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【竹熊セレクト】「ホドロフスキーのデューン」「デューン/砂の惑星 特別BOX」
デビッド・リンチの「デューン/砂の惑星 日本公開30周年記念特別版 Blu-rayボックス〈2枚組〉」と、最初に「デューン」を企画したアレハンドロ・ホドロフスキーの「ホドロフスキーのデューン」のセット販売です。
1970年に「エル・トポ」でカルトスターとなったホドロフスキーは、ジョン・レノンの出資で「ホーリーマウンテン」を撮った後、60年代ヒッピーのバイブルとまで言われたフランク・ハーバードの大長篇サイケデリック・エコロジーSF「デューン/砂の惑星」の企画に着手しました。
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商業意識ゼロのガチンコのアングラ芸術家であるホドロフスキーが立てた企画は驚くべきもので、美術にH・R・ギーガー、主演にオーソン・ウェルズ、ミック・ジャガー、サルバドール・ダリ、絵コンテと衣装にメビウス。特撮は、当初ダグラス・トランブルでしたが面会したホドロフスキーに横柄な態度を取ったため、怒ったホドロフスキーはトランブルをクビにして、「映像の魔術師」と呼ばれたロバート・エイブルにオファーしました。
しかしホドロフスキーのイメージをそのまま映像化すると予算が100億円でも足りず、しかも上映時間が24時間という途方もない超大作になることが分かったため、企画は頓挫しました。「ホドロフスキーのデューン」は、そんな幻の企画を、関係者の証言をもとに描き出した傑作ドキュメンタリーであります。
ホドロフスキーは企画を売り込むため、自作のシナリオと、メビウスが書いた絵コンテを元に数百ページに及ぶ「企画書」を作ったのですが、あまりの超大作に乗って来る映画会社は現れませんでした。しかし、当時この企画書を見たのが「スターウォーズ」を作ろうとしていたジョージ・ルーカスです。ホドロフスキーの「デューン」は、数年早く「スターウォーズ」をやろうとしていたのです。
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企画が頓挫して、傷心のホドロフスキーがデビッド・リンチの「デューン」を観るくだりがあります。「イレイザーヘッド」でリンチの才能を高く評価していたホドロフスキーにとっては、自分の代わりにリンチが映画化したことで、観るのが怖かったと言いますが、観ているうちに映画の余りの出来の悪さに愉快な気持ちになったとニコニコと語っていました。
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そのリンチの「デューン」なんですが、確かにダイジェストみたいな映画で繋がりがよくないんですけど、私、結構好きなんですよ。全体の構成はともかく細部の絵作りはリンチでなければ撮れなかっただろうと思える作品です。
冒頭に登場するナビゲーターなんて、イレイザーヘッドの胎児みたいな気持ちが悪い姿でいかにもリンチですし、砂漠に棲む巨大ミミズも素晴らしい造形です。
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リンチが最初に完成させたディレクターズ・カットは4時間あったそうで、興行上の理由からこれを泣く泣く2時間17分に縮めたわけですが、こういう理由で駄作になってしまうことは映画界ではよくある話です。
このBlu-rayBOXの特典ディスクには、劇場公開版より50分長いロング・バージョンが収録されてます。編集はリンチではないので監督名がアラン・スミシーになってますが、公開版よりも話の繋がりが良くなってます。
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願わくば、監督によるオリジナル4時間バージョンを観たいものです。そしてホドロフスキーの「デューン」絵コンテ集もぜひ出版を。
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↑プライムビデオ「ホドロフスキーのデューン」