ロンボクだより(114):ロンボク島のお菓子教室(岡本みどり)
〜『よりどりインドネシア』第175号(2024年10月9日発行)所収〜
皆さん、こんにちは。日本は少しずつ涼しくなってきたと聞きました。みなさんのお住いはいかがですか。ロンボク島は雨季到来。毎日ではありませんが、大雨が降るようになりました。今回は、まだ雨季がくる前の先月に、青空のもとでおやつ作りを教わったお話です。
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前回の『ロンボクだより』でお話した、イネさんが亡くなりました。
前日までいつもどおりに庭のテラスに腰掛けていたのに、その日の朝起きてこなくて、お昼に娘さんが「(お昼の)お祈りの時間だよ」と声をかけたときには、もう亡くなっていたのだそう。
翌日がお葬式で、その日から9日間、喪に服することになりました。
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そうと決まれば、はい、お手伝い。9日目が一番大きな法事となり、お葬式に間に合わない遠方の親戚も集まります。100人以上でごはんを食べるので、村の女性たちは6日目から少しずつ料理やお菓子を作ります。
同時に男性たちは薪になる木や食材のココナッツなどを山や畑へ取りに行ったり、竹で会場を作ったりします。
今日は7日目。私達は、二手に分かれて作業をしていました。
私はイネさんの家の前でジャックフルーツの若い実を下処理するグループです。このジャック・フルーツの未熟な実はまだ甘くないので、あとでスパイスを合わせて煮込みます。
一口大にしたいのですが、切り口から白くネバネバした液体がながれてきます。手はもちろん、包丁にもこのネバネバがついて厄介なことになるため、包丁や手に食用油を塗りたくります。こうするとネバネバが後でカンタンに洗い落とせるのです。
さて、もう一方のグループはイネさんの家の隣の敷地(ここもイネさんちの親戚)で、ココナッツの下処理をしていました。
ココナッツは一番外側にある外果皮と、繊維質の分厚い中果皮を剥くのが力仕事で、こちらは男性が行います。それが終わると硬い焦茶色の殻(=内果皮)が見えます。この殻は加工すると、ココナッツのお椀や小さなお皿、スプーンなどになります。が、今回は女性陣にかち割られて、砕け散る運命です。ハンマーやナタで叩き割って、ヒビが入ったところから包丁の刃をいれて、さらに内側の白い果肉部(胚乳)と分けます。これもけっこう時間も労力もかかる作業です。
ようやっと取り出せた胚乳を削って乾燥させているのがココナッツフレーク。ですが、今日は乾燥させずに削ってすぐの瑞々しい状態のままで使います。
削ったココナッツの用途は多彩ですが、今日はお菓子を作るのだそう。何をつくるのかなぁ。
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ジャックフルーツを切リ終え、隣の敷地へ行くと、今までに見たことのない生地ができあがっていました。茶色くてドロドロというよりトロトロの、かなり柔らかめの生地です。
「何作ってるの?」
「これは、トゥンバッ(tembakまたは tumbak)というお菓子だよ」
「ロンボクのお菓子?それともインドネシアのお菓子?」
「ロンボクのお菓子だよ」
ここから即席でロンボクお菓子教室がはじまりました。村のお母さんたちが先生です。生徒は私と子どもたち(笑)。
材料は米粉(もち米を使うところもあるとか)、グラメラ(椰子砂糖)、塩、削りたてのココナッツ。これを混ぜて水を加え、耳たぶよりもう二回りほど柔らかい生地を作ります。
その生地をバナナの葉っぱで包みます。葉っぱの真ん中に生地を乗せたら、左右の葉っぱをそっと中央に寄せ、次に下を折り、最後に上を閉じます。
思っているより少なめの生地を葉っぱに乗せないと、最後に包んだときに上から漏れてきます。また、生地が多いのに強引にバナナの葉っぱで包もうとすると、葉っぱの繊維にそって、パキッと葉っぱに亀裂が入ります。そこからも生地がでてくるので、やり直し。
私のたどたどしい手つきをみて、イネさんのお姉さんが「こっちによこしな」とジェスチャーで伝えてきました。
「ほれ、こうして、こうして・・・こう」
お手本を見せてくれました。包むときに空気を抜くのがコツのようです。
フムフム・・・と、そのとおりにしても、なぜかできないんですよねぇ。見ているだけなら誰にでも出来そうなのになぁ。イネさんのお姉さんは「ダメだこりゃ」という顔で、私に別の係を命じました。葉っぱに包まれたお菓子をカゴに並べる係です。これならできそう!
合間合間に写真を撮っていると、イネさんのお姉さんから、どうして写真をとっているのかと尋ねられました。
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