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9ヶ月の格闘技で子供の体力はどのように伸びる?

子供の習い事として格闘技は人気があります。体力がつくだけでなく、礼儀が学べる、護身術になるなど副次的な効果も期待されているからでしょう。その辺の話は前に別のノートで書きました。

さて、格闘技をやるとどのくらい体力は伸びるのでしょうか?

柔道とキックボクシングは心肺機能を向上させる

Saraivaa は、ブラジルの子供達に、ソーシャル・プロジェクトとして、9ヶ月間、柔道とキックボクシングの練習に参加してもらいました(Saraivaa et al., 2022)。なお、比較のため、コンピュータなどを学ぶ子供たちもいました。

ソーシャル・プロジェクトとは恵まれない子供達を対象に社会貢献を目指して行われる活動です。柔道ではリオ五輪金メダルのハファエラ・シウバはこういったソーシャル・プロジェクトで柔道を学んだことが知られています。柔術でもジャクソン・ソウザがテレレのソーシャル・プロジェクトで柔術を始めたことは有名ですね。

9ヶ月、週2回60分の練習に子供達は参加しました。20分がウオームアップと補強運動、20分がテクニック、最後の20分にスパーリング(実践練習)をしました。なお、キックボクシングでのスパーリングは、コーチとのマススパーでした。

柔道とムエタイをやった子供たちは、9ヶ月後、心肺機能が上昇していました。ただし、シャトルランのようなパフォーマンスについてはあまり差がありませんでした。なお、コンピュータを習っていた子供たちは、むしろどちらの成績も低下してしまいました。

心肺機能が上がると、長く運動を続けることができます。体を動かす基礎が、格闘技を学ぶことで身につくことがこの研究からもわかります。

コロナ禍で体力は落ちている

コロナ禍で子供の体力は落ちています。スポーツ庁が実施する「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」はそれをハッキリと示しています。皆さんも、小学校や中学校の頃、4月に体力テストをやったのではないでしょうか。50 m走やハンドボール投げ、前屈など様々な種目があったのを覚えていると思います。この調査には、この体力テストを全国で集計したものが含まれています。

下の図に、小学生、中学生の体力テストにおける全ての種目をまとめて得点化したものの変化を示しました。令和元年(2019)と令和3年(2021)でガクッと得点が落ちていることがわかります。コロナ禍により、子供たちの体力が如実に落ちたことがわかります。

スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」における体力得点の経年変化

さらに昨今の物価高もあり、多くの家庭で子供の習い事を減らしているようです。濃厚接触を避けるためにやめていたのが、コロナ初期。最近は経済的な理由です。住友生命の今年の調査によると家計が理由で40%の家庭で習い事をやめたそうです(住友生命相互保険会社, 2022)。スイミングなどは定番の習い事でしたが、だいぶ生徒さんが減っているそうです。習い事が減るのも子供の体力低下に影響しているかもしれません。

格闘技は安く、楽しく、親子で学べる

日本では、格闘技を非常に安価で格闘技を学べる教室がたくさんあります。子供のクラスはとてもたくさんあるので、ぜひ、興味のある方は試してみると良いと思います。体力は全ての基本なのであるに越したことはないですよね。

格闘技は、子供だけでなく大人体力向上にも役立ちます。親子クラスなどがある道場、教室もあるので、検索をしてみるのも良いかもしれません。様々な技術レベル体格で一緒に練習できるのが、格闘技の良いところです。親子でやれば、家庭内のコミュニケーションも広がりますね。

引用文献

・住友生命相互保険会社 (2022). スミセイ「わが家の台所事情アンケート」 https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2022/221109.pdf

・Saraiva, B. T. C., Ritti-Dias, R. M., Scarabottolo, C. C., da Silva, A. L. F., Tebar, W. R., & Christofaro, D. G. D. (2022). Effects of nine months practice of martial arts on aerobic fitness in children and adolescentes. Science & Sports.
スポーツ庁 (2021). 令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922_00003.html


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