【美術展2024#77】塩田千春 つながる私(アイ)@大阪中之島美術館
会期:2024年9月14日(土)〜12月1日(日)
TRIO展から階を変えて館内をハシゴする。
吹き抜けにはヤノベケンジの巨大作品が立つ。
エスカレーターを進むとエントランスからすでに展示が始まっている。
RPGでまだ主人公のレベルが低いのに、そこそこヤバい中ボスに唐突に出くわしてしまったような感覚。
会場に入るとさらに畳み掛けてくる。
蜘蛛の巣のように張り巡らされた白い紐。圧巻。
網の中にはパイプが通してあり、そこから水がポタリポタリと滴る。
表現の感覚としては内藤礼的なものを感じたが、ここまでやられたらさすがにぐぬぬと思わざるを得ない。
次の部屋には学生時代の作品が並ぶ。
どちらも90年代初頭を感じさせる取り立ててどうということのない絵画。
だが色使いには今の片鱗を感じさせる。
その2枚の隣に同じくらいの大きさのキャンバスが並ぶ。
今の塩田千春を凝縮し平面化したような作品。
30余年を経た故郷であえて学生時代の作品とともに並べることによって、
「あの頃から私はここまできたよ、そしてまだ先に進むよ」
という故郷へのメッセージのように感じた。
同じようなサイズ感なのでそれがより際立つ。
同室、ベルリン時代から始まる映像作品群には結構泥臭い映像もあった。
今はスタイリッシュ(というのも語弊があるが)でバエる作品だが、色々な試行錯の末の今なのね、と学生時代から続く作品群を見て思う。
最後の部屋の奥では厨二病を拗らせたような世界観が爆発する。
表現が内向的で直接的すぎて私は好きではないが、そんな闇も包み隠さずに赤裸々に見せる。
多分私が草間彌生をそんなに好きになれない理由もこの作品と同じところにあると思う。
この展覧会のために公募したメッセージを用いて輪をつくる。
ざっと目の届く部分だけに目を通しても泣けるメッセージ多数。
人はすれ違ったりぶつかったりしながらも、だけど多かれ少なかれ他者とつながりあって世界を作っているんだなあと思った。
これだってある意味厨二病拗らせ系の直接的表現ではあるが、ここまでやられると素直に感服する。
会場を出ると映像ブースがあり、そのベンチ脇の壁面には今回の展覧会のためのドローイングが会場内の喧騒を避けるようにエピローグ的に描かれていたのが印象的だった。
「私」から出た線がぐるぐると巡って、また「私」に帰ってくる。
「さあ、また1から始めよう。次はどこに行こうかな」
そんな作家の声が聞こえたような気がした。
【美術展2024】まとめマガジン ↓