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内閣の衆議院解散権

石破茂新総理が衆議院の解散について「新しい内閣が発足したら国民の信をとう」と言及をしました。解散は総理大臣の専権事項なので国民に信を問うべき理由があれば、党利党略による批判はあるもの野党が騒ぐことはないはずである。ただ、今回の解散について石破総理はかねてから、不信任の決議の可決や信任決議の否決によらなければ解散すべきではない旨の発言をしていた。そこに野党からの批判が出ているようなので、内閣の衆議院解散権の根拠について考えてみたいと思います。

憲法における衆議院の解散権

日本国憲法では衆議院の解散について、憲法69条に「内閣は、衆議院で不信任の議決案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と規定されている。内閣による行政の執行に対して衆議院の信任が得られなくなった場合の対抗措置として、内閣における解散権が認められているのである。では、今回の様に国会から信任を得られない訳でないにも関わらず解散するのは何が根拠になるかというと、憲法7条の天皇の国事行為となる。7条には天皇が行う国事行為が挙げられ、7条3号に「衆議院を解散すること」と明記されている。ただし、天皇は国政に関する権能を有しない(憲法4条)ので、内閣の助言と承認が必要となる。つまり、内閣は政治状況に鑑みて天皇への助言と承認によって憲法69条に縛られることなく解散を行うことができる。

これまでの解散

憲法には7条と69条の2つの解散かま規定されているが、戦後行われた25回の解散のうち69条の内閣不信任による解散は4回しか行われておらず、その殆どが内閣の政治状況による判断の7条解散となっている。
内閣不信任による解散
昭和23年12月23日 第2次吉田内閣「馴れ合い解散」
昭和28年3月14日 第4次吉田内閣「バカヤロー解散」
昭和55年5月19日 第2次大平内閣「ハプニング解散」
平成5年6月18日 宮沢内閣「嘘つき解散」

総理大臣による恣意的な解散権の制約は?

総理大臣の専権事項と言われる衆議院解散は、憲法上は「内閣」の助言と承認が必要とされているものの内閣を任命したり罷免する任命権を総理大臣が持っているために「総理大臣の専権事項」と言われている。憲法上は解散権に対して制約は規定されていないため総理大臣による恣意的な解散も可能となっている。

おわりに

これまで解散権について7条による解散を疑問視してきた石破総理が7条による解散権を行使するということで野党から批判が出ているため、せっかくの機会なので衆議院の解散権について話題にしてみました。学説上は以下の制約があると考えられているが、実際にはこれらの要件に該当しない解散が常態化している。総理大臣たる者が極めて恣意的な解散はしないだろうがこういった観点から憲法改正について考えてみるのも良いかもしれない。
学説上の制約
・衆議院で内閣の重要案件が否決され又は審議未了になった場合
・政界再編等により内閣の性格が基本的に変わった場合
・総選挙の争点でなかった新しい重大な政治的課題に対処する場合
・内閣が基本政策を根本的に変更する場合
・議員の任期満了が接近している場合

おまけ

個人的にこのタイミングでの解散は賛成ではあるが、石破総理の持論や総裁選て訴えていた解散のタイミングと今回の解散についてある程度説明は必要かなと思う。総理は解散について嘘を言ってもいいというのを拡大解釈してこれまでの発言は全て嘘でしたはないだろうけど…


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