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動きを覚えるプロセス

ブラジリアン柔術には、さまざまなテクニックがあります。さて、テクニックはどのようにして身につき、上達するのでしょうか?基本的には、繰り返せば身につきます。それをもう少し詳しく紹介します。

地味な内容なので、最近話題のV6 岡田准一さんの「室内でできる運動」と無理やり関連づけて書きました。

岡田准一さんの横回転

この動画がずいぶんと話題になりました。

これはブラジリアン柔術の基本運動のひとつで、横回転や横周りと呼ばれます。日常にない動きなので、初心者がいきなり試してもあまり上手くいきません。ネット記事でも「難しすぎる」「やってみたけど正面に戻らない」「首が折れそう」とツラそうな体験コメントが載っていました。

確かに難しいのですが、首に故障がないなら、大抵のひとは1–2週間でできるようになります。ただし、闇雲にやると首を痛めるので、ブラジリアン柔術の道場に行って、インストラクターに習うことをお勧めします。

Fittsの3段階

さて、横回転のような新しい身体の動きやテクニックはどのように身につけていくのでしょうか?Fittsは、意識のレベルが異なる3つの段階を経て、テクニックやスキルが身につき、上達すると述べています (Fitts, 1964)。意識のレベルとは、個々の動作をどのぐらい言葉できたり、頭に思い浮かべたりするかを指します。この段階は順に、認知段階、結びつけ段階、自動段階と進みます。

認知段階では、身体のどこを、いつ、どうやって動かすのかの内部モデルをつくります。柔術テクニックの習得なら、技の手順をひとつずつ覚える段階になります。この段階では、ひとつひとつの動作が言葉にできるようなレベルでハッキリと意識されます。ひとつずつ手順を踏むのでゆっくりとしか動けません。しかもあまり正確にはできません。

岡田さんの動画を見て横回転を試した人は、この段階でうまくいっていないことが多いのではないかと思います。適切な内部モデルを作るには、丁寧なインストラクションや詳細な見本が必要になります。岡田さんの動画だと少し短すぎるかもしれません。

結びつけ段階では、内部モデルに従い、試行錯誤して訓練を繰り返します。柔術ならば、打ち込みをして動きを体に染み込ませていく段階です。訓練を繰り返すと、間違いを修正でき、動き自体にも慣れてきます。そして動きがだんだんスムーズになります。細かな修正はこの段階で行うのが効率的です(認知段階で細かすぎるのは良くない)。一般に、認知段階より、結びつけ段階に長い時間がかかります。

そして、自動段階になると、動き自体を意識しなくともスムーズにその動きやテクニックができるようになります。身体が勝手に動くようになり、個々の動作に意識を払う必要がなくなります。

自動段階では余裕があるので、周囲の状況を見極め、適切なテクニックをタイミング良く使えるようになります。柔術の技ならば、試合やスパーリングで使えるようになってきます。逆に言えば、この段階にならないと、自分の動きをコントロールするので精一杯で、状況に合わせて技をかけることがなかなかできません。これが初心者の技が掛からない理由の一つです。

横回転から見た3段階

横回転の身につけ方について、上の3段階から改めて考えてみましょう。認知段階では、内部モデルをつくります。具体的には、以下の動画にあるようなインストラクションから、ひとつずつ手順を意識し、身体の動きに対応させながら身体の動かし方の工程表を作る感じです

続いて、結びつけ段階です。ここでは内部モデルに従って、あれこれ試行錯誤します。実際にやってみると、横に回るつもりが前転したり、後転したりします。そのような失敗を徐々に修正し、すこしずつスムーズに動くようにする。さらにそれを繰り返すと、動き自体にほとんど意識を向けずともキレイに横回転ができるようになります。ここまでくると自動段階に到達というわけです。

ひとによって違いますが、最初は出来なかった横回転も、1-2週間すると形ができてきます。こうなると結びつけ段階まで進んだと考えられるでしょう。さらに練習をつめば、もっとスムーズにできるようになります。このように、認知、結びつけ、自動の3段階を経て、横回転が上達し、自分のものとして身について行きます

引用文献

Fitts, P. M. (1964). Perceptual-motor skill learning. In Categories of human learning (pp. 243-285). Academic Press.


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