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“つながり”でできた、“つながり”を生むZINE。

「文学フリマ京都9」に向けたZINEづくりは、まず自分自身を追い込むことからはじめた。あまやかすとすぐに逃げ出す、そんな自分の性格をよく理解しているからだ。SNSのアカウント名に「文学フリマ京都9に出店」と付け加え、出店表明をポストした。「この時点で、進捗ゼロ」と書かれたそのポストは、おおげさではなく、事実。実は、はじめに思いついたアイデアは、あまりにも時間がないため、ボツにした。そこから、頭のなかにふわっと思い浮かんだわずかなアイデアをつかまえながら、ZINE制作の道標となる台割を必死で書き上げた。「8ページぐらいのZINEなら、まだ間に合うから大丈夫だよ」と言ってくれたのは、オンラインサロン「京都くらしの編集室」の主宰者・江角悠子さんだが、自分がつくった台割の最後には「34ページ」と書かれていた。経験者が見れば無謀に思えるページ数のZINEも、台割をつくったことで、はっきりと見えたのだ。自分のZINEが「文学フリマ京都9」のブースに並んでいるイメージが。

ただ、今回のZINEは、自分ひとりでは完結しない。7名のインタビューを収録しようと考えていたのだ。だれもが忙しくしている年末に、それも突然インタビューのお願いをするのはためらいはしたが、立ち止まる時間はなかった。話を聞きたいと考えた7名に、インタビュー依頼のメッセージを送ると、なんと全員が快諾してくれた。その瞬間、「進捗ゼロ」だったスケジュールは、一気に動き出した。「絶対に完成させる!」という気持ちが強まる一方、不安も同居していた。12月19日から26日にかけて、7名へのインタビューを実施。快諾してくれたみんなから、「楽しみにしています」「がんばってください」と、ありがたい言葉をもらった。自分のまわりに、こんなにもやさしく、あたたかな人たちがいる幸せを実感した。けれども、大変なのはこの後だった。インタビューの内容を整理し、1ページごとの文字数制限に合わせてまとめる作業は予想以上に難航。紅白歌合戦を観ながら「ウルトラソー!」「ハイ!」と叫び威勢よく書き終えたのは、最初の1ページだけだった。入稿締切は1月8日15時。いよいよ時間がなくなっていた。

お正月も、ZINEの制作に明け暮れた。原稿執筆、レイアウト、デザイン、すべてを自分で進めなければならない。ここまで大変なことになるとは。「なんで参加したいって言うてしもたんや……」そんなことすら脳裏をよぎる自分が信じられなかったが、それぐらい過酷だったのだ。入稿締切の3日前になっても、50%にも満たない進捗。何度も心が折れそうになったが、自分で書いたインタビューを読むと、勇気が出た。「絶対に完成させる!」無我夢中で走り続けた。入稿締切の1月8日、ついに印刷会社へデータ送信。想像を絶する、高揚感。駅伝を走り終えた選手がその場に倒れ込むかのように、机に突っ伏した。

こうして完成した、自分にとって初のZINEが、『書く、話す、つながる。 』だ。これは、「書いて、しあわせになりたい」と思っている人に向けたガイドブック。オンラインサロン「京都くらしの編集室」の定番コンテンツのガイドや、主宰者・江角悠子さんに加え、オンラインサロンのメンバー、元メンバー6名へのインタビュー、コラムを収録している。「文学フリマ京都9」に出店するほかのメンバーがエッセイや小説を執筆しているなか、「自分のは、ZINEではなく、オンラインサロンのパンフレットなのでは……?」そう思う瞬間もあったが、自分が大好きなものを詰め込めるのがZINEなのだとすれば、自分にとってもっともふさわしいテーマのZINEができたのではないか。“つながり”でできたこのZINEが、新しい“つながり”を生む一冊になるかもしれない。そんな願いを胸に、1月19日、「文学フリマ京都9」の会場へ向かうのだ。


文学フリマ京都9

  • 開催日時: 2025年1月19日(日)11:00〜16:00

  • 会場  : 京都市勧業館みやこめっせ

  • 入場料 : 無料

  • 詳細情報: https://bunfree.net/event/kyoto09/

京都くらしの編集室

『書く、話す、つながる。』 ー “書いて、しあわせになる”と決めた人のためのガイドブック ー

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