『夢の浮橋』谷崎潤一郎
谷崎が愛した京の家という見学会に参加することになった。谷崎は「潺湲亭(せんかんてい)」と呼び、今は石村亭と呼ばれている、下鴨神社の近くの住宅。というか、邸宅。
そこが舞台の小説が『夢の浮橋』ということで、それならば、見学前に読まなければ!となって、檸檬の丸善(BALの地下)に買いに行った。
中央公論新社の文庫を買ったのだけど、「夢の浮橋」のほかに、「親不孝の思い出」、「高血圧症の思い出」、「四月の日記」、「文壇の昔ばなし」が納められている。
潺湲亭(せんかんてい)をよく知るという意味では、夢の浮橋と共に、高血圧症の思い出も、読み応えのあるエッセイだった。
夢の浮橋は、なんというか、ちょっと「閉じた世界」の話で、母への愛、そして母から子への愛が異様な話。真綿で包まれたような、ぞわっとする世界観。春琴抄なども閉じてはいると思うんだけど、妖しさと危うさがあって、なんというか破滅的が故に綺麗な感じなんだけど、夢の浮橋はもっと安定していて、仄暗い感じがある。
正直、このお話の舞台の邸宅というと、見学したくなさもある。その閉じた世界を邪魔しに行く存在でしかないので。
そんな後に、高血圧症の思い出を読むと、谷崎がそこでどう暮らしてきたか分かるので、私はそちらの方が、興味深く読めた。(内容が体調が悪いという話なので、面白がってしまうのも、申し訳ないような気がするけれど、、、)
この建物で書かれた、細雪(の最後の方)、少将滋幹の母、源氏物語の翻訳、はいずれも高校生の時に読んだけれど、お酒も飲んだことなければ関西に来たこともなく読んでいたわけで。近々、もう一度読み直してみようと思った。
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