■要約≪マネジャーの教科書≫
今回はハーバード・ビジネス・レビューの「マネジャーの教科書」を要約していきます。本書はマネジメントに関する優れた論文11選をまとめた内容となっており、新任マネジャーの心得やマネジャーのスキル・育成方法・上級管理者への移行にあたるマインドセットの変容などについて言及されています。
「マネジャーの教科書」
■ジャンル:経営学
■読破難易度:低~中(大概は自分の仕事ぶりや周りの事例を参照しながら棚卸して理解を深めることが出来る内容なので、読みやすいです。)
■対象者:・組織マネジメントに関するトレンド・要諦を学術的に理解したい方
・様々なマネジメントレイヤーにおける要点を抑えたい方
≪参考文献≫
■90日で成果を出すリーダー
■要約≪90日で成果を出すリーダー≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■組織行動のマネジメント
■要約≪組織行動のマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪組織行動のマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■マネジャーの実像
■要約≪マネジャーの実像≫前編 - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪マネジャーの実像≫後編 - 雑感 (hatenablog.com)
■経営者になるためのノート
■要約≪経営者になるためのノート≫ - 雑感 (hatenablog.com)
【要約】
■新任マネジャーの躓きポイント
・部門の専門家として個で成果をあげるスタイルから総合的な視点で意思決定・組織の成果にコミットメントするというキャリア移行の難しさに躓くマネジメントは多いとされます。「管理職の権威は絶対的なものである」というのが第一の誤解とされます。社外のステークホルダーや社内の別部門のマネジメントなど自分が統制しようのないアクの強い人材との折衝がついてくることにびっくりする点もキャリア移行期初期によくある流れとされます。
・マネジメントで成果を上げる上においては「権力はそこまでなく、信頼や影響力による間接的な人・コトマネジメントが必要である」という絶対感覚があるとされます。まっとうに行動することを示すのが信頼獲得の近道であるのですが、それよりも積み上げた実績や成果を出すのに拘ろうとする過ちが新任マネジメントのバランス感覚を狂わせる正体とされます。マイクロマネジメントは外向けには専門性にかまける人材というシグナルに移り、信頼に足らないと判断されることが多いようです。
・大概のマネジメントは目の前の仕事に忙殺されチェンジエージェントとしての役割まで手が回らない、軽視することが大半とされます。戦略策定やリソース投下のベクトルを見誤らない為にはステークホルダーと継続的に対話・関係構築をすることが必要悪であり、チェンジエージェントのテーマをどれだけ継続的に割くことが出来るかがマネジメントとしての組織成果・労働生産性に直結するとされます。
■心の知能指数「EQ」の重要性
・EQは優れたリーダーやマネジメントに絶対感覚であり、マネジメントスタイルの違いはあれども秀でているマネジメントやリーダーはみな高いEQを持ち合わせているとされます。EQは主に自己認識・自己統制・モチベーション・共感・ソーシャルスキルの5つの要素で構成されます。EQは先天的なものが半分程度で、残り半分は後天的に経験や年齢とともに身につくものとされています。本人の強い意志により変革を自ら牽引していくことである程度後天的に身に着けることはできるようです。
・EQの第一要素の自己認識は自己理解・客観視するなど自分のメンタルモデルへの解像度に寄与します。これは自分の現実を直視する・感情に素直になる力が必要とされます。自分の限界や長所を理解しており、自分のダメなエピソードを笑い飛ばせるような寛容さがシグナルとされます。心の中の対話とも呼べる自己統制も重要なEQの要素であり、自己統制は組織を良い方向に感化し、生産的な議論や活動を促進する間接的な影響力の源泉にもなります。「名誉や報酬ではなく仕事で高い成果を上げるという達成感が原動力」の人はモチベーションが高くなるとされ、重要なEQの要素とされます。「優秀な人材を惹きつける」・「組織に対する高いロイヤリティを示す」などがEQにおける共感の重要なポイントとされます。
■マネジャーの時間管理法
・マネジャーの時間は上司に対応する時間・組織に対応する時間・自分自身の時間(部下に対応する時間・自由裁量の時間)の3つで構成されます。「部下に対応する時間を最小化して、自由裁量の時間で仕組みを構築したり機会を追求できるように工夫できるか」がマネジメントの生産性に大きく寄与するとされます。マネジメントは部下のレポート・仕事の監査をする訳ですが、そこに忙殺されて主導権を部下から引き離すという事態にならないようにして自分の手元をあけるように工夫していくのが望ましいとされます。詳細な指示と手順・納期を示して部下に仕事をしてもらうように管理する・その関与の度合いや成功基準の定義については習熟度や職務要件を考慮してやり繰りするのが基本の考え方です。
■マネジャーから事業リーダーへの移行に関する要諦
・事業リーダーになるための7つの変化は「スペシャリストからゼネラリストへ(部門横断のメンタルモデルや用語に精通すること)」・「分析者から統合者へ」・「戦術家から戦略家へ」・「レンガ職人から設計者へ(仕事の秩序やシステムを構築することで大きな成果を出す)」・「問題解決者から課題設定者へ」・「兵士から外交官へ」・「脇役から主役へ」とされます。
・自分が明るい部門や職務範囲に関してマイクロマネジメントしようとして安定化を図るのはよくある昇進や環境変化に対するストレス対応の行動のようです。横断的な視点を養うために、様々な利害関係者と折衝する経験や様々な事業フェーズに関わる経験を意図的に積んでもらうジョブローテーションを経営幹部候補人材育成に課すことはよくある人材育成の流れとされます。
【所感】
・組織マネジメントに関する本では必ず言及される人・コトマネジメントや戦略策定・課題設定・リーダーシップなどのスキルセット・思考プロセスを追体験できるような非常にわかりやすい内容になっており、定期的に読み返して内省を深めるに格好な教材と思えました。
・ドラッカーの「マネジメント」やミンツバーグの「マネジャーの実像」などこの手の分野には古典と呼ばれる何度も読み返して棚卸すことで学びが深まる書籍が何冊かありますがその一冊に価する内容かなと感じました。自分が経験を積み上げて定期的に立ち返るべき本と思えたのでまた読み返したい次第です。
以上となります!