●美術館の名作椅子#20●東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
設計:宮内省内匠寮(担当技師は権藤要吉)
開館:1933年(朝香宮邸)
1983年(美術館)
・BIKAPPA Armless Chair
デザイナー:BARTOLI DESIGN
発表:2007年
メーカー:KRISTALIA
KRISTALIAは1994年にイタリアでガラス製品メーカーとして創業。
ガラスが持つ透明性と、Made in Italyにこだわり「クリスタッロ」(クリスタルガラス)と「イタリア」を掛け合わせて「クリスタリア」と名付けられた。
この椅子はアルミ鋳造フレームにポリプロピレンの座面を合わせている。
2000年代のデザインだがイームズアルミナムチェアを彷彿とさせるようなアルミフレームがアメリカンミッドセンチュリーの雰囲気をオマージュしているようにも感じる。
・Iris Arm Chair
デザイナー:三井 緑
メーカー:Time&Style
価格:¥110,000(2025年1月現在)
デザイナー三井氏は東京藝大デザイン科卒業後、1964年よりデンマーク王立アカデミー家具科に留学、巨匠ポール・ケアホルムに師事。
帰国後、1975年に三井緑デザイン事務所を設立し現在に至る。
美術館側がどこまで意識してこの椅子をこの場に設置しているのかはわからないが、2枚の成形合板の重なりによってできる穴の影が床の市松模様と合っているようにも見える。
・Foster 510 Bench
デザイナー:Foster + Partners
発表:1992年
メーカー:Walter Knoll
価格:¥1,276,000(2025年現在)
プリツカー賞も受賞している建築界の巨匠ノーマン・フォスター率いるFoster + Partnersデザインのベンチ。
Walter Knollはドイツの名門高級家具メーカー。
日本支社が無いので日本での知名度は低いメーカーだが、ドイツならではの堅実な作りと最高級の革質に定評がある。
このベンチには背もたれ付バージョンもあり、東京国立博物館でも採用されている。
ちなみにアメリカンミッドセンチュリーの雄「Knoll」はこのウォルター・ノルの息子のハンス・ノルがアメリカに渡り創業した。
・PLANA Chair
デザイナー:LUCIDIPEVERE
発表:2009年
メーカー:KRISTALIA
価格:¥36,300(2025年現在)
またもやKRISTALIAの椅子。
屋外用として多数導入されている。
シャープなラインが新館の雰囲気と合っている。
・Spindle Chair
デザイナー:Piero Lissoni
発表:2000年
メーカー:Porro
価格:¥50,000前後か(2025年現在)
Cassinaなどでも名作椅子を多数デザインしている巨匠ピエロ・リッソーニ。
この椅子も一見なんの変哲もない事務的な椅子に見えるが、よくよく見るとやはり細部のちょっとした曲線や仕立てが美しい。
・KOBE Chair
デザイナー:Piergiorgio Cazzaniga
発表:2011年
メーカー:DESALT
価格:¥60,000前後か(2025年現在)
Cassina ixc.でも取り扱いのあるKOBE Chair。
ここ庭園美術館では新館に併設されているカフェの椅子として用いられている。
Cassina ixc.のサイトでは現在アーム付きのものしか載っていなかったので参考までに。
・AIR Chair
デザイナー:ジャスパー・モリソン
発表:1999年
メーカー:MAGIS
価格:¥33,000(2025年現在)
世界で初めてエアモールド成型で作られた椅子。
シンプルな中に柔らかい曲線美を感じさせるデザインはやはりジャスパー・モリソンのなせる技か。
ここでは庭にたくさん置かれている。
・OS301 チェア
メーカー:FUJI
価格:¥38,500(2025年現在)
イタリアのデザイナーズ椅子が多く置かれる中、唐突に置かれるザ・業務用の椅子。
実際の使い勝手やコスパはこのようなアノニマス的な椅子の方が良いのかもしれないが、他の椅子とはある意味一線を画すこのような椅子をなぜ採用したのかが気になる。
・まとめ
東京都庭園美術館はシンプルなデザインの椅子が多く採用され、それぞれ控えめに置かれていた。
格式高い建物の中に置く椅子なので、やはりあまり主張しない椅子の方が適しているのかもしれない。
新館裏奥駐車場脇の事務室入り口にはなぜか唐突にCassinaのLC1が数台置かれていたが残念ながらこちらは写真撮影不可だった。
名作椅子が多く採用されてはいるのだが、それぞれのメーカーもデザイナーも生産国もバラバラなのが気になった。
もう少し何かしらの共通項なり文脈なりにこだわりがあったほうがすっきりと場に馴染むはず。
重要文化財であるこの美しい美術館に置く意味や必然性をしっかりと追求すれば、椅子も美術館もさらに輝きを増すに違いない。
【美術館の名作椅子】まとめマガジン ↓