声援でパフォーマンスは向上する
最近になってブラジリアン柔術の試合も入場制限なしで開催されるようになりました。私も先日マリアナス・プロ・ジャパン2023に出場しました。この大会には、海外からの参加者も多数。熱い声出しでの応援もあり会場はとても盛り上がっていました。すっかりコロナ前の雰囲気でしたね。上の写真がその様子です。
声援はパフォーマンスを高める
私も今回試合に出て、セコンドに助けられました。具体的な指示はもちろんのこと、仲間からの声援を聞くと、もうひと踏ん張りが効いたように思います。
声援の効果を調べた研究は多く、例えば、Engelたちは、バーベルスクワットなどパワーの測定や、サーキットトレーニングのような持久力に与える効果を調べました(Engel et al., 2019)。声援があるとわずかではありますが、スクワットの最大重量(1RM)を更新することができました(およそ2%の統計的に意味のある増加)。持久力には効果がありませんでした。ただ、ジョギングにおける効果を検討した研究では、声援によって長く走れるようになったり、最大酸素摂取量が増えたりすることが示されたこともあります(Moffatt et al., 1994)。
これまでの研究をまとめたメタ分析でも、声援がスポーツのパフォーマンスを概ね向上させるという結果が出ています(McCormick et al., 2015)。
ただ、条件がいくつかあるようです。ある程度の頻度(20-30秒に1回)が必要ですし、競技・競争場面でないと効きにくいようです。例えば、Obmińskiは、柔道選手のグリップの強さに声援が与える効果を調べました。握力計での測定中、声援をする場合と、しない場合を比較しましたが、声援の効果はありませんでした。なんか場面を想像するとちょっと滑稽ですよね。
実際の様子
声援の効果をかなりリアリティのある場面で検討した実例があります。デモンストレーションとしてはかなり面白く、とても見やすくなっています。高校生のハンドボールの試合で、前半は応援なし、後半は学校中のみんなが応援にきてくれる。前半と後半ではどのように違うかを調べたものです。劇的に変わるんですね。
応援がある後半では、走行距離が増えたり、ステップ数が増えたり、最大心拍数が上がったりしました。後半の方が疲れているのに、長く走ったり、細かくステップを踏んだりできるようになる。これが声援の力です。
あと、声援があると、とにかく盛り上がりますよね。楽しい。上の動画でも雰囲気がまるで違います。選手たちも格段に応援があると楽しそうです。ブラジリアン柔術の試合も声援があることで盛り上がり、会場全体がポジティブな雰囲気に包まれます。そして、出場する選手はその声援を受け、より一層素晴らしいパフォーマンスを発揮するのです。
引用文献
・Engel, F. A., Faude, O., Kölling, S., Kellmann, M., & Donath, L. (2019). Verbal encouragement and between-day reliability during high-intensity functional strength and endurance performance testing. Frontiers in physiology, 10, 460.
・McCormick, A., Meijen, C., & Marcora, S. (2015). Psychological determinants of whole-body endurance performance. Sports medicine, 45, 997-1015.
・Moffatt, R. J., Chitwood, L. F., & Biggerstaff, K. D. (1994). The influence of verbal encouragement during assessment of maximal oxygen uptake. The Journal of sports medicine and physical fitness, 34(1), 45-49.
・Obmiński, Z., & Mroczkowska, H. (2015). Verbal encouragement does not improve maximal isometric hand grip strength. Journal of Combat Sports & Martial Arts, 6(2), 63–66.
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