
数学花壇 〜放物線編②〜
エピソード2:名が先か?式が先か?
理由も何もこういう曲線を放物線というって習ったんだよなあ。
でもそんなこと言ったら地雷を踏みそうだし。なんて答えたら・・・。
ここは放物線という言葉から・・・
物を投げた時に、その物が描く曲線のように見えたからです。
「ほほう。物?投げる?ふーむ。わしの見せた点が作り出した曲線はそう見えたかのう?(放物線編①後半参照)どんな物をどんな風に投げたらそう見えるかのう?」
どんな物?どんな風に?雰囲気で答えただけなんだよなあ。
物はなんであれ、見せてもらった曲線の通りに投げる方が難しい。どうしよう。なんて答えよう。こうなったら・・・
砲丸投げです。この間動画で偶然見ました。
「ほほう。ならその砲丸投げを検索してみるかえ。いつのじゃ?」
検索?!この爺さんなら何て答えても映像が出せそうだ。まずいまずい。どんな砲丸投げでも、見せてもらった曲線とは上下逆さまなはず。適当に3日前ですって答えたところでアウトだ。ん?待てよ。上下逆さまってことは・・・
この間偶然見たっていうのは逆立ちしながら見たんです。
「ほほう。面白い!おぬしは逆立ちしながら動画を見るのかえ。すると逆立ちして見た曲線はこうは見えなかったんじゃな?はっ、はっ、はっ。」
目の前に突然グラフが出てくるのにはまだ慣れない。
ただ、なんとか問答を切り抜けられた気がしてほっとする。
そ、そうなんです。こうは見えませんでした。
「はっ、はっ、はっ。」
ははは。
「おぬし逆立ちして見ておらんじゃろ。」
いえいえ、確かに逆立ちして見ました。
「ならば実際に試してみるがよい。おぬしの脳はおぬしが思っている以上に賢いはずじゃ。」
えっ、逆立ちしても上下逆さまに見えない?そうなの?なんで?・・・ひとまずここは正直謝っておこう。
す、すいません。また怒鳴られてしまうんじゃないかと思って、無い知恵を絞りました。
「ふむ。知恵を出したところは評価しよう。わしらがこの世界で物を投げて観察できる多くは、上に凸の曲線じゃ。」
は、はい。
「おぬしは、わしが放物線という言葉を使わないから警戒しているんじゃろう。よし、ここで一つ曲線の名前を求めてみよう。
曲線の名前?ということは、放物線は名前じゃないってこと?
「点F (1, 0) からの距離と直線L : x=-1 からの距離が等しい点Pの集まった図形の式を求めてみよ。」
これなら解けそうだ。
こ、こんな感じでしょうか?
「ふむ。求めた式はよい。しかし一ヶ所詰めが甘いのう。どこかわかるかえ?」
えっ、どこだろう。。。結構自信あったのに。
す、すいません。わからないです。
「まあよい。あとにしよう。これでこの曲線の名前がわかったのう。次は苗字じゃな。」
名前?苗字?何を言っているんだ、この爺さんは?
「放物線は英語で何ていうか知っておるかのう?」
英語?気にしたことなかった。何て言うんだ?
不勉強です。知りません。
「ふむ。正直でよき。放物線は parabola と言う。パラボラアンテナのパラボラじゃ。」
ああ確かにパラボラアンテナは放物線のように見える!パラボラって放物線のことだったんだ!
「しかし、放物線はparabolaというが、parabolaは放物線にあらず。」
えっ、今なんて言ったんだ?!放物線はparabolaだけど違う?
ど、どういうことですか?
「放物線とはparabolaを訳した言葉であって、parabolaは歴史を遡ると『一致する』という意味を持っとる。」
一致する?物を投げた曲線と一致するってことかな?
「違うのう。」
えっ、心を読まれた?
「正方形の面積が長方形の面積に一致するという意味の一致するじゃ。」
正方形の面積と長方形の面積が一致する?
「曲線上の点Pとx軸との距離を一辺とする正方形の面積と、そのときの点Pとy軸との距離を横の長さとする長方形の面積が一致するんじゃ。」
ん?!どういうこと?
エピソード3に続く。