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ロンボクだより(118):ペットボトルの回収(岡本みどり)

〜『よりどりインドネシア』第183号(2025年2月9日発行)所収〜

みなさん、こんにちは。こちらでは毎日暴風雨が続き、魚や夏野菜(特に毎日のサンバル作りに欠かせないトマトや唐辛子!)の値段が上がりきっています。2月末の断食月が始まるまでになんとか通常の値段に収まってほしいところ。

さて、今回のロンボクだよりはペットボトルの回収について書きました。空のペットボトルのやりとりにも様々なドラマがあるのです。

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日本ではペットボトルを捨てるとき、自治体のゴミ捨てルールに従って、決まった曜日に決まった場所へ持って行くか、お店などのリサイクル回収ボックスへ持っていくことが多いと思います。

ロンボクではどうしているのかというと、ゴミ銀行へ持って行くのはミラクルハイパー意識の高い人だけで、ゴミ箱を見つけて捨てる人がいればラッキー、大半はそこらへんにポイっと捨てるか放置しています。

一方、道や広場にポイ捨てされているペットボトルを回収して業者さんに売る人がいます。

義母は、生前これらのペットボトルやコップ型のプラスチック容器を集めていました。夜明け前の3時から4時ごろに近所を回って、ゴミを見つけては持ち帰っていたため、義兄や夫に「やめてくれ」とよく頼まれていました。義兄や夫の言い分は、母親が夜にゴミを探して売らなければならないほど、「自分たちが稼いでいないと思われるから」というものでした。

なるほど一理あります。しかし、義母は家でじっとしていたくないのです。「散歩もできてお金も手に入るんだからいいじゃないの」と私は義母の肩をもっていました。

収集した空のペットボトルは、KARUNG と呼ばれている、50キロのお米を入れても大丈夫な大きな袋にいれます。KARUNGは日常雑貨のお店へ行けば、だいたいどこでも手に入ります。この袋が空のペットボトルでいっぱいになったら、村を巡回している引き取り業者さんに重量を計ってもらい、お金と交換します。

ただ、重さを計量する方法だと、ときどきズルをする業者さんがいます。次の写真は引き取り業者さんの使う秤です。この写真では5歳未満児の体重測定に使われていますが、廃品回収の業者さんもこの秤をかついで巡回しており、フックの部分にKARUNGを引っ掛けて計量します。秤のバランスを保つために、先端に小石をつけて調整します。この小石の量でズルをするのだとか。

【参考】総合保健ポスト(Posyandu)で乳幼児の体重測定に使われている秤

逆に、売り手が1本ずつのペットボトルの中に数ミリ程度に水をいれて重量を増やすこともできます。袋の中のペットボトルを全部ひっくり返して確認するはしませんから、ズルをしようと思えばできるのです。

そこで、ペットボトルの場合はもう一つの換金方法が存在します。それはペットボトルの本数を数えること。インドネシアの飲料水用のペットボトルは小さいのが600 ml、大きいのが1,500 mlです。600 mlのは10本で1,000ルピア、1,500 mlのは3本で1,000ルピアで取引されます(2025年1月現在)。

1キロあたりもしくは数量あたりの取引額はときどき変動します。ですので、業者さんと売り手である義母はしょっちゅう口論していました。

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2020年に義母が亡くなってからも、我が家では空のペットボトルを売っていました。外まで出て回収することはしませんが、家で誰かが飲んだ後のペットボトルをそこらに捨てたくないからです。

私の住んでいるところではゴミ回収こそあるのですが、ほぼすべてのゴミがなんの分類もされないまま回収されます。あとはゴミ埋め立て山へ持っていかれ、ドンと積み上げられるだけ。

郷に入っては郷に従え方式で、様々なことをこちらのやり方に合わせている私も、さすがにこれには抵抗感がありました。なので、生ゴミをコンポストにすることと、ペットボトルや段ボールなどの資源ゴミの回収に参加することだけは自分でするようにしました。

しかし、困ったことが一つ。それは交渉です。私たちの村をよく巡回している資源ゴミの業者さんは2人いました。仮にこの2人をAさん・Bさんにしましょう。義母とのやりとりから、私はAさんがよく「ちょろまかす」ことを知っていました。当然、Bさんと取引したくなります。なのに去年からBさんを見かけなくなったのです。うーむ、どうしよう。

取引額が変動するのをいいことに、さも当然のように低い金額を提示してくるAさん。フンッ、私だって相場は押さえているんだからね!と反論しても、なぜかうまい具合にAさんのペースになってしまいます。

それに、Aさんのせいではないのですが、なかなか会えません。袋がいっぱいになったタイミングで売りたいのになぁ。

近所の方々に尋ねまわって、やっとKARUNG(袋)を売っている店で耳寄り情報を得ました。隣村のCさんの家に持っていくと、引き取ってくれるのだそう。もちろん、重さを量って換金してくれます。やったー。

さっそくCさんの家へ。2袋分あったので、事前に本数を数えてメモし、娘に頼んで二人でペットボトルを持っていきました。

本数を数えて、いざ持ち運び

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