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●美術館の名作椅子#01●国立西洋美術館

国立西洋美術館

設計:ル・コルビュジエ
開館:1959年




・3 FAUTEUIL GRAND CONFORT, GRAND MODÈLE (LC3) Sofa

《LC3》ソファ

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン 
発表:1928年 
メーカー:Cassina
価格:¥2,354,000
(2024年現在)

フレーム:ライトブルー
ポリエステルパッディング仕様 LCX(革)

常設展示室出口に鎮座するソファ。
ここ西洋美術館はコルビュジエが設計者ということでコルビュジエ絡みの椅子が多く置かれている。
Cassinaでは近年LCシリーズの呼び方が変わったが、これはいわゆる旧称LC3
この椅子はクロムメッキのフレームが多い中、ここの品はフレームがライトブルー塗装の受注輸入仕様。
クレジットでコルビュジエの名も併記されるが実際にはシャルロット・ペリアンのデザインとされる。

Charlotte Perriandのスケッチ Cassina

発表から100年近く経つが全く色褪せずに今でも魅力的な存在感を放っているのは元々のデザインの力があるということは大前提だが、それとともにその文脈や意義を徹底的に研究しているCassinaの力も大きいだろう。



・1 FAUTEUIL DOSSIER BASCULANT (LC1) Chair

《LC1》

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン
発表:1928年 
メーカー:Cassina
価格:¥605,000
(2024年現在)

MoMAにも収蔵されている20世紀を代表する名作椅子
個人的感想としては座り心地はそれほどよくない。
背もたれがグラグラ動くのと座面に角度がつきすぎなのがしっくりこない。
だが名作椅子の真価はそういうことではないのだ。
我が家にも一脚あるがほぼ観賞用としてリビングに鎮座している。
それだけで場の空気が変わり空間が華やかになる
生活や心が豊かになる
約100年前のデザインに今もなおそんな力があるなんて本当に素晴らしいではないか。



・2 FAUTEUIL GRAND CONFORT, PETIT MODELE (LC2) Single Sofa

《LC2》

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン
発表:1928年
メーカー:Cassina
価格:¥1,397,000
(2024年現在)

こちらもMoMAに収蔵されている20世紀のマスターピース
住宅は住むための機械である」というコルビュジエの言葉は、装飾を排し機能性を追及したこれらの椅子にも当てはまる。
LC3同様フレームがライトブルー塗装の受注輸入仕様。
個人的にはクロムメッキで光っているフレームよりも不透明に塗装されている方が好みだ。
LC3に比べて幅狭で座面が高く沈み込みが大きいため包まれ感がある。
LC2とLC3で好みが分かれるが、私は座面の低いLC3の方が好きだ。



・8 TABOURET TOURNANT, DURABLE (LC8) Stool

《LC8》

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン 
発表:1929年 
メーカー:Cassina
価格:¥429,000
(2024年現在)

LC7の背もたれなしバージョン。
座ってみると予想外に座面が広く、回転するので使い勝手が良い。



・VENTAGLIO Table

《LC2》《LC1》《LC8》と共に《VENTAGLIO》
《LC2》《LC1》と共に《VENTAGLIO》

デザイナー:シャルロット・ペリアン 
発表:1972年
メーカー:Cassina
価格:¥2,310,000
(2024年現在)

テーブルはシャルロット・ペリアン単独クレジットのVENTAGLIO。
コルビュジエの事務所から独立後、自身の別荘のためにデザインしたテーブル。
このスペースには黒とナチュラルの2台が並ぶ。
テーブル2台で計¥4,620,000!
ペリアンは1940年に坂倉準三の誘いで日本の輸出工芸指導の顧問として来日し、柳宗理らの案内で日本各地を巡って、日本の近代デザインにも大きな影響を与えた



・10 TABLE EN TUBE (LC10) W700 Table

《LC10》

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン 
発表:1929年 
メーカー:Cassina
価格:¥407,000
(2024年現在)

さりげないガラステーブルもしっかりCassinaのLC。



・USM Haller

《LC3》《LC10》  《USM Haller》キャビネット

デザイナー:フリッツ・ハラー
発表:1965年
メーカー:USM
W350mm×H350mm×D500mm
4列3段モジュール ガラス仕様
価格:¥942,720
(2024年現在)

コルビュジエとは直接関係ないけれどパイプ繋がりか。
世界観は近い。
いずれにせよこちらも名作中の名作
何種類もある長さのパイプやパネルを用いて自由に形を組み替えられる。
公共機関やオフィス、ショップ、個人宅等、様々な場所で使用されている。
我が家でも複数愛用中

我が家の《USM Haller》

USM Hallerは組み立て分解がたまらなく楽しい
メーカーは推奨していないが、必要な用具一式はホームセンターで揃えられ、慣れればさまざまなアレンジをすることができる。
組み立てる度に新たな発見がありその設計思想に感動する。
まさに大人のレゴ



・UlmStool

デザイナー:マックス・ビル 
発表:1954年
メーカー:Wohnbedarf
価格:¥59,400
(2024年現在)

さりげなく名作ウルムスツールが並ぶ。



・まとめ

国立西洋美術館はコルビュジエの文脈を押さえたこだわりの什器選定をしている。
まさにこの場に置くことで真価を発揮する椅子たちだ。

しかしウルムスツールは名作ではあるのだが流れでいくとちょっと違うか。
いっそのことコルビュジエで統一してしまえばよかったのに。
これとか。↓

建物そのものが国内唯一のコルビュジエ建築であり世界遺産としても登録されているその圧倒的なアドバンテージを最大限に活かしつつ、コルビュジエの正規ライセンスを唯一持つCassinaとがっつりタッグを組んで椅子や什器にもさらに徹底的にこだわってほしい。
同じくCassinaが正規ライセンスを持つシャルロット・ペリアンやピエール・ジャンヌレの椅子なども織り交ぜながら、そのデザインの歴史的意義を強くアピールすることで建築のみならずデザインの文脈でのコルビュジエらの重要性も伝えられると思う。
それは美術館側だけでなくCassina側にも課せられた使命でもあるはずだ。



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