並べばいいのだろう。
荷物はどのタイミングで預ければいいのだろうか。
eチケットというのがチケットの代わりになるんじゃないのだろうか。
やれやれ、やはりスマホに頼るしかないかと思っていたところ、案内板が目に付いた。
これだ。
「この横に書いてある番号の窓口に行けばいいんだね!?
ありがとう!案内板さん!!」
などとひとしきり芝居を打った後で、指定の場所に急いだ。
「まだあわてるような時間じゃない」
とスラムダンクの仙道彰(陵南高校7番)の声がしたが、僕はすっかり慌てた。
何故ならこの人の多さ、そしてあまりにも素人すぎて、この先の工程がつかめない。
間に合わなくなってしまったらどうしよう。
チェックインカウンターというところに着くと、そこは大行列が出来ていた。(少なくともその時の僕には大行列に感じた。)
「こいつぁちと焦るぜ。仙道さんよお。」
と格好つけてみたものの、
実際は不安高まる胸の内を「まだあわてるような時間じゃない」と自ら心の中で連発して落ち着けていた。
そして並び始めようとしたその時、妙な機械に誘導されている人たちが目に付いた。
どうやら自動チェックイン機なるものを先に済ませておかなければならない様子。僕はすぐにその機械の指示に従いながら搭乗券なるものを受け取った。
ん?ではあの列はなんなんだ?荷物を預けるためだけの列ってことか?
よくわからないままとりあえず列に戻った。
本当にわからないことばかりだ。
イタリアから日本に戻る際のことについてはほとんど何も調べていなかったため、向こうの空港で自動チェックイン機などを操作しろと言われたらお手上げだ。
きっと僕は映画「ターミナル」のトム・ハンクスになり、マルコ・ポーロ空港に住み続けることになるだろう。
などとあれこれ誇大妄想で半分楽しみながら悩んでいる内に僕の順番が回ってきた。
中国国際航航空とはいえ相手は日本人(いや、日本語の上手い中国人だったのかも)なので特に問題なく済ませることができた。
が、荷物について一つ気がかりが残った。
チケット予約サイトに予め問い合わせたところ、荷物は最終目的地まで預けたままだということだったが、一度目のトランジット先の大連で受け取らなければならないとのことだ。
そういうことはよくあることなのだろうか。
変更したのか聞けばよかったのだろうが、そこは飛行機に乗る人間ならば、暗黙知として当然に受け入れなければならないのかもしれないと思い、僕は簡単に返事をしてカウンターを後にした。
その後暫く聞かなかったことを後悔したが、僕は僕に言い聞かせた。
大丈夫。
今回の旅は冒険だ。
欲張るな。
これからきっといっぱい失敗する。
恥ずかしいこともいっぱいある。
初めから巧くいくことなんてない。
前に進もう。
やれやれ、僕は荷物を預けるだけでいちいち心が大変だ。でもそこまで終えることができた。出発まであと約1時間。
「まだあわてるような時間じゃない」
仙道さん、
僕ならきっとなんとかできるよね。