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【読書メモ】『カフネ』阿部暁子

 決して楽しい話ではなかった。でも引き込まれて一気に読んでしまった。
 最愛の弟を亡くした女性が、弟の元恋人がやっている家事代行ボランティアを手伝ううちに亡き弟の輪郭がはっきりしてくるあたり、ミステリー小説の謎解きのような面白さがあった。
 どんなに親しくても、たとえそれが夫婦や親子であっても、聞きたいこと・言えないことは、ある。伝えた先に広がる関係性があるという希望と、真実がかえって相手を傷つけることになる恐れと、諸々含めて人には真摯でありたいと思う。自戒を込めて。
 タイトルの「cafuné」はポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」という意味らしい。日本語には訳しづらいね。お隣のスペイン語でもいい訳語が見つからなかった。

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