【狂気のホームドラマ】石井聰亙「逆噴射家族」【原作小林よしのり】
石井聰亙が1984年に発表した破壊的ホームドラマ。レンタル落ちですが、背焼けもなく、比較的綺麗な状態です。再生も問題ないことを確認していますが、所詮はレンタル品ですのでその点はお含みおき下さい。
その後HDリマスターBlu-ray盤が出ましたが、これは最初に出たDVDのバージョンです。画質も、そのつもりでご覧下さい。
タイトルの「逆噴射」とは、映画が公開された2年前に発生した日本航空350便墜落事故から来ています。羽田空港に着いた旅客機が着陸寸前に機長が発狂し、マニュアルにない逆噴射を行って空港沖の海面に墜落、乗客24人が死亡、149人が重軽症を負った大惨事に由来しています。
この「逆噴射」は当時の流行語となり、監督の石井聰亙と原案・脚本の小林よしのりは、平凡な家族が狂気に囚われる「ホームドラマ」のタイトルとして採用しました。
石井聰亙が漫画家の小林よしのりと組んでホームドラマを作るというのは、意表を付いた企画でした。小林はまだ「ゴーマニズム宣言」を連載する前で、バリバリのギャグ漫画家だった頃です。石井と小林は同じ福岡出身で息が合いました。映画は、長年の苦労が実って憧れのマイホームを手に入れた一家が、マイペースな祖父(植木等)が同居してきたことでおかしな方向に歯車が動き出します。
てんで勝手な振る舞いをする家族に対し、ついに真面目人間の父親・勝国(小林克也)が逆噴射し、家の出口を全部塞いで一家全員のチェンソーやプロレス技が炸裂するバトルロイヤル・デス・マッチが始まります。
完全に漫画の展開ですが、石井聰亙は漫画と映画の違いをよく分かっており、漫画好きにも違和感がない? ギャグ映画に仕上げてます。
この映画が映画初出演の工藤夕貴が女子プロレスラーとアイドル歌手を目指している役を熱演。10代の工藤夕貴のレオタード姿が見られることも映画の人気に一役買っています。
60年代に数々のクレイジーキャッツ映画で主演した植木等が久々に破壊的コメディに出ましたが、お笑いと狂気は紙一重みたいな演技をしています。というより、往年のクレイジー映画はお笑い映画なのですが、主役の植木等はよく考えると狂人に見えます。監督はそこに注目したのでしょう。
ラストでせっかくのマイホームは影も形もなく破壊され、「平凡な家庭・幸せな家族」というものに対する監督の悪意が満ち満ちた映画です。
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↑プライムビデオ「逆噴射家族」