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【美術展2024#77】塩田千春 つながる私(アイ)@大阪中之島美術館

会期:2024年9月14日(土)〜12月1日(日)

塩田千春(1972年生まれ)の出身地・大阪で、16年ぶりに開催する大規模な個展です。現在ベルリンを拠点として国際的に活躍する塩田は、「生と死」という人間の根源的な問題に向き合い、作品を通じて「生きることとは何か」、 「存在とは何か」を問い続けています。本展は、全世界的な感染症の蔓延を経験した私たちが、否応なしに意識した他者との「つながり」に、3つの【アイ】-「私/I」、「目/EYE」、「愛/ai」を通じてアプローチしようというものです。それぞれの要素はさまざまに作用し合いながら、わたしたちと周縁の存在をつないでいると考えます。インスタレーションを中心に絵画、ドローイングや立体作品、映像など多様な手法を用いた作品を通じて、本展が 「つながる私」との親密な対話の時間となることでしょう。

大阪中之島美術館


TRIO展から階を変えて館内をハシゴする。

《ジャイアント・トらやん》 ヤノベケンジ

吹き抜けにはヤノベケンジの巨大作品が立つ。

トらやんが覗く


エスカレーターを進むとエントランスからすでに展示が始まっている。

《インターナルライン》 2022/2024

RPGでまだ主人公のレベルが低いのに、そこそこヤバい中ボスに唐突に出くわしてしまったような感覚。


会場に入るとさらに畳み掛けてくる。

《巡る記憶》 2022/2024

蜘蛛の巣のように張り巡らされた白い紐。圧巻。
網の中にはパイプが通してあり、そこから水がポタリポタリと滴る。

表現の感覚としては内藤礼的なものを感じたが、ここまでやられたらさすがにぐぬぬと思わざるを得ない。


次の部屋には学生時代の作品が並ぶ。

《無題》 1992
《風景》 1992

どちらも90年代初頭を感じさせる取り立ててどうということのない絵画。
だが色使いには今の片鱗を感じさせる。

その2枚の隣に同じくらいの大きさのキャンバスが並ぶ。

《終わりのない線》 2024

今の塩田千春を凝縮し平面化したような作品。
30余年を経た故郷であえて学生時代の作品とともに並べることによって、
「あの頃から私はここまできたよ、そしてまだ先に進むよ」
という故郷へのメッセージのように感じた。
同じようなサイズ感なのでそれがより際立つ。

同室、ベルリン時代から始まる映像作品群には結構泥臭い映像もあった。
今はスタイリッシュ(というのも語弊があるが)でバエる作品だが、色々な試行錯の末の今なのね、と学生時代から続く作品群を見て思う。


《家から家》 2022/2024
《多様な現実》 2022/2024


最後の部屋の奥では厨二病を拗らせたような世界観が爆発する。
表現が内向的で直接的すぎて私は好きではないが、そんな闇も包み隠さずに赤裸々に見せる。

《他者の自分》 2024

多分私が草間彌生をそんなに好きになれない理由もこの作品と同じところにあると思う。



《つながる輪》 2024

この展覧会のために公募したメッセージを用いて輪をつくる。
ざっと目の届く部分だけに目を通しても泣けるメッセージ多数。

人はすれ違ったりぶつかったりしながらも、だけど多かれ少なかれ他者とつながりあって世界を作っているんだなあと思った。
これだってある意味厨二病拗らせ系の直接的表現ではあるが、ここまでやられると素直に感服する。


会場を出ると映像ブースがあり、そのベンチ脇の壁面には今回の展覧会のためのドローイングが会場内の喧騒を避けるようにエピローグ的に描かれていたのが印象的だった。

会場外の映像ブース脇

「私」から出た線がぐるぐると巡って、また「私」に帰ってくる。

「さあ、また1から始めよう。次はどこに行こうかな」

そんな作家の声が聞こえたような気がした



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