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ごんぎつねを読む③
ごんぎつねを読む②では、ごんと兵十のすれ違いと、両者の縮めることのできない距離について解説しました。
ここからは、新美南吉が仕組んだであろう"仕掛け"を味わってみます。
物語で、ごんは、自分が兵十に鰻をとっていたずらをしました。そして兵十の母親が死んだとき、そのいたずらが原因で鰻を食べられずに母親を失ったとのだと思います。
ここで、ひとりぼっちのごんは、兵十を憐れに思い、
「おれと同じひとりぼっちの兵十かぁ。」
と深く同情します。
その後、いわし売りが現れたので、いわしをまた盗んで兵十の家へ投げ込みました。これで、ごんは鰻の償いに1ついいことをしたと思い、とりあえず落ち着きます。しかし盗んで投げ入れたので兵十の家でいわしが見つかり、兵十がぶん殴られてしまい、逆に困らせる結果になります。
やはり罪を犯して他人に迷惑をかけている以上、償いとはならないのでしょう。
その後は、栗や松茸を持っていくようになり、罪を犯さない方法で償いをしていきます。
しかしながら、今度は一生懸命に償っても、加助に「それは神様の仕業だ。」と言われてしまい、自分であることは分かってもらえません。
ならばと、最後には明らかにわざと兵十に見えるような行き方で栗を運び、自分がやっていることを証明しようとします。
しかし、置く場面ではなく、置いた後の姿だけ見られたため、恨みをはらそうとした兵十に火縄銃で撃たれてしまいます。
この太字で書いた所に注目すると、ごんはどの場面でも兵十に近づこうとあの手この手を使っていますが、不器用さと軽率さが勝って結局全てが裏目に出てしまっています。
この立て続けに起こる残念な展開が、1つ"仕掛け"としてあります。
では、この繰り返される残念な出来事が、さらなる仕掛けとどのようにつながるのでしょうか。ここからが新美南吉の真髄とも言える部分になります。